概要
世界を滅ぼす破壊神である鬼眼王シヴァと生命を共にする
不死の護衛者「无(ウー)」であり、強大な力で闇の者たちを統べる存在。
鬼眼王を倒そうとするパイと八雲の前に立ちふさがり、鬼眼王が復活するまでは、事実上、最強のラスボスであった。なぜか革ジャンを着てる事が多い。
性格は基本的に慎重かつ厳格。主である鬼眼王に対する忠誠心は非常に強い。
しかしその一方で戦いを何よりも楽しみとする戦闘狂でもあり、物語終盤ではかつて部下であった綾小路葉子(化蛇)から「あなたは戦いを求めすぎるために、そこに隙が生じてしまう」と指摘されている。最終的にはベナレス自身もそれを受け止め、主の言葉に背くことを詫びながらも戦いを望む自分の我儘を通して八雲との決戦に臨んだ。
その反面決して脳筋ではなく、作中ではむしろ何重にも罠を張り巡らせた上で八雲達を苦しめる策士としての描写も多い。
プライドが高く、部下から護られたり敵前逃亡することを嫌うとされるが、本人はほぼ一貫して大物然として器の大きいキャラを通しており、その辺りが直接描かれたことはあまりない。
部下に対しても非常に厳しく、大きな失態を犯したり出過ぎた真似をした者には苛烈な制裁を加えることもある。しかしその一方で戦死した部下を悼んだり、自身の油断を詫びる発言をする、戦闘や自ら下した制裁によって部下を負傷させた後にはきちんと治療の手配も行うなどの温情を見せる場面もあり、配下である闇の者達は畏怖しながらも上司として慕っている。
直属の部下に「九頭龍将」という9人組の魔将がいたが、作中で全滅(8人が戦死、1人は失態により失脚した後に敵対)している。相応に実力は高く、ベナレスへの忠誠心も極めて強かったが、ベナレスのプライドの高さに対する過剰な憂慮や仲間同士の絆の強さ、自信過剰などが仇となり総じて独断専行が目立ち、大半が自業自得に近い形で脱落した。
後日談では新しい人材を集めて九頭龍将の再編を図っており、一応ベナレスにとっては部下として必要な存在ではあった模様。
また、作中では裏切りなどにより結構な人数の部下や弟子が離反して後に敵対しているが、そういった者に個別の怒りを向けることは基本的になく、先述した葉子の(下手をすれば煽りとも捉えられかねない)指摘に対しても冷静に応じ、最終的には自嘲気味に笑みを浮かべつつも納得して認めるなど、寛大ともとれる一面も持つ。これもあってか葉子や元弟子のベム・マドゥライなどは敵対した後も終始ベナレスを「様」付けで呼び、尊敬の念を失うことはなかった。
八雲に対しては四章に入るまでは殆ど歯牙にも掛けていなかったが、マドゥライの教えを受けたことなどにより大きく実力を上げた月面の戦いでは「随分と見違えたぞ」と感心し、人化の法を巡る聖地での戦いの際には自分とも対等に渡り合えるほどの強さとなった八雲を素直に称賛して「是非とも部下に欲しいが…」と、敵として倒すことを惜しむまでに高く評価していた。最終的には前述の通り戦いを望む自身にとっての最大にして最高の敵として挑むことになる。また八雲を部下に欲しいという思いも本音であり、続編では八雲を九頭龍将の新たな長として勧誘している。
上で指摘されている「戦いを求めるが故の隙」と言えるのかは謎だが、自分も間抜けな失態を犯している場面が結構あり、特に一、二章での敗北はどちらも自身の油断や慢心が原因。
流石に主の命を護ることについては極めて慎重であるが、二章ラストでの敗北は結果的に三章の憑魔一族編で鬼眼王が封印されていた「聖魔核」を人質に取られ、自身も傷が癒える前に力の大半と再生能力を封じられるという致命的な事態に繋がっている。この時は「キンカラ」という偽名と覆面で正体を隠し、密かに八雲達を支援していた。
また、主に番外編などでは意外と愉快な一面を見せることも多い。
能力
並の魔物よりも遥かに強大な精を操り、獣魔術を始めとするあらゆる術を使いこなす大魔道士。
