概要
白亜紀半ばのアフリカに生息していたワニの仲間。見つかっているサンプルは不完全な頭骨とわずかな断片くらいだが、大きさ10メートルと推定されている。
しかしサルコスクスやデイノスクスのような凶暴な捕食者というわけではなかったようで、靴べらのような平らでスベスベした頭に最大1.5センチ程しかない小さな歯という脱力系の面構えをしていたようだ。ちなみに名前は「丸腰のワニ」という意味。
まあ丸腰でもこれ程の体躯なら天敵はいなかったろうが。
暮らし
水生に適応していてあまり陸には上がらず、大きな川や湖などで暮らしていた模様。また一般的なワニのような頑丈なあごの力はなく、ヒゲクジラのように泳ぎ回って小魚やプランクトン等を水ごと飲み込んでいたか、オオサンショウウオのような待ち伏せスタイルで獲物が近づいたら瞬時に飲み込むタイプだったと見られている。
ちなみに水生のワニはジュラ紀のメトリオリンクスやテレオサウルスのような仲間もいるが、彼らは海に適応していた(あと海生ワニは中顎亜目なので、真顎亜目のストマトスクスとはかなり遠縁である)。
余談
白亜紀のワニの仲間は多様な進化を遂げたことで知られており、足が長く走行に適したバウルスクス、頭骨の平らなラガノスクスやアナトスクス、アルマジロみたいなアルマジロスクス、見るからに痛そうな歯並びをしたカプロスクス……といったように個性派揃いであった。
- 失われた標本
ストマトスクスのサンプルはドイツのミュンヘン博物館が保管していたが、第二次世界大戦で連合軍(主にイギリス空軍)がここを爆撃したせいで焼失してしまった。これはスピノサウルスの完全な標本も破壊されたことで有名な事件であり、この第二次世界大戦における戦火でケントロサウルスやテコドントサウルスといった恐竜のサンプルも多数がチリになった。まさになんということをしてくれたのでしょう。
- 後の時代のそっくりさん
1000万年ほど前(中新世中期)の南米には「モウラスクス」というワニが生息していた。
こいつも平らでスベスベした顔をしており、一見ストマトスクスの仲間にも見えるが、むしろアリゲーターやカイマンに近かった(アリゲーター上科・カイマン亜科)。