概要
顔料と水溶性のアクリル樹脂から作られている点はアクリル絵具と全く同じ。
しかし、アクリル絵具が色によって透明色や半透明色がある上、塗料面にやや光沢があるのに対し、こちらは普通色に限っては全て不透明色で、塗料面が艶消しであるのが特徴である。
また、乾くスピードもアクリル絵具に比べるとやや遅めで、着彩で慌てなくて済む。
これはアクリル樹脂を少なめに配合している事によるもので、使用顔料もポスターカラーとほぼ同じ、発色の鮮やかさを優先させた合成顔料を使用している。
その結果、アクリル絵具の様な耐光性や耐久性は望めない。よって、屋外展示にはあまり向かないので注意。
歴史
1950年代に生まれ、日本でも70年代辺りから使われ出したアクリル絵具は、大変便利な画材ともてはやされたが、長年ポスターカラーを愛用して来たデザイナーからは特有の光沢故に疎まれてしまった。
そこで、大阪に本社を置くポスターカラーの老舗ターナーが、研究を重ねた上、1982年に発売開始をしたのが、現在のアクリルガッシュである。
始めはプロのデザイナーイラストレーター向けに大きめのサイズのチューブから発売されたが、やがてその使い易さや発色の良さが評判となり、一般向けに小さめのチューブも発売される様になった。
その後、ホルベインやニッカーと言った主に日本のメーカーが、それぞれ個性のある製品を発売、サイズも用途も広がりを見せた。
更には近年、バニー(リキテックス)やターレンス(アムステルダム)等海外のメーカーも参加、現在に至る。
使用方法と用途
水性の画材なので、水で溶くだけですぐさま着彩に取りかかる事ができる。
極端な薄塗りは顔料の粒子が浮き出してしまうのであまり向かないが、半透明の水彩画風であれば可能である。
やはり向いているのは厚塗りで、その場合、着彩途中でどうしても消えてしまう主線の処理によって、仕上がりに変化が出て来る。
そのままでもいいが、色鉛筆で主線を描き起こすとソフトに、マーカーやカラーインクだとシャープに仕上がる。
また、同じメーカーのアクリル絵具の各種メディウムを併用すれば、表現の幅が一気に広がる。例えば、モデリングペーストやジェルメディウムを用いれば、極端な厚塗りも可能になるし、ペインティングメディウムを用いれば、エアブラシに用いる際扱い易くなり、表面も美しく仕上がる。但し、使い過ぎると本来の艶消しの質感が損なわれるので注意。
アクリル絵具程ではないが基底材を選ばないのも特長で、用紙の場合はちり紙や半紙の様に薄く弱いもの以外のほとんどに使用できる。更には木材・布・プラスチック等用紙以外にも着彩が可能。基底材によっては発色が落ちたり、定着しづらかったりするものもあるが、その場合は専用のプライマー(下地)をあらかじめ塗る事で大抵は解決できる。
上記の様な特徴に加え、その抜きん出た発色の良さから、広告デザインや様々なジャンルのイラストレーションや絵画の他、美術教育、建築のパース等幅広く用いられている。
(引用元:「アクリル絵具」『Wikipedia日本語版』 2010年3月21日 (日) 05:26 UTCの版
「アクリルガッシュの全技法」南雲治嘉著 グラフィック社
「デザインの現場と道具」「画材大全」以上、美術出版社)