ひみつ道具としての解説
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』に登場するひみつ道具の一つ。及び同作品のエピソードの一つ。藤子・F・不二雄大全集3巻収録。
スイッチを押すと電波が発生し、それを浴びた人物は思っていることを喋ってしまう。この道具は原作版で二回登場しているが、エピソードによって名称及び効果が微妙に異なっている。
下記の初登場エピソードでは「ショージキデンパ」という名称で登場しており、パラボラアンテナ型の道具で、「本人が話したくないと考えていても強引に本音を喋らせる」効果になっている。
強情な人物は道具の効果に抗うこともあるが、その場合は電波の出力を強くすれば強引に本音を喋らせることが出来る。しかし電波の出力を強くし過ぎた場合、周りの人間にも電波の効果が及んでしまう。
TC25巻収録「のび太の結婚前夜」では「正直電波」という名称で登場しており、電波塔型の道具で、「本人が照れくさくて言えないと思っていることでも、自分から相手に伝えたくなる」という効果になっている。参考として『ドラえもん最新ひみつ道具大事典』では、この道具はショージキデンパの新型とされている(ただし原作版では、そのような説明は一切されていない)。
同じく参考として『ドラえもんのひみつ道具使い方事典1』では、ショージキデンパは「ヒューマン波コマンド送信アンテナ」、「ヒューマン波受信用アンテナ反射板」(相手がどの程度の嘘をついているかをキャッチする装置)、「ショージキ電波拡散つまみ」、「スイッチ正直ダイヤル」、「ショージキコンピューター」で構成されていると解説されている。
エピソードとしての解説
ある日、のび太はスネ夫から「君に貸した双眼鏡(彼曰く「スイス製の高級物」とのこと)を返してほしい」と言われる。のび太はクラスメイトの本山という少年に又貸ししたのだが、本山は「昨日確かにのび太に返した」と言う。
のび太は「返して貰ってない」と反論するも、本山は「自分がなくしたのを他人のせいにするのか!」と怒り出し、本山の言い分を信じたスネ夫も「又貸しした挙げ句失くしたのだから弁償しろ!」とのび太に迫る。
のび太から相談されたドラえもんは、最初は「思い違いということもあるから」と言うが、それを聞いたのび太が「ドラえもんまで僕を疑うの!?」と泣き出してしまった為、ドラえもんは謝罪しつつポケットから「ショージキデンパ」を取り出す。
早速ドラえもんとのび太が本山の家へ向かうも、彼の母親から「今は家にいない」と言われてしまう。困ったドラえもん達は、空き地でリサイタルしているジャイアンに本山の居場所を聞くも、彼は「リサイタルに聞き惚れている皆の邪魔をするな!」と追い返してしまう。
そしてドラえもん達は道端でしずかと出会い、彼女から「本山君と宿題をしていた」という証言を聞き、本山君が居留守をしていることを知る。ドラえもん達はスネ夫を連れて再び本山の家を訪ね、彼の母親に電波を浴びせると、彼女は「(息子なら)家の中にいる」と話す。
本山を問い詰めるドラえもん達だったが、彼は相変わらず「君に返した」と言って聞かない為、電波を浴びせることにする。しかし強情な彼は中々本音を話そうとしなかった為、ドラえもん達は道具の電波を更に強くする。
すると、ついに本山は「双眼鏡は自分が壊し、弁償させられるのが嫌で嘘をついた」と自白する。しかし、隣にいたスネ夫も「彼に貸していた双眼鏡はスイス製の高級品ではなく縁日の屋台の売れ残りだった」と言い出してしまう。
ドラえもん達が家の外へ出ると、本山の母親とスネ夫の母親(らしき人物)が互いの息子の悪口を言い合っていた。それだけでなく、空き地ではさっきまでジャイアンの歌を誉めていた子供達が、彼の歌に対する本音を言ってしまい、それを聞いて泣き出したジャイアンと喧嘩になっていた。
その様子を見ながら、ドラえもんは「電波が散らばったらしい」と言うのだった。
関連道具
- 白状ガス
ガス型のひみつ道具。
このガスを吹き付けると、相手に秘密や隠し事を白状させることが出来る。
- ウラオモテックス
シール型のひみつ道具。
これを貼り付けられた人物は、裏で人知れずやっていたことや、いつも心に留めていた本音を周囲にバラしてしまうようになる。
- ジャストホンネ
錠剤型のひみつ道具。
これを飲むと、本音しか話すことが出来なくなる。効き目は1日持続する。
- あけっぴろげガス
ガス型のひみつ道具。
このガスを吹き付けると、相手は自分が思っていることを喋ってしまい、隠し事が出来なくなる。
余談
上記のエピソードは大山のぶ代版アニメにて映像化されている。基本的には原作版通りのストーリーだが、終盤の展開がアレンジされている。
ドラえもんとのび太がショージキデンパの電波を強くした際、原作版では本山の母親とスネ夫の母親(らしき人物)、そしてジャイアン達が影響を受けているだけだったが、こちらでは町中に電波の効果が広まってしまう様子が描かれている。
作中では美容師及び肉屋と来客、公園で絵を描いていた画家と通行人がお互いの悪口を言い合ったせいで喧嘩を始めてしまった。その際、ドラえもんは「ショージキデンパの効果を取り消す為の道具はないが、全ての本音を言い終えれば自然に効果が消失する」と述べている(ただし原作版では、そのような設定及び描写は存在しない)。
町内の騒動が収まった後、のび太が「世の中嘘ばっかりなんだね」と呟く。それを聞いたドラえもんがのび太にこの道具を向け、彼が慌てて口を押さえながら逃げるオチになっている。