概要
多臼歯ではなく多丘歯。
中生代に現れた哺乳類のグループで、現代のげっ歯類と同じような暮らしをしていた「中生代のげっ歯類」。
白亜紀の大絶滅を生き延びて新生代の初期まで栄えたが、げっ歯類が現れると急速に衰退し、5000万年くらい前に絶望した。
しかし同じく中生代に栄えた三錐歯目などはほとんどが白亜紀の終わりとともに全滅したので、それを乗り越えた多丘歯類はかなり優位だったようだ。
草食性で下あごの前歯は前方に伸びており、その後ろには長い隙間がある。また奥歯のかみ合わせ面に特徴があり、低く小さな突起が前後方向に並ぶ。上あごでは3列、下あごでは2列並んでいるこの形を「丘が連なったような形」として「多丘歯類」と名付けられた。
これは植物の噛み潰しに適した形態で、また多くの種類では下顎の最後の前臼歯が巨大な扇型の鋭い歯になっているのもポイント。というわけで木の葉や柔らかい草だけではなく、種や球果のような堅い物を食べることもできたようだ。
ちなみに歯種の役割分担が明瞭というのは白亜紀末期以前の哺乳類では他に例を見ないので、かなり進化したタイプだった模様。
ジュラ紀中期から新生代初期(暁新世。6000万年くらい前)にかけてヨーロッパと北アメリカを中心に繁栄し、一部はアジアとアフリカからも化石が見つかっている。
それまではよく栄えていたが、始新世(5500万年くらい前)にげっ歯類が現れたことで入れ替わるように絶滅した。
1980年代に南アメリカで発見されたゴンドワナテリウム類は、当初その所属がはっきりしなかったが、現在では多丘歯目の独立した亜目を構成すると考えられている。つまり多丘歯目はオーストラリア(と南極)以外の幅広いエリアに分布していたのだ。