概要
ギリシャ神話の太陽神アポロンにちなんで名づけられた、人類初の月面調査計画である。
冷戦下の米ソ宇宙開発競争のさなかの1961年、アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディは、1960年代中に人間を月に到達させるとの声明を発表した。1969年7月20日、宇宙飛行士ニール・アームストロングおよびバズ・オルドリンがアポロ11号で月面に着陸したことにより、その公約は実現される。アポロ計画では、事故で着陸を断念したアポロ13号を除いて合計6回の月面着陸が行われ、1972年にアポロ17号までのすべての月飛行計画は終了した。
2008年5月20日にJAXAが打ち上げた月探査衛星かぐやにより「ハロー」と呼ばれるアポロ15号の噴射跡を観測・確認された。
その後、2009年と2011年の2度にわたって、NASAの月探査衛星ルナー・リコネサンス・オービターによって、月に着陸した6機のアポロ宇宙船全ての痕跡が公開された。
経緯
弾道ミサイルの技術実証競争でもあった米ソの宇宙開発競争は熾烈を極めていたが、宇宙到達段階に於いてはソ連がアメリカに先んじていた。
人類初の衛星軌道投入、そして人類初の生物の宇宙到達と生還、そして人類初の有人宇宙飛行、多くの人類初をソ連に持っていかれ、そして今後も当分の間追い越せる見込みのなかった米国が考えたのが、人類初の月面到達である。
ジョン・F・ケネディ大統領は1961年5月25日、「人類を10年以内に月へ送り、そして生還させる」と宣言し、NASAで立案されていたアポロ計画の支援を表明した。一か月前にマーキュリー計画が宇宙弾道飛行を達成したばかりの米国では、現実性を疑問視する声も多かったという。
宇宙空間でのランデブー・ドッキングの技術等、月面に到達するまでに必要な様々な要素技術を実証するジェミニ計画がスタートし、マーキュリー計画とアポロ計画の橋渡しとなる。
更にアポロ10号までで複数回の無人・有人テストが行われた後、1969年7月16日、月面着陸を目的としたアポロ11号の打ち上げが行われる。
主要機材
- サターンV
今に至るまで史上最大の宇宙ロケット。
三段構成になっており、エンジンは全部で11基。月周回軌道に50t近い物資を投入できる。
アポロ計画の有人飛行は7号を除きすべてがこのロケットで行われた。
- 司令船(Command Module:CM)
再突入ユニットであり、最も重要な操縦装置であり、乗組員の主たる生活の場でもある。
機内正面にあるコントロールパネルは左から飛行制御、誘導コンピュータ制御、燃料電池とバッテリーの制御及び通信機の順で配置され、3名の乗員がそれぞれに役割を持っていた。
減速用のドローグシュート2基、メインパラシュート3基(内予備1基)とこれを引き出すパイロットシュート3基があり、着水時に転覆した場合は機体上部で浮袋が膨らみ浮力により機体をひっくり返す。
底面には機体の過熱を防ぐ熱シールドが装着されている。
姿勢制御スラスターは12基存在しており、大気圏突入時に機体を制御する。
- 機械船(Service Module:SM)
メインエンジンとそのタンク、およびバッテリーが収まっており、燃料電池の副産物として飲料水も供給している。
メインのほかに姿勢制御スラスターが16基存在し、あらゆる方向への並進と回転が可能。
- 着陸船(Lunar Module:LM)
実際に月に着陸する部分。
上下段に分かれており、月面離脱時には下段を発射台として上段のみが打ち上げられる。
エンジンは上下段に1基ずつと、上段に姿勢制御用スラスターが16基装着されている。
下段は大型機材用の格納庫になっており、有名な月面車も下段に収められて月に向かった。
めちゃくちゃ窮屈な上に機材がうるさいしやたら光るということで寝心地はかなり悪く、大半の乗員が適切な睡眠をとれなかったようである。
月までの道程
- 打ち上げ~月遷移軌道投入
サターンVロケットにより、3人の宇宙飛行士が搭乗したCSM(CM及びSM)とLMが打ち上げられる。
2段目までの全てと3段目の一部燃料を使用し、まずは地球を周回する高度190kmの待機軌道に投入、点検を行いながら地球を1~2周し、3段目に再点火して月へと加速する。
加速が終了するとカバーが分離しCSMが解放される。CSMは反転してLMとドッキングし、LMを3段目から引き抜くと、微調整をしながら月へ向かう。
この際不要となった3段目は、12号までは残った燃料で太陽周回軌道に退避し、13号以降は月面に衝突して地震計による構造観測に役立てられている。
- 月周回軌道投入~着陸
月に最接近した宇宙船は2度の噴射で月周回軌道に入る。
2名がLMに移乗、分離したLMは下段底面の降下エンジンに点火して降下軌道に入り、最接近する高度15kmから更に減速する。14号以降は15kmまでCSMのエンジンで降下することでLMの燃料を節約している。
高度15kmで降下エンジンに再点火し高度と速度を落とし、高度2kmから着陸地点の状態を確認しながらアプローチに入る。基本的に着陸は誘導システムによりほぼ自動で操縦されるが、予定外の事態に備えて手動操縦も可能になっており、アポロ11号でも手動操縦が行われた。
