超魔ゾンビ
ちょうまぞんび
「ワシの理想!!」
「それは、自分の肉体はいっさい、傷つかずに思い通り動かせて、なおかつ、一方的に敵をいたぶれる…」
「そんな能力っ…!!!!」
概要
ダイの大冒険終盤に登場する死霊型モンスター。超魔生物の三体目であり、ミナカトールの魔法円を守るべく地上に残った戦士たちが最後に戦った相手でもある。
ザボエラが開発した超魔生物の中では二体目のためか、当初は「超魔生物第2号」と呼んでいた。キャラクター紹介によれば名前は「超魔ゾンビ ザボエラ」。
妖魔士団長のザボエラが切り札として作り上げた巨大な超魔生物で、魔界の精鋭怪物(モンスター)数百匹の骸を魔法力によって超魔合成したキメラである(超魔合成のため怪物には事前に手を加えてあった)。
胸部にザボエラが乗り込み、魔法力によってモビルスーツのように動かす。
名前はなげやりだが実力は高く、地上のノヴァ、クロコダインらといった戦士たちを圧倒し、ロン・ベルクの一撃でも堪えないほどのタフネスを見せつけた。その他の戦士たちも魔界の精鋭怪物を退けた実力者たちだったが超魔ゾンビの敵ではなかった。
基本戦法は巨体を活かした肉弾戦。魔法や飛び道具は使わず、両の手の甲に仕込んだ長剣ボーンスキュルを使う。
最大の特徴はそのフィジカルの強さ。
数多のモンスターの死肉を超凝縮した体はゴムのように柔らかく、打撃や斬撃を受け流すのには最適。内部の操縦者にはほとんどダメージが無く、並みの呪文にも強い。その防御力は、怪力を誇るクロコダインのグレイトアックスでも歯が立たなかったほど。
またザボエラの創り出した猛毒により、仮にその肉壁を貫いたとしても武器は腐食して役に立たなくなる。
単純なパワーであっても、高い身体能力を持つクロコダインを「小さい! 非力だ!」と嘲笑い、押し勝つ腕力を持っている。
強固な装甲とパワーに機動力を持たせて蹂躙するという理屈は戦車のコンセプトと同じなため、上記でザボエラ本人が言っている通り、「自分の肉体はいっさい、傷つかずに思い通り動かせて、なおかつ、一方的に敵をいたぶれる」としてはまさに最適と言える。
とはいえ、それだけの能力こそあれど「敵の拠点や障害の粉砕」や「敵兵の排除」ではなく「敵をいたぶる」という発想に行きついてしまう思考、さらに素材が味方のモンスターの死体、それを確保するために重傷を負っていた味方を殺害しているあたりはノヴァの「最低の発想」の非難は止む無しである。
弱点は死体のため回復呪文などによる再生ができないこと。これは閃華裂光拳に対抗するための処置だが、同時に強力な物理的ダメージを受けた際の処置ができなくなっている。最も対抗策が限られる以上、ザボエラとしては欠点とは思っていなかったのだろう。
ザボエラ「クックックッ!! まったく自分の頭脳が怖いわいっ!!!」
活躍
ミストバーンに見限られたザボエラは、このまま成果もなしに大魔宮へ逃げ帰れば処刑されるという末路が待っていた。クロコダインから降伏を勧められるが、これを哄笑して一蹴。瀕死の部下たちを殺害し、その死体を合成することで超魔ゾンビを誕生させる。
超魔ゾンビの力はまさに圧倒的であり、ロン・ベルクの斬撃でも肉を断てず、格闘戦を挑んだクロコダインすらも非力扱いした。そのままミナカトールを構築する魔法円を消滅させんとフローラたちに迫る。
だがノヴァが命を懸けて超魔ゾンビに挑もうとする姿に感銘を受けたロン・ベルクは、切り札の試作品「星皇剣」を呼び出す。お互いに隠し持っていた切り札をぶつけ合うが、ロン・ベルクは逃げに徹し一切攻撃を仕掛けなかった。
ザボエラ「……フッ!! わっ…わかったぞいロン・ベルクよっ!!!」
