発見と命名
1903年にモンタナ州で鱗板骨(ワニ類の鱗の下にある板状の骨)、脊椎、肋骨、恥骨などが発見され、1909年にJ・W・ホーランドによって「恐ろしいワニ」を意味するデイノスクスと命名された。
現在までに3種が命名されており、化石はモンタナ州以外のアメリカ合衆国でも、テキサス州、アラバマ州、ミシシッピ州、ジョージア州、サウスカロライナ州、ノースカロライナ州、デラウェア州、ニュージャージー州、ニューメキシコ州、メリーランド州で発見されており、メキシコでも化石が発見されている。
またポリデクテスやフォボスクスと命名された化石は、現在ではデイノスクスと同一種(シノニム)とされている。
特徴
現在のところ見つかっている化石の中で完全な状態のものは全長約180cmの頭骨ぐらいである。かつてはこの頭骨の大きさから全長15mに達したとする説もあったが、現在では最大でも10~12m以下だったと考えられている。なお西側と東側の個体では大きさに差があったようで、東側の個体は全長8mほどだったようだ。
分類上では現在のクロコダイルよりも、ミシシッピワニなどアリゲーターに近縁だったとされている。ちなみに同じく恐竜時代の大型ワニとして有名なサルコスクスは、フォリドサウルス類という中生代に絶滅したグループに属するため遠縁であった。
デイノスクスが巨大であった理由の一つは長寿にあるとされ、ある個体の骨に残された年輪の調査結果では推定年齢50歳以上で、大抵の獣脚類や現生のワニ類よりも長生きだったことが判明した。50年の内35年は成長期に当たり、それを過ぎてもゆるゆると成長を続けていたらしい。
生態
現在のワニ同様、川や湖などに棲息していた模様。しかし白亜紀当時の北米大陸は東西を隔てた内海が存在しており、デイノスクスがその両方の地域から見つかっていることから、現在のイリエワニのように汽水域に棲息したり、海を泳ぐこともできた可能性がある。
現存する近縁種と同様に獰猛な肉食動物で、咬合力はティラノサウルスと同等かそれ以上に強かったと考えられている。実際、同じ地層からは本種に噛み砕かれたと思われるウミガメや、歯形の残ったハドロサウルス科の化石も見つかっている。
さらには当時の北米で最大級の肉食恐竜であるアルバートサウルスの化石にもデイノスクスに噛まれ、治癒した痕跡が確認されている。そのため一部の古生物学者からは、当時の北米大陸における頂点捕食者だったとされている。
余談
古い図鑑などではよくティラノサウルスやトリケラトプスと対峙した姿が描かれているが、デイノスクスはこの2種が出現したマーストリヒト期には既に絶滅していたと考えられており、合い見えることはなかっただろう。
しかしパラサウロロフスとは同じ時期、同じ地域に棲息していたことから、メイン画像のような光景が見られた可能性は高い。