獣魔術の創始者でもあり、本人曰く「百の獣魔を操る」
以下に作中で使用した術を記述する
獣魔術
土爪(トウチャオ)
巨大な三つの爪を持つ甲虫の姿をしており、その三つの爪で標的を切り刻む。
第一部で失態を犯したリョウコの処刑に使用した他、月面での戦いでも使っている。
作中で初めて獣魔術という存在を知らしめた瞬間でもある。
光牙(コアンヤア)
三つ目を持つ光の竜の姿をした光術獣魔。攻撃用獣魔としては最強クラスの破壊力を持つ。
第二部のラストで八雲に使用したが、鏡蟲(チンクウ)で跳ね返された為、
それ以後は反射されるのを用心したか、八雲に使用する事は無かった。
終盤で思い出したかのように化蛇(ホウアシヲ)に使ったが、首だけのハーンに防がれるなど
八雲サイドでの活躍ぶりに比べ、ベナレスが使用時にはイマイチ扱いがよくない獣魔。
縛妖蜘蛛(フーヤオチチウ)
獣魔型縛妖陣とも言うべき蜘蛛型の獣魔、巨大な蜘蛛が対象を捕縛し小さな繭に封印する。
无に対しても有効だが、作中でこの獣魔で封印されたのは无でなくなったアマラのみである。
影牙(インヤア)
光牙を飲み込む性質を持つ獣魔、形状は光牙に似ているが体色は漆黒でより禍々しい。
攻撃力も高く八雲との獣魔合戦では頻繁に使用していた。
雷蛇(レイシヲ)
雷で出来た蛇の姿をしており、標的に電撃を食らわす。
光牙ほど破壊力はないが雷術であるため反射されないのが嬉しい。
泥毛(ニーマオ)
捕獲系獣魔、ナメクジの様な本体から無数の毛が伸びて対象を捉える。
月面戦で使用。
回風(ホイフォン)
月面戦で使用。四方に刃を持つ巨大な円盤が回転しながら突っ込み、八雲の呪蛇縛(スペルスネークバインド)を切り裂いた。
炎头(イエントウ)
月面戦で使用。炎を纏った巨大な髑髏の形状で、炎を周辺に発散し攻撃する。
凍血球(ドンシウエチウ)
無数の棘が生えた球体で、対象に接触する事で凍結させる。
火猿猴爪(ホウユアンホウチャオ)
自らの手に炎の爪を纏い攻撃する獣魔。
元々の格闘力の高いベナレスが使用する事で接近戦ではかなりの威力。
闇食魚(アンシーユイ)
三人目探索の為に八雲に与えた獣魔「闇魚(アンユイ)」の天敵とも言える獣魔で闇魚を喰らう能力を持つ。
おそらくこの獣魔がいるから八雲に闇魚を与えた物と思われる。
絲切頭(スーチェトウ)
三人目探索の為に八雲に与えた獣魔「石絲(シースー)」の石化の糸を断ち切り、石絲を喰らう力を持つ。
闇食魚と言い最初から天敵のいる獣魔のみをチョイスして
八雲にプレゼントしている用心深さが窺える。
鏡亀(チングイ)
鏡の甲羅を持った巨大な亀の形状で、鏡蠱と同じく光術を防御・反射させる。
鏡蟲よりも大型な為、広範囲の光術を防ぐ事が出来る。
泡蠱(パオクウ)
捕獲用獣魔、体の中に対象を包み込んで傷つけない様に捕獲する。
アマラ戦でベナレスはこの獣魔を使ってパイの動きを封じた他、
でんぐり返しや粘液プレイで八雲の精神をかき乱す事にも使用した。
地精集気蟲(ティチンチイチイチョン)
回復用獣魔、対象者に組み付き精を注ぎ込んで体力を回復させる。
後述する四天聖精奉還の実験のために、この獣魔を使って「三只眼(さんじやん)」を回復させた。
後にこの改良型と思われる背中に貼りつく名称不明の獣魔も存在している。
四天聖精奉還(スティエンシヲンチンフヲンホアン)
「三只眼」の強大な力を防ぐ為、ベナレスが新たに開発した獣魔。
4体の小型獣魔によって三角錐型の結界を作り、あらゆる術から身を守る。
その防御力は「三只眼」の全力の光術すら通じないほど。
ただし、結界を形成する4体の獣魔を直接攻撃されると結界が消失する弱点がある他、
名前が長すぎる為、アマラ戦では全ての獣魔を召喚したアマラに対し、
詠唱が間に合わなくて粉々にされるというマヌケな失態も犯している。
その他の術
縛妖陣(フーヤオチェン)《亜空間系》
強大な力で亜空間への穴を開き、対象をそこに放り込む術。
