三菱ジープは、三菱が1953年から製造・販売していた四輪駆動車(RV車)である。
概要
黎明期の車両は、ジープを開発したメーカーであるアメリカのウィリス・オーバーランド(現クライスラー)から部品を購入して日本で組み立てるノックダウン生産であったが、程なくしてライセンス生産に切り替えられた。
その後、徐々に日本で改良が加えられて50年近く生産されたロングセラーモデルとなった。
製造メーカーは、中日本重工業(現三菱重工業)→東洋工機(現パジェロ生産)。
販売者が中日本重工業、新三菱重工業、三菱重工業、三菱自動車と多岐に渡っているが、いずれも三菱財閥系で戦後の財閥解体やその後の再編成で発足、併合された会社である。
三菱ジープはユーザーから根強い支持を受け、同社製の高級セダンで「走るシーラカンス」と揶揄された初代『デボネア』の比ではない超長寿モデルであったものの、1990年代に入ると年々厳しくなる排ガス規制や衝突安全規制に対処することが難しくなり、1998年には生産終了が決定。2001年に販売が終了した。
バリエーション
大まかに分けて、
- ボディ:ソフトトップ(幌屋根)とハードトップ(鉄製の箱型ボディ)の2種類。
- シャーシ:ショートホイールベース、ミドルホイールベース、ロングホイールベースの3種類。
- エンジン:バリエーションは多いものの、大まかにはガソリンエンジンとディーゼルエンジンの2種類。
が存在した。
一方で、製造が非常に長期間に及んだため途中で多くのマイナーチェンジを経ており、外観は変わらずとも部品の互換性が失われているものも多い。甚だしいものでは、命名則に忠実に従った形式番号をつけた結果「似た仕様で全てが違う別モデル」が登場したという例があったという。
ディーゼルエンジン車にはターボ付きモデルの設定があったため、ひと昔前の三菱のキャッチコピーである「フルライン4WD」「フルラインターボ」は、問題なく達成されていた。
ユーザー
元を正せば軍用車両に行き着くものの、基本的には民間向けの車両である。
故に、ユーザーはアメリカ軍、保安隊(後の自衛隊)などのほか、林野庁、各消防機関など軍、公官庁、民間問わず幅広く使用された。
保安隊・自衛隊向け
保安隊では、初期のショートホイールベースモデル(J3系、J5x系)が「1/4トントラック」として採用された。
1958年に自衛隊へ改組された後も1/4トントラックの調達が進められたが、1973年(昭和48年)にミドルホイールベース(J2x系)をベースとした73式小型トラック(初代)に切り替えられた。
1997年、2代目(パジェロベース)の調達開始とともに製造終了。