雷の律者
かみなりのりつしゃ
第三律者「芽衣」
第二次崩壊でシーリーンに生み出された疑似律者コアの一つは、ネゲントロピーによって保管されていた。
それを技術部と牽制し合う急進派が、経済スキャンダルで窮地に立たされたME社の令嬢である芽衣に目を付け、雷電龍馬の名誉回復をちらつかせて崩壊実験の被検体に仕立て上げる。
結果、芽衣は疑似律者コアと適合し、急進派の目論見通りに雷の律者へと覚醒。
ところがその力は陰謀者たちの目算をはるかに超えるものとなり、第三次崩壊まで発生させて極東の長空市を壊滅に追いやってしまう。
そこに芽衣と親交を深めていたキアナ・カスラナと、長空市の異変に気付いた天命組織極東支部「聖フレイア学園」の対崩壊作戦部隊が介入し、芽衣を完全覚醒する前に取り押さえることに成功する。
律者コアそのものに人格があり、その態度や性格は尊大で冷淡。
その後、事情を知った聖フレイア学園は天命組織本部との交渉の末、芽衣を聖フレイア学園の生徒として受け入れ、監督することを決定する。
そのため芽衣の心臓には超小型の高性能爆弾が移植されており、万一に律者コアが再動して人類の敵として立ちはだかるときには、速やかにその脅威を取り除けるよう図られている。
この爆弾には律者コアの波長を抑制する力もあり、不用意に律者コアが目覚めることも抑止している。
芽衣自身もこれを承知しており、最悪の事態には決して躊躇しないよう覚悟を決めている。
失墜する雷電
天命組織本部での空の律者との決戦後、芽衣は天穹市で行方不明となったキアナの捜索に志願した。
紆余曲折を経てキアナとの再会を果たした芽衣だったが、そこにあったのは運命と戦う覚悟を決めて一人の戦士として成長した“自分の知らない”キアナだった。
さらに天穹市はヨルムンガンドの崩壊実験によって戦略級の崩壊爆弾の炸裂の危機にさらされ、一刻の猶予もない事態へと追い詰められてしまう。
この危機にキアナは「空の律者」としての力を自分で扱える限界まで行使し、起爆した爆弾を虚数空間へと転送して天穹市を救い出す。
だが力を使い過ぎたキアナは天命組織に捕縛され、アフリカにある天命組織の実験場へと移送される。
それから数ヶ月後、芽衣の故郷である長空市で再び高出力の崩壊反応が検出される。
そこで芽衣とキアナは、思い出に呼ばれるかのように再会を果たす。
キアナの体内で彼女を蝕んでいた「雷の律者コア」は取り除かれ、再び芽衣の下に帰ってくる。
だがキアナの肉体は限界に達し、食いしん坊だった少女は既に味覚を失いかけていた。
再び運命の課す試練にさらされた芽衣の前に、ワタリガラスの手引きでヨルムンガンド盟主ケビン・カスカラナは、雷の律者コアの引き渡しを条件として、キアナの治療薬の提供を持ち掛ける。
キアナの延命と裏切りの呵責に迷う中、運命は容赦なく二の矢を放った。
長空市の崩壊現象は収まる様子を見せず、とうとう大規模な崩壊現象を巻き起こした。
空の律者の力で崩壊現象の制止に向かおうと、ベッドを抜け出したキアナを追う芽衣。
もう失うのは嫌だ、この友情を二度と放したくない。
焦る思いとは裏腹に、崩壊現象で空いた次元の穴から謎の機械人形(虚樹の残骸-ニヒリズム)が襲来し、芽衣へと牙を剥く。
時空断裂を自在に操り、難解な行動パターンで翻弄するニヒリズムに対し、手も足も出ずに翻弄され、ついに力尽きる芽衣。
薄れゆく意識の中、少女はただひたすらに自身の不運と挫折を嘆いた。
足掻いても足掻いても、運命は彼女に立ちはだかり、大切なものをことごとく奪い去っていく。
どうして私ばかり――
その刹那、天命組織本部での戦いで自分へ力を貸した律者コアが問いかけ、一縷の望みを指し示す。
それは本来は決してあってはならない選択肢。
