概要
ヨーロッパ言語の基礎言語の一つ、アルファベットを用いる。かつて古代ラテン人が用いた言葉で、ローマ帝国の公用語として地中海世界に広まった。
ただし、古くからの文明先進地であった地中海世界東部(オリエント)においてはラテン語以外の勢力も強く、特にギリシャ語はローマ帝国では第2公用語の地位であった。
なお、ローマ時代のラテン語は大文字しか存在せず、UとVの区別もしていなかった。小文字が登場するのはペンで紙に書くことができる時代からである。
中世のラテン語
ラテン語は非常に広い地域で使われていたので、各地で「俗ラテン語」と言われる方言を派生させた。西ローマ帝国滅亡後、各地のラテン語の方言はしだいに独自の変化をとげ、イタリア語・フランス語・スペイン語などおたがいに通じない別言語となっていった。
一方、東方の東ローマ帝国ではラテン語は使われず、もっぱらギリシャ語が用いられた。こうして東ローマ帝国はローマ人の帝国からギリシャ人の帝国へと変化していく。
しかし、西ヨーロッパではキリスト教カトリックの活動はすべてラテン語で行われていたのでヨーロッパの知識階層にとってラテン語は必須の教養であった。こうしてラテン語は知識層にとっての共通語としての地位を中世を通じて保った。中世後期に、アラビア語・ギリシャ語の書物がラテン語に翻訳されることにより、東方の文明や古典古代の文化が西欧に伝わり、ルネサンス(文芸復興)につながった。
近代のラテン語
近代には、各国の公用語が普及し教会もその地方に合った言葉で活動することが許されるようになり、国際語の地位もフランス語や英語にとってかわられ、ラテン語はほぼ古典の言語と見なされるようになった。
ただし今日でもバチカンではラテン語を使用している。これはカトリックの典礼言語とされているからであるが、実際には公式会見以外では日常的にイタリア語を用いる事の方が多いようである(バチカンがローマ市内に存在する事を考えれば当然の帰結ではあるが)。
また、ヨーロッパの古い時代の公式文書はラテン語で書かれているため、西洋史の研究者にとってはギリシャ語と共に必須スキル。その他、生物の学名はラテン語由来であるなど、学問の世界ではいまだ存在感を放つ言語である。