ザボエラ「自慢の剣と言いつつ、貴様、その威力に自身が無いんじゃろうがっ!!!」
ザボエラ「怖いんじゃろうがッ!!? ええっ!!? イヒヒヒッ!!!」
ザボエラ「違うというなら逃げ回ってばかりいないで、攻撃してみろ!! この腰抜けめがあっ!! ウヒャハハハハハッ…!!!」
ロン「…確かに怖い。恐ろしいよ。ただし、威力の無さがではない」
ロン「そのあまりの破壊力が、だ…!!」
ザボエラ「……なっ!!?」
ロン「……オレがこの剣をふるうのは、たった一度だけ………左右一発ずつのみだ…!」
ロン「それを放ったら…オレ自身もただでは済まんっ…!!!」
ザボエラ「……うっ…ああああっ…!!」
ロン「だからこそ!! この一撃で確実に貴様の身体を十字に裂く…!!!」
今まで調子づいていたザボエラだがロンが放つ気迫に圧され、恐怖を露わにする。
それを振り払うようにロンに襲い掛かるが、仲間を殺してまで生み出した兵器と、仲間のために傷つく覚悟を以て取り出した武器。既に勝負は見えていた。
ロン「それが、このロン・ベルク流剣術最強の奥義…!!!」
ロン「星皇十字剣!!!!!」
かくして超魔ゾンビは、ロン・ベルクが刻んだ十字架の餞別の前に倒れたのだった。
そしてザボエラは、行動不能となった超魔ゾンビから命からがら抜け出すもクロコダインによって引導を渡されるという末路を辿った。
改良点
以前ザボエラの息子ザムザが超魔化した際には、「過剰に回復させられすぎると細胞が壊死する」という欠点があり、過剰回復呪文(マホイミ)や閃華裂光拳に対して弱かった。しかし、この超魔ゾンビに関しては生体活動が停止している身体のため通用しない。
圧倒的な強さであったがそれ以上の力を持ってすれば破壊できるようで、最終的にロン・ベルクの「星皇十字剣」に打ち砕かれた。
しかし星皇十字剣とてロンの両腕に致命的な傷を負わせるものであり、それほどの力をもってしないと打ち破れなかった超魔ゾンビの強さを証明するものでもあろう。
敗北後、ルーラも使えないほど魔法力を消耗していたザボエラの様子から、難点として操縦には膨大な魔法力を用いるらしい。現にロン・ベルクとの戦いでは、攻撃に回っていたザボエラの方が息切れを起こしており、これは魔法力の消耗によるものと思われる。しかも魔法力によって動くため、それが尽きることは燃料を失うにも等しい。そのため作動中は呪文が使えないようで、超魔生物と同様の問題点が復活してしまっていたことから、まだまだ改良を必要とする余地がある。
またこれらの点から長期戦は苦手だと想定でき、劇中では味方側が「ミナカトールの魔法陣の防衛」という目的があったことからさしたる問題にはならなかったが、一般的な戦場では魔力切れを狙われて無力化される可能性もある。
自己保身と合理主義の権化であるザボエラの性格と「前回の課題をすべてクリアして初めて改良と言う…!!」と宣う科学者としてのスタンスを考えると、ミストバーンに切り捨てられなければこの場で使用するつもりのなかった試験品だったと見られる。
由来
本キャラは1994年の週刊少年ジャンプで行われた「オリジナルモンスター大募集」のコーナーの「三条賞」に選ばれた公募キャラ「ハイパーザボエラ」がモデルとなっている。ちなみに「堀井賞」は大魔宮動力炉の番人・ゴロア、「稲田賞」はキルバーン所蔵品のジャッジが該当。
小話
超魔ゾンビは、第二話に登場した賢者バロンが乗り込んだキラーマシーンとまったく同じコンセプトの敵である。こちらはハドラーが討たれたことで活動を停止していたが、司教テムジンの改造によって搭乗者の魔法力で動くようになっており、強靭な装甲によってあらゆる攻撃を弾き返してしまう。