だが――
それで愛する彼女を生き長らえさせられるのなら。
もう運命と戦わせないよう、今までの笑顔を取り戻せるなら。
もう、何でもいい――
画して、芽衣は全てを諦め、すべてを受け入れた。
「雷の律者」へと完全覚醒した芽衣は、ニヒリズムを圧倒的な暴力で粉砕。
ニヒリズムによって倒された審判型崩壊獣ベナレスの亡骸を自身の律者コアの因子で染め上げ、自らの従僕「倶利伽羅」として新たな命を吹き込んだ。
ニヒリズムを討った勢いのまま、芽衣は倶利伽羅を駆って崩壊現象の根源である次元の裂け目へとたどり着き、崩壊現象の原因となる崩壊獣を殲滅、崩壊現象を食い止めることに成功する。
だがその結末に納得できない者もいた。
キアナは何もかもを自分勝手に背負い込んで失墜していく芽衣を止めるべく、回復しきらない身体を押して食い止めに掛かる。
それでも冷徹に、心を凍て付かせて芽衣はキアナを圧倒する。
運命と向き合う者と運命に背を向けた者。両者の問答は干戈を交えるごとに熱く、虚しく、痛ましく、雷雨の中で消えていく。
遂には律者の能力をぶつけ合う熾烈な戦いとなるが、病み上がりのキアナでは芽衣の凍った心を砕くことは敵わず、とうとう芽衣はキアナの手を振りほどいて飛び去って行った。
世界の敵となり、すべての呪いをキアナから遠ざける。
それが自分にできる、唯一のキアナと友たちに出来る愛と信じて――。
能力
電気エネルギー・電磁波であれば、あらゆる力を支配でき、こと電気エネルギーに支えられている現代文明にとっては非常に厄介な相手となる。
荒天時には雷雲さえ支配下に置き、目標に対してピンポイントで落雷を撃ち込むことも可能。
さらに電磁波の一種であるガンマ線や荷電粒子さえ行使でき、収束させることで高い熱エネルギーを誇るビーム砲として転用可能。
第三の神の鍵「黄泉の杖」が電磁波による律者コアへの干渉と判明すると、その波長パターンさえ模倣し、「星の律者」に引導を渡している。
つまり現状においてアンチ律者としての特性も備えてしまった。
覚醒時にベナレスを「倶利伽羅」へと再構成しており、自身との連携で相手に息を吐かせぬ波状攻撃を仕掛けることも出来る。
律者特有の人格の上書きについては、雷の律者コア自身が芽衣に全主導権を明け渡したため、人格の上書きは発生していない。
つまり冷淡な素行は、芽衣本人によるもの。
ゲームにおける性能
ver.4.1から実装。
異能属性のS級戦乙女として実装された。
攻撃は雷元素。
「雷電女王の鬼鎧」の【霊魂覚醒キャラクター】であり、一部の、一部のスキルレベルが同期している。
期間限定のみの補給対象。
「鬼鎧」をさらに豪奢にした真紅の鎧に身を包み、崩壊結晶が額に集約して二本の角を成している。
その姿はさながら、極東の伝承にある雷神を彷彿とさせる。
肩の鎧の縅からは義肢が生えており、その手には芽衣の身の丈を超える大太刀を備え、芽衣の意思で自在に振り回して敵を斬滅する。
これまでの芽衣のキャラカードにはない圧倒的な射程範囲が最大の持ち味であり、加えて攻撃を加えるごとに敵に「鳴神状態」という雷元素デバフを与え、雷元素ダメージを増幅させることも可能。
コンボレスポンスも非常に早く、オマケに通常攻撃4段目は回避効果も付随するため、立ち回りも優秀。
攻撃で律者ゲージを貯めることで、攻撃ボダン長押しで強力な範囲攻撃「心斬」を繰り出す。
必殺技では律者形態に移行し、倶利伽羅を召喚、騎乗して敵陣を蹂躙する。こちらもボタン長押しでブレス攻撃で目標を焼く尽くし、制限時間いっぱいになれば上空から大太刀で唐竹割りにする。
非常に強力な雷元素キャラであり、これまで不在だった大出力の雷元素キャラのエースアタッカーとなった。
