法と契約を司る太陽神。
インド神話ではミトラ、ゾロアスター教神話ではミスラ、ミフルという。
インド・イラン共通時代に遡ることができ、インドラ等と共にミタンニ碑文に記載が確認される古い神格。
ヒンドゥー教とゾロアスター教では同じ存在でもその位置づけが善悪真逆になることがしばしばだが、
ミトラ(ミスラ)の場合、ヒンドゥー教ではデーヴァ(天部)、ゾロアスター教ではヤザタ(神霊)であり、
両方の神話で神聖視される存在となっている。
ユダヤ教の大天使メタトロンとも語感が似てるので結び付けられる。
ミトラス(ミトラース)とは西方世界にこの神への信仰が持ち込まれた際に
ギリシャ語形になったものである。そこではミトラス教と呼ばれる
密儀宗教としてローマ各州に流布しミトラエウムという神殿も建てられた。
ミトラス教はイシス教とともに、初期キリスト教とも教勢を争った。
ミトラス教は密儀宗教のため、あまり情報が外に漏れず、
また弾圧による破壊のせいで現存する資料も少ないが、
生まれながらに片手に松明を掲げていたという。ミトラスの表象として
アナトリア風の服とフリギア帽子をかぶり、聖なる雄牛を屠る像が残されている。
冬至とミトラスとクリスマス
季節の移り変わりと共に昼の時間が短くなっていくのが長くなるのに転じる冬至の日は
太陽神であるミトラースが死に、再び生まれる日だと考えられており、祭日になっていた。
キリスト教でもこの冬至(12月25日)にクリスマスにイエス・キリストの生誕を祝う。
ユスティヌスがミトラス教徒を非難したところによれば、彼らもまたキリスト教のミサに似た儀式を行っていたらしい。
このことからイエスが実在の人物でなく周辺の異教神話を元に創作された人物像であるとする
「キリスト神話説」で取り上げられることもしばしばである。とはいえ、
とりわけネット上ではミトラスにも十二使徒がいる、彼も磔にされた、といった
ソースの怪しい情報も取り上げられることが多いので注意が必要である。
関連タグ
キュベレー(西アジア起源の密儀宗教として)