※この記事には書籍化範囲外のネタバレを含みます
プロフィール
エンブリオ名 | 【始原万変 ヌン】 |
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TYPE | ボディ |
能力特性 | 全身スライム置換&変形 |
到達形態 | Ⅶ |
紋章 | 一粒の水玉 |
概要
ゼクス・ヴュルフェルが持つ超級エンブリオ。
カテゴリーはエンブリオの中でも特にレア度の高いTYPE:ボディ。全身が黒いスライムに置換された全身置換型のエンブリオで、普段のゼクスの姿はスキルによる変形である。
能力
主な能力特性は変形。
様々なものに姿を変える《シェイプシフト》と肉体をスライムに置換する《液状生命体》の二つのスキルがメイン。《シェイプシフト》は対象の姿をコピーするだけでなく、対象のジョブスキルやステータス、エンブリオの能力までコピーすることができ、人間への変身の際はDNAレベルで一致するほどの高い精度を誇る。加えてもう一つのスキル《液状生命体》によってHPの意味合いが変化しており、体力ではなく体積を表す数値となっている。これにより単なる物理攻撃はゼクスには通用せず、全身をバラバラにしても飛び散った分体から完全再生する脅威的な生存能力を獲得している。
だがこれらの高い万能性の代償として全ステータスがおよそ半分になるマイナス補正がかかっている。加えて高い万能性を誇るシェイプシフトにもそれ相応の複雑な条件がいくつもあり、非常に扱いづらいエンブリオとなっている。だがゼクスはこれらの欠点の一部を克服しており、強大なマスターの一人として恐れられている。
スキル
- 《シェイプシフト》:アクティブスキル
肉体を変形させ、様々なものに変化させるスキル。マスターやティアンならステータスやジョブスキルを、エンブリオなら固有スキルをコピーできる。複数のコピー対象を組み合わせたキメラ的な変形も可能。変形中は継続的にSPを消耗し、変形を維持できなくなると本来の黒い葛餅のような形をしたスライムに戻る。
十全に使用するためには様々な条件をクリアする必要がある。
- 対象の体細胞を摂取する
コピーするマスターかティアンの体細胞を取り込むことで変形対象としてストックできる。
- コピーできないもの
コピーする対象は実体のあるものに限られるため、霊体のアンデッドやテリトリー系列のエンブリオはコピーできない。また、装備品の場合見た目や強度は再現可能だが装備スキルは獲得不可能。
- スキルを行使するには相手を知らなくてはいけない
体細胞を摂取して対象をコピーできても、対象がどのようなスキルを持っているかを知らないとスキルを行使できない。
- 半分の相手にしか変形できない
対象のスキルやステータスを完全にコピーするためにはコピーする対象の合計レベルを、エンブリオの場合は到達形態を二倍上回らなければ完全にはコピーできない。
例を挙げると合計レベルが1000の相手をコピーする場合、自身のレベルが2000であることで完全にコピーでき、エンブリオなら単数切り捨てで第三形態までコピーできる。
この条件を満たさないと性能は著しく落ち、変形の精度やスキルの威力が悪くなる。この基準はコピー後にも適用され、対象の合計レベルが上がったら突然十全な変形ができなくなるということが起こりうるため、コピー後も対象の最新情報を確認する必要がある。
- ストックできるコピー対象には限度がある
コピーできるストックは自身の合計レベルの十倍まで。レベル2000なら許容量は20000であり、これまでにストックした対象のレベル合計がその数値を越えるとそれ以上はストックできなくなる。新たなストックを追加する場合は既存のストックを削除して整理する必要がある。
- 《液状生命体》:パッシブスキル
アバターの肉体をスライムに置換する。HPの意味合いが体力ではなく体積に変化するため、ゼクスを完全に殺害するためには肉体を一片も残さずに消滅させるしかない。肉体をバラバラにして攻撃をかわし、分体を再集結する、酸素を必要としなくなるなどスライムならではの利点も多いが、スライムとしての肉体感覚は常人ならまず発狂し、ゼクスほど頭のネジが外れていなければまず運用できない(そもそも常人にこのような異常な能力は発現しないとも言える)。
- 《スプリット・スピリット》:アクティブスキル
第七形態に進化したことで得た最終スキル。変形対象の能力をそのままに最大六体まで分裂するスキル。分体のHPは分裂した数だけ最大HPから分割され、分裂後はスキル発動時に変形していた対象の能力しか行使できなくなる。この効果は最後の一体になるかスキルが終了するまで継続し、残った分体は一体を残して消滅する。デメリットは分割されたHPはデスペナルティになるまで元に戻らず、最大HPが削れてしまうこと。この状態ではレベルアップによる最大HPの上昇値も分割されてしまう。