それだけに元素ダメージを増幅させる装備の有無が使い勝手に大きく影響し、元素アタッカー特有の装備への依存度が目に見えて火力に反映されてしまう。
特にモチーフ武器の有無で大きく火力に差が出るため、律者芽衣を主力に据えたいなら、キャラのランクアップよりも武器と聖痕に対して対価を割いた方が正しい。
また極限回避を始め、一部挙動には独特の癖があり、「影舞衝撃」や「鬼鎧」ほどではないにしろ、ある程度操作に離れが必要となる。
性格
どこか弱気で気の優しい性格から一変、冷淡で目的のためにはどんな濁りや汚穢さえ飲み干す、情け容赦のない女剣士へと変質した。
キアナを戦いから遠ざけ、聖フレイア学園の仲間たちを生かすためには、その手を血で汚すことも厭わず、かつては忌み避けていた律者の力も、その秀才ぶりであらゆる攻撃手段へ応用してみせる。
一方で根っこはさほど変わっておらず、肚を括って耐えているだけで、根は善性を信じ捨て切ることのできない甘さを大きく残している。
どれほど修羅に堕ちて憎まれようとしても、誰かを信じ、またその思いにこたえて救いたいという感情は、聖フレイア学園での日々が彼女に根付かせた本能に近いものといえる。
それ故か、ワタリガラスとは奇妙な縁で結ばれ、互いに通じるものを感じている。
余談
予てから実装が待ち望まれていたものの、まさかの悪堕ち&ダークヒロイン化に、多くの崩壊ファンが阿鼻叫喚の様相で頭を抱えることになった。
ただでさえ姫子の退場で一気にシリアス化した本編で、「ブローニャ編」の箸休め的なハッピーエンドから一転して怒涛のシリアス展開の末のこの始末とあって、多くのファンは「もう本編でみんなが笑い合って前に進む展開は絶望的か……」とお通夜状態に……。
そして根本的なツッコミどころとして、芽衣一人で泥をかぶったところで、あのオットーが手を緩めるわけがなく、むしろ芽衣の力さえ最大に利用して新たな悲劇を量産するのは、ファンとしては分かりやすい筋書きでしかないのが、また芽衣の空回りぶりを浮き彫りにしてしまっている……。
ただ『よんこまさーど!』では実装直後の話で、演劇の木の役になって環境の隅にいる律者芽衣が登場し、暗い雰囲気をいくらか和らげてくれている。
なお、長空市でのストーリーでケビンの回想が入るのだが、ケビンの行動原理の一端に芽衣に5万年前の恋人の姿をダブらせて複雑な感情を拗らせ捲っている節が明るみになってしまい、ダークヒーローから一転し、オットー・アポカリプス同様に残念なイケメン認定が下ってしまう。
関連人物
その身を犠牲にしても守りたい、愛しの後輩。
彼女を戦場へ戻さないために、芽衣は自らの繊細な心を踏みにじって独り戦い続ける。
ヨルムンガンドに身を寄せる傭兵。
彼女の経営する長空市の孤児の避難所を偶然救ったことから、ヨルムンガンドとの繋がりを持つようになる。
互いに根が善人であり、弱者を捨てられない性質がよく似ており、少なくともワタリガラスは芽衣をヨルムンガンドのメンバーでも強く信用している。
ヨルムンガンドの盟主。
5万前に崩壊と戦った「融合戦士」で、「量子の海」と呼ばれる異次元空間に封じられていたが、量子の海に侵入したブローニャを利用して復活を遂げた。
律者に対して情け容赦をしない性質なのだが、芽衣と瓜二つの幼馴染MEI博士と面影が重なるせいなのか、芽衣に対しては複雑な感情を抱いている。
フクロウ
ヨルムンガンドのメンバー。
天命組織との「氷の律者」討伐で共闘するが、氷の律者がフクロウの想い人アナ・シャニアテであったため、作戦に当たったワタリガラス共々に、彼に騙し討ちに掛けられてしまう。
最後は残酷な真実に耐えきれず、アナと融合して「星の律者」となり、「黄泉の杖」の原理を解明した芽衣によって討ち果たされた。