概要
1999年4月20日にアメリカ合衆国コロラド州ジェファーソン郡にあるコロンバイン高等学校で発生した在学中の生徒2人による銃乱射事件である。
実行犯であるエリック・ハリスとディラン・クレボルドが、武装して校内外にいる生徒・教諭に無差別(厳密にいえば標的は決めていた)に銃撃し、計13人の命を奪った後に自殺した。
この事件の根幹にはアメリカ特有のスクールカーストが原因であることが示唆されている。
かのマイケル・ムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」はこの事件の関係者へのインタビューを中心に構成されたドキュメンタリー映画である。
関係者の貴重な肉声がまとめられているので、一度観ておいて損なしである。
経緯
事件前
2人は学業は優秀な生徒だったが、入学したコロンバイン高等学校はスポーツに力を入れている学校のため、頭は良いがナヨナヨした見た目の2人は学校では浮く存在(所謂、カースト下位のナード)であったことから運動部の生徒(所謂、カースト上位のジョック)達にいじめの標的にされてしまう。2人は彼らから「ファゴット(オカマ野郎)」と罵られる、すれ違いざまにわざと肩を当てられる、ロッカーに閉じ込められるなどいじめを受け続けていた。
その際、エリックとディランは同じくいじめを受けていた生徒達で結成した「トレンチコート・マフィア」(自警団のような物。トレードマークにトレンチコートを着てサングラスを掛けていた)に所属していた。
同じ境遇を過ごしていくことでエリックとディランは強い絆で結ばれるが、長期的に渡るいじめで次第に精神的に追い込まれていき(この頃には抗うつ剤や精神安定剤などを服用していた)、凶悪な性格に変貌していく。
その後、2人は犯罪に手を染めるようになり、エリックがウェブサイトに親友に対する殺人予告を投稿して、それを親友の親が発見して保安官に報告(しかし、警察はその件についてファイルせず、事件発生後も隠蔽した)されたり、事件発生の1年前に車上荒らしをして2人とも逮捕されたりした。
そして、彼らは自分達をいじめていた生徒(ジョック)達に復讐するべく、大量殺人という恐るべき計画を企てる。手製のパイプ爆弾を作成し、知り合いのツテで銃火器(カービン銃、ソードオフショットガン、TEC-9など)を購入して調達し、射撃の訓練もしていた。
発生
1999年4月20日にエリックとディランはそれぞれ車で学校を訪れて駐車場に停めた。そして、大勢の生徒を殺すために手製のパイプ爆弾をカフェテリアに設置し、ランチで人々が集まる時間帯にタイマーをセットして駐車場に戻って車の中で待機した。爆発を合図に行動を起こそうとするものの、肝心の爆弾が何故か不発に終わり、痺れを切らした2人は車から出て銃の乱射を始めた。手始めに近くの丘で昼食を食べていた男女2人を銃撃し、その後もジョック達を探しながら無差別に生徒達を銃撃し続け、不発した爆弾を確認するためにカフェテリアに向かい校内に侵入した。
その際、騒ぎを聞きつけた女教諭が駆けつけて2人が動画撮影でいたずらをしていると思って注意しようとするが、発砲してきたことで慌てて図書館に逃げて911番(日本でいう110番)に通報した。その後に学校警察官の保安官補が駆け付けて撃たれた生徒を助けるために銃撃するが、火力に敵わず後退した(その際、保安官補は緊急支援要請「コード33」を無線で連絡した)。
校内に入った2人はそのまま銃の乱射と爆弾を投擲(多くは不発)し続けてカフェテリアの上にある図書館に到着し、隠れている生徒達に「ジョックは全員立て!」、「白い帽子(運動部員は学校の伝統でかぶっている)をかぶっている奴は全員立て!」と叫び、誰も立たなかったため手当たり次第に見つけた生徒達を銃撃し殺害し続けた。死者の多くはこの図書館での出来事だった。
その後に図書館を出て校内を発砲し続け、科学室に火炎瓶を投げる等をした後に再び図書館に戻る。そして、外にいる警官達と窓越しに銃撃した後、エリックとディランは自らの銃で自害する。
この事件はわずか45分の出来事で、死者13人(内、生徒12人、教諭1人)と負傷者24人を出す大惨事となった。
今回、用意したパイプ爆弾の多くが不発に終わったが、もしもカフェテリアにセットされたパイプ爆弾(爆弾はカフェテリアを全壊させ、上の階にある図書館をも崩落させるぐらいの威力を持っていた)が時間通りに起爆していたら、犠牲者は500人を超えていたかもしれなかった。
事件後
エリックとディランの死後、警察は校内に爆弾の可能性を危惧して慎重に行動せざるを得なくなり、校内の遺体を収容したのは翌日からとなった。
その後、警察はエリックの殺人予告のことを隠蔽したり、事件を適切に対応しなかったことなどの職務怠慢を非難された。
さらに後の調査で彼らが事件前にジョック達に向けて憎悪剝き出しに罵る動画を収めたビデオが発見され、彼らの犯行動機の貴重な物証だったが長期にわたり公表せず、その事で多くの誤った憶測を広めた。また、彼らと親しかった生徒(上述の脅迫を受けた親友)を事件に関与していたと疑い、長らく容疑者扱いしていた。
この事件が切っ掛けに銃の購入可能年齢の引き上げや火薬に関する規制強化が検討された。
また、エリックとディランは歌手のマリリン・マンソンの曲を好んで聴いていたことから、マンソンは理不尽なバッシングを受ける羽目に。
映画監督のマイケル・ムーアはこれに対し「マンソンは叩かれるのに、事件前に2人が楽しんでいたボウリングが責められないのはどういうことだ」と皮肉った(ちなみにこれが前述のドキュメンタリー映画のタイトルの由来である)。
関連タグ
津山事件:こちらも歪んだ上下関係による迫害が原因で起きた大量殺人。
マルハワ学園:スクールカーストが原因で大量殺人が起きた架空の学園。