概要
白亜紀半ばのアフリカに生息していたワニの仲間で、大きさ10メートルと推定されている。
学名は「武器無しの歯をしたワニ」という意味で、さながらカモのくちばしのような平らでスベスベしたような面構えが特徴。また歯が非常に小さく退化していて、大きくても1.5センチ程しかなかった。
そのため一般的なワニのような頑丈なあごの力はなかったらしく、ヒゲクジラのように泳ぎ回って小魚やプランクトン等を水ごと飲み込んでいたか、オオサンショウウオのような待ち伏せスタイルで獲物が近づいたら瞬時に飲み込むタイプだったと見られている。
どちらにせよあまり陸には上がらず、大きな川や湖などで暮らす水生の傾向が強かったようだ。
なお白亜紀のワニの仲間は多様な進化を遂げたことで知られており、水辺に棲む者や草原を駆け回る者、また海に適応した者まで現れた。
見つかっている化石は不完全な頭骨とごく断片的な標本くらいだったが、第二次世界大戦でドイツのミュンヘン博物館が爆撃を受けたため焼失してしまった。これはスピノサウルスの完全な標本も破壊されたことで有名な事件。
なおスピノサウルスは近年良好な化石が見つかったが、ストマトスクスは未だに新たな化石が見つかっておらず、この事件で失われた標本が唯一。
貴重な標本が灰と化したミュンヘン爆撃。連合軍も余計なことをしてくれたものである。