着陸脚は梯子が取り付けられている1本以外の3本にセンサープローブが取り付けられており、これが地面に接触すると操縦士に接地が知らされる。
操縦士がエンジンを停止すると、LMは月面に完全に着陸する。
- 月面離脱~地球遷移軌道投入
上昇用エンジンに点火、下段を月面に残して打ち上げられる。
周回軌道でCSMとドッキング、乗員と回収したサンプルをCSMに移動させると、LMは切り離される。11号は軌道上に投棄されたが(その後月面に落着)、12号以降では残燃料を使用して月面に衝突し、これも地震計のデータとして役立てられている。
CSMのエンジンに点火し、地球へ向けて加速する。
- 大気圏再突入~着水
突入直前にSM(機械船)は投棄され、CM(司令船)は反転して底面を前方に向ける。SMは燃え尽きるが、CMはシールドにより熱から守られる。
大気圏に突入するとプラズマ化した大気により数分間通信が遮断される。CMはスラスターにより着陸地点を制御する。
高度7300mで熱シールドが投棄され、ドローグシュートが展開し速度を時速201kmまで落とす。3300mでドローグシュートが投棄され、3基のパイロットシュートにより3基のパラシュートが引き出され、更に時速35kmまで減速して着水する。
計画
(Wikipediaの表を簡略化)
計画名 | 使用ロケット | 乗組員 | 発射日 | 目標 | 結果 |
---|---|---|---|---|---|
アポロAS-201(アポロ1A) | サターンIB | 無人 | 1966年2月26日 | 弾道飛行 | 一部成功 |
アポロAS-203(アポロ2号) | サターンIB | 無人 | 1966年7月5日 | 地球周回飛行 | 成功 |
アポロAS-202(アポロ3号) | サターンIB | 無人 | 1966年8月25日 | 弾道飛行 | 成功 |
アポロAS-204(アポロ1号) | サターンIB | ガス・グリソム エドワード・ホワイト ロジャー・チャフィー | 発射中止 | 地球周回飛行 | 失敗(訓練中に司令船火災) |
アポロ4号 | サターンV | 無人 | 1967年11月9日 | 地球周回飛行 | 成功 |
アポロ5号 | サターンIB | 無人 | 1968年1月22日 | 地球周回飛行 | 成功 |
アポロ6号 | サターンV | 無人 | 1968年4月4日 | 地球周回飛行 | 一部成功 |
アポロ7号 | サターンIB | ウォルター・シラー ドン・アイセル ウォルター・カニンガム | 1968年10月11日 | 地球周回飛行 | 成功(11日間) |
アポロ8号 | サターンV | フランク・ボーマン ジム・ラヴェル ウィリアム・アンダース | 1968年12月21日 | 月周回飛行 | 成功(史上初月周回) |
アポロ9号 | サターンV | ジェームズ・マクディヴィッド デヴィッド・スコット ラッセル・スワイカート | 1969年3月3日 | 地球周回飛行 | 成功(10日間) |
アポロ10号 | サターンV | トーマス・スタッフォード ジョン・ヤング ユージーン・サーナン | 1969年5月18日 | 月周回飛行 | 成功 |
アポロ11号 | サターンV | ニール・アームストロング マイケル・コリンズ バズ・オルドリン | 1969年7月16日 | 月面着陸 | 成功(史上初有人月面着陸) |
アポロ12号 | サターンV | ピート・コンラッド リチャード・ゴードン アラン・ビーン | 1969年11月14日 | 月面着陸 | 成功 |
アポロ13号 | サターンV | ジム・ラヴェル ジャック・スワイガート フレッド・ヘイズ | 1970年4月11日 | 月面着陸 | 失敗(機械船酸素タンク爆発事故の後無事地球に帰還)『成功した失敗』 |
アポロ14号 | サターンV | アラン・シェパード スチュワート・ルーズマ エドガー・ミッチェル | 1971年1月31日 | 月面着陸 | 成功 |
アポロ15号 | サターンV | デヴィッド・スコット アルフレッド・ウォーデン ジェームズ・アーウィン | 1971年7月26日 | 月面着陸 | 成功(初の3日以上月面長期滞在、月面車使用) |
アポロ16号 | サターンV | ジョン・ヤング ケン・マッティングリー チャールズ・デューク | 1972年4月16日 | 月面着陸 | 成功 |
アポロ17号 | サターンV | ユージン・サーナン ロナルド・エヴァンズ ハリソン・シュミット | 1972年12月7日 | 月面着陸 | 成功(最後の月面着陸) |
当初は20号まで行われる予定だったが、予算の関係で17号までとなった。
関連イラスト
関連タグ
天呪「アポロ13」:ゲーム『東方永夜抄』の登場キャラクター、八意永琳のスペルカード
「フェイクアポロ」:同じくゲーム『東方紺珠伝』の登場キャラクター、クラウンピースのスペルカード
「アポロ捏造説」:上記の強化版
ダークサイドムーン;トランスフォーマーシリーズの実写映画第3作。月面着陸は実行されていたが、その裏では更なる極秘調査が行われていた設定で、前述のバズ・オルドリンが出演した。
タイムボカン24:真歴史のひとつとして月面着陸に関して触れられる事になった。
月面奇譚:アポロ計画をモチーフにしたスマホノベルゲーム