多丘歯目
たきゅうしもく
概要
多丘歯目は、一般にハラミヤ科から進化したと考えられ、ジュラ紀中期から暁新世にかけて、ヨーロッパと北アメリカを中心に繁栄した。一部はアジアとアフリカからも化石が見つかっている。始新世に急速に衰え、その末までにすべて絶滅した。1980年代に南アメリカで発見されたゴンドワナテリウム類は、当初その所属がはっきりしなかったが、現在では多丘歯目の独立した亜目を構成すると考えられている。この意味で、多丘歯目は南アメリカにも分布した。多丘歯目は「中生代のげっ歯類」とも呼ばれるように、下顎には前方に伸びる切歯を持ち、その後ろに長い歯隙が存在し、その頬歯は植物食を示している。その生態もげっ歯類によく似ていたため、げっ歯類が出現した始新世になると生存競争に敗れて急速に衰え、始新世の末までに全て絶滅したと考えられている。多丘歯目は、中生代哺乳類としては最も優勢かつ多様化したグループで、その名前は、低い小さな突起が前後方向に上顎では3列、下顎では2列並んでいる臼歯に由来する。これらは臼歯は植物の噛み潰しに適した形態であることは明らかである。また、多くの種類では下顎の最後の前臼歯が巨大な扇型の鋭い歯になっており、種や球果のような堅い物を食べるのに適している。多丘歯目では歯種の役割分担が明瞭で、白亜紀末期以前の哺乳類では他に例を見ない。更に、有袋類と有胎盤類を除く中生代型の哺乳類の中では、中生代と新生代の境界を越えて生き延び、かつ進化した唯一のグループである。新生代初めまでに限って言えば、最も成功した哺乳類である。