概要
2022年4月24日、京セラドーム大阪で行われたロッテ対オリックス戦でのこと。
2回のオリックスの攻撃で、2アウト1塁での3球目。この試合でロッテの先発投手を務めていた佐々木朗希の投げた外角低めの直球がボールと判定された。佐々木はこの判定に納得がいかなかったのか、両手を広げて本塁の方へと歩きながら苦笑いを浮かべた。すると、この様子を見た、球審の白井一行が、佐々木の態度を問題視したのか、突然気色ばんだ表情を浮かべながら佐々木に詰め寄った。幸い、捕手を務めていた松川虎生や、事情を聞くためにマウンドに上がったロッテ監督の井口資仁が白井を宥めたためにそれ以上の大事にはならなかったものの、審判が選手に詰め寄るという前代未聞の異常事態に球場内は一時騒然となり、試合を視聴していたファンにも大きな衝撃を与えることとなった。
また、試合後に審判側がこの件について一切のコメントをしなかったこともファンから大きく批判されることとなる。
行動の賛否
この試合は、完全試合を達成したことで当時世間から大きな注目を集めていた佐々木朗希の先発試合ということもあり、関西地域では地上波でも放送される(海の向こうのアメリカでも放送されていた)など、世間から大きな関心が集まっていた。それだけに一連の出来事も世間に瞬く間に広まることとなり、球界関係者は元より、ファンや芸能人等の“外野”も巻き込んだ大論争が起こった。
世論の大半は「恫喝紛いの行動をした白井が悪い」とする見方が主流である。「大の大人が少し不服そうな態度をされたからと言って恫喝紛いのことをするなんて大人げない」「試合中の選手のメンタルにも影響が出かねない。公正中立な立場で試合を裁いていく審判にあるまじき行為だ」「あんな態度を見せられたら、選手が審判に変に気を遣ったり、ベンチ側がリクエストを要求しにくくなったりと試合運びに悪影響が出るのではないか」というのがその理由だ。
加えて、白井は、以前からミスを疑われるような曰く付きの判定が多く、さらに「球審の白井です(半ギレ)」のスラングに代表されるように、横柄で上から目線な態度を問題視するファンや球界関係者もいた。その不満がこの問題を機に一気に噴出してしまったという側面もあるだろう。
一方で、球界関係者やOBの一部には白井を擁護する意見もある。
公認野球規則の8・02審判員の裁定(a)の項目では、原則として審判の下した判定に異議を唱えることは許されず、異議を申し立てるために本塁を離れるようなことがあれば警告が発せられ、それに従わなかった場合は退場の宣告をすることも認められている。つまり、あの時の佐々木の行動は規則に抵触しかねないもので、一歩間違えれば退場処分を受けていた可能性もあり、それに対して注意をしようとした白井の行動は何ら問題ではないだろうというものである。
もっとも、これについても「仮にそうだとしたら猶更冷静かつ毅然とした態度で注意をしなければならなかったはず。興奮して相手に詰め寄るなどもってのほかでは」という反論もある。
また、これとは別に「審判を敵に回しても何も得はない」として、佐々木の行動に物言いをつける意見もある。もしも今回の一件で審判から要注意人物としてマークされてしまうようなことになれば、自分にとって不利な判定をされてしまうリスクが高くなるからである。
事件の影響
試合後、日本野球機構(NPB)側には相当数の意見(というかクレーム)が寄せられたらしく、後日、友寄正人審判長が白井に対して「別の方法があった」と指摘をしたことが明かされた。しかし、それ以上の処分は行われなかったため、ファンからは「あまりにも身内に甘すぎる」「白井に何かしらのけじめをつけさせるべきだ」という声が上がった。
また、28日に開催された、日本プロ野球選手会とNPBの事務折衝では、「もともといろいろなコミュニケーションは足りていないのではないかという意見はあった。今回の件も、もしかしたらコミュニケーション不足のところはあるのかなと感じている」「選手の(審判に対する)不信感みたいなものは、ちょっとある程度のレベルに達している。何らかの協議をしなければいけないなという状況の中でこのようなことがあった」として、選手会側から、今回の一件を受けて、審判の技量や選手への対応などについて、NPB側に質問状を送ることが伝えられた。