ベナレスは過去に何人もの无や三只眼をこの術で追放してきた。
水も空気も光もない亜空間に追放された生物は、基本生きてはいられず、
もし何らかの手段を用いて生存出来ても、元の世界に変える事は困難である。
ただし、帰るべき方向が分かっており、次元の穴をこじ開ける力があれば生還する事も可能。
穿靈菱(チョアンリンリン)
生物を菱形の寄生体に変化させ、別の生物に憑依させる術。
憑依された生物は記憶を失い、寄生体に人格を乗っ取られる。
ベナレスはこの術を用いて、「三只眼」の人格を封じようとしたが、
二重人格である「三只眼」には不十分であり、封印できたのはパイの人格だけである。
かなり高度な術らしく、術が不完全だと寄生体と対象の爆死を招く。
呪的命綱(スペル・ライン)
対象の精を呪文変換して己の肉体と繋ぐ術。
いったん命綱で繋がれると術者が断ち切らない限り、切れる事はなく、
脳の繋がりにより対象の居る場所や見た物が術者の知る所となる
ベナレスはこの術を八雲に用いて亜空間で三人目の三只眼を捜させようとした。
また脳が繋がっている為、精神的な影響も受ける。
龍精波
ベナレスの本性である邪悪な龍神が発する強大な精の波動。
広範囲の生物を無差別に巻き込み、徐々に精神を破壊してしまう。
かって聖地を壊滅寸前に追い込んだ。
正体
その正体は、かって聖魔(三只眼一族)を食らい続け3日で聖地を滅ぼしかけた巨大な龍神であり、聖魔を食らい続けた事で知性を持って人の姿に変化し、数々の術を生み出し続けた。
聖地で虐げられていた弱妖からは『龍皇』と呼ばれ救世主として崇められたが、
その絶大な力を恐れた弟子のベム・マドゥライによって四千年前にウェールズに封じられる。
その後、シヴァによって封印を解かれ「无(ウー)」となり、シヴァが鬼眼王となった事で彼も破壊神の最強最大の僕となる。
人間形態
通常は2mほどの大男であり、衣装も革ジャンにジーンズ、ランニングシャツなど通常の人間と変わらない格好をしている。
主に獣魔術を用いて戦うが、肉弾戦でも優れた格闘能力を持ち、素手で妖魔を引き裂くほどの腕力がある。
なぜか終盤ではかなり巨大化して身長5~6mほどの巨人になっていた、
この形態でも何故か革ジャンを着用している。
龍神形態
作中で2度ほど正体である龍神の姿を見せている。
一度目は月面で八雲に封印されかかった時であり、全長100m以上の巨大な龍の本性を現して、
完全に理性をなくして暴れまくり、部下の九頭龍将も巻き添えにする「龍精波」で
八雲たちを窮地に追いつめた。
その凶暴さに似合わぬ「くおぉぉぉぉん」とやたら可愛い鳴き声なのが印象深い。
二度目は最終決戦の時であり、この時は理性が残ってた為か巨大な半人半龍の姿である。
鬼眼王の命に背いてまで「光」と化した八雲と最後の決着を付けようと全ての獣魔を放つが敗れ去る。
後日談
本編の最後で主共々敗れるも、鬼眼王がサンハーラの力でカーリー(パイのコピー体)と融合することで生き永らえたため、ベナレスも生き延びる。以降は主の魂を宿すカーリーも守護の対象となった。
その後を描いた短編後日談や続編にも登場するが、こちらでは鬼眼王の意識が眠りについてしまう頻度が多く、カーリーの意識で活動する場面が多いため彼女に振り回され気味。特に一応決着が着いて直接敵対はしていないものの、緊張関係であることに変わりはない八雲達とも本編での縁から無警戒で交流を持ちたがっていることには頭を悩ませている。
その一方でカーリーからは自分を守護してくれる存在として絶大な信頼を寄せられており、わざわざ八雲から料理を習って弁当を作り、感謝の言葉と共に手渡すほど。ベナレスの方も気ままなカーリーに手を焼き呆れつつも、弁当を受け取った際には憮然としながらもしっかりと食べていたり、続編では殺し文句とも受け取れる言葉を向けるなど、何だかんだ良い関係を築いている様子。