ヌ ン
- 《我は万姿に値する》
必殺スキル。
500レベルをコストにストックした変形対象の一人を選び、三十分間その力のすべてを行使できる。コストとして差し引かれるジョブは任意であり、ゼクスは基本的にメインジョブから差し引いている。シェイプシフトの制限が撤廃され、超級エンブリオへの完全な変形が可能となる。特殊なコストが必要なスキルもある程度までなら行使可能。ゼクス自身検証したわけではないが、感覚的により高レベルの時に捧げた500レベルの方がリソース量は多いらしい(グローリア戦での使用時とシュウ戦での使用時の比較)。必殺スキル使用後にスプリット・スピリットを使用すれば超級エンブリオ六体分という圧倒的な状況を作り出せる。能力は完全にコピーするが、色はヌンとしてのカラーである黒が主となる。基本的にはシェイプシフトの上位互換だが、コピー上限がなくなること以外はそのままなため、完全なコピーには対象の倍のレベル+500が必要。超級職抜きでの最大レベルが500であることを考えると数ある必殺スキルの中でもデメリットが特に重いスキルの一つで、使えば何者にもなることができるが、使いすぎると何者にもなれなくなる、まさに"諸刃の剣"に等しい必殺スキルである。
スキル名は万死と万姿のダブルミーニング。それが万の姿になれるという意味か、対象に万の死をもたらすという意味かは個々人の判断に委ねられる。
本編で披露したシェイプシフト
変形時の名称はドイツ語で統一されており、ゼクスはスキル名を宣言して使用するが、スキル宣言は本来必要ないスキルである。
- 【破壊王】(シュウ)
因縁の相手であるシュウ・スターリングをコピーした姿。
マスター屈指の攻撃力を持つシュウをコピーしたことでゼクスもまた絶大な攻撃力を手にしている。ただSTRが高すぎるあまり、殴った反動でゼクスの腕も吹き飛ぶ(すぐに戻るため大したデメリットではないが)。コピーする部分が右腕のみの場合は【破壊王】の右腕(レヒト・アルム)、左腕なら【破壊王】の左腕(リンクス・アルム)となる。
- 力の巨砲(マハト・カノーネ)
シュウのエンブリオであるバルドル第一形態をコピーしたもの。
【羅神盤 スピンドル】へのトドメに使用した。
- 機関砲(マシーネンカノーネ)
バルドル第二形態をコピーしたもの。
コピー元同様の運用が可能だがオリジナルとの差異として発射された弾丸もゼクスの分体であるため、相手の肉体に貼り付いて攻撃を加えるという芸当が可能。
- 氷の盾(アイス・シルド)
カルディナのマスターが持つヨツンヘイムというエンブリオをコピーしたもの。
元が熱量吸収という単機能に特化したエンブリオである分出力が高く、ゼクスからしても扱いやすい能力。
- 剣(シュベールト)
神話級金属でできた剣をコピーしたもの。
作中では手首の先のみを変形させ腕をスライムに戻すことでムチのように振るっていた。
- 【剣王】(フォルテスラ)
かつての戦いの後引退したマスター、フォルテスラをコピーしたもの。
グローリアの一件で彼が引退する前にこっそりと入手した。
- 《折れた刃》(ゲブロッヘン・シュベールト)
フォルテスラのエンブリオ、ネイリングをコピーしたもの。
- 【炎王】(フュエル・ラズバーン)
アルター王国の魔法使いであるフュエル・ラズバーンをコピーしたもの。シュウとの決戦では手首のみを彼のものに変形させ、彼が編み出した奥義《恒星》(フィックスド・スター)を放った。
- 黒き翼(シュバルツ・フリューゲル)※仮称
王国の準超級、ジュリエットのエンブリオであるフレーズヴェルグをコピーしたもの。己の身一つで飛べるフレーズヴェルグはかなり便利なため、現在でも使用している。
必殺スキル
- 黒血戦神(シュバルツ・バルドル)
バルドル第七形態をコピーしたもの。
バルドルのマスターであるシュウのスキルも使用可能であり、《破界の鉄槌》も使える。グローリア戦で使用したのもこの形態。
- 黒血双脚(シュバルツ・フース)
同じ監獄にいた超級、ハンニャのエンブリオであるサンダルフォンをコピーしたもの。監獄から脱獄するために使用し、空間に穴を開けた。
余談
エンブリオのモチーフはエジプト神話の原初の神ヌン。ヌンは原初の水(アビュッソス)とも呼ばれ、黒々とした水からあらゆる神々が誕生したとされる創造神であり、世界が誕生すると冥界へと眠りにつき、そこには死産した赤子や罪人の魂が還るという生と死に関連する神である。