ミック・エンジェル
みっくえんじぇる
概要
CV:成田剣(ドラマCDのみ)
冴羽獠のアメリカ時代のパートナーにして親友。海坊主とも旧知の仲である。
アメリカNo.1スイーパー。
愛銃はデザートイーグル。
腕は上記の二人に匹敵する程なのだが、獠に輪をかけたスケベである。
しかし、その一方で仕事に私情は挟まず報酬の約束さえつけば、恋人であろうと容赦なく殺すほどのドライさを併せ持つ(海坊主もその姿勢は「プロ中のプロ」、「本当のプロ」と評価していた)。
ちなみに『シティーハンター』とは、元々は獠がアメリカ時代にミックと組んでいた頃に使っていたコードネームである。
ターゲットに恋人がいる時には、その恋人がターゲットの死後に悲しまないように必ず口説いて自分のものにしてから仕事に入るというポリシーを持つ。
ただし、これは殆どミックの趣味に近く、そのようにして恋人のいる女性に手を出したがる性癖を正当化している面もある。
劇中での活躍と災難
原作漫画の単行本では第32巻にて初登場。
ユニオン・テオーぺから獠を抹殺するように依頼され(しかし獠は「半ばユニオンから脅迫される形で引き受けたのだろう」と推測している)、来日する。
獠のパートナーである槇村香を恋人だと見なし、いつもの調子で香を口説いて惚れさせて自分のものにしようとするのだが、香の純心に触れるうちにいつしかミックの方が香に本気で惚れ込んでしまう。
獠に「カオリに本気で惚れた」と宣言するも、逆に獠からは「香には手を出すな」と警告され、獠の真意を量りかねた香からはプロのスイーパーとして本気の勝負を挑まれてしまい、自分には獠と香の絆を断ち切れないと判断した結果、ミックは仕事を放棄する。
あろうことか、獠と香にとっての『愛のキューピッド』的な役割を果たすことになってしまったのだった。
その後、愛する香のために独りでユニオン・テオーペと戦うことを決意し、アメリカへ帰国するために飛行機に乗るが「冴羽獠を抹殺する依頼を反故にした制裁」としてミックを始末するべく既にユニオン・テオーペの工作員が機内に乗り込んでいた。
工作員が手にした起爆スイッチを見たミックは、咄嗟に隠し持っていた銃で工作員の額を撃ち抜くが、『悪魔の薬・PCP』こと通称『エンジェルダスト』を投与していた工作員は死なず、起爆スイッチを押されてしまい飛行機ごと爆破される。
しかしミックは奇跡的に生存しており、海上を虫の息で漂っていた所をユニオン・テオーペの船に回収される。
ユニオン・テオーペの総帥であり、長老(メイヨール)である海原神の判断で、人間の限界を遥かに超えた驚異的な生命力を引き出す麻薬である『エンジェルダスト』の最新型を投与され、瀕死の状態から無理矢理に回復させられるのだが、海原の目的はエンジェルダストによる強力な洗脳効果と興奮作用による戦闘強制力により不死身の無敵兵士としてミックを利用する事だった。
そして、海原の船で繰り広げられた最終決戦では「魂を失った脱け殻」の様な無惨な姿で獠たちと戦う事に。
新型で強力なエンジェルダストにより「海原の命令しか聞かない」と云う程にまで完全に洗脳されてしまい、常軌を逸した超人的な怪力を発揮して海坊主をあっさりと倒すが、香の命懸けの説得で僅かに正気を取り戻す。
海原の「侵入者は殺せ」と云う命令を無視し、逆に海原本人へと襲いかかるのだが、誤って船の制御装置をエンジェルダストの効果による驚異的な力によって素手で貫いてしまい、高圧電流で感電して意識不明となってしまう。
この時、衝撃で弾け飛んだミックの「幸運の御守」である『弾丸のペンダント』が後に獠を救うことになった。
海坊主と香によって海原の船から救出され、その後は教授の賢明な治療により九死に一生をとりとめるものの、飛行機爆破の際に負った重傷とエンジェルダストの禁断症状に加えて高圧電流による感電と火傷の後遺症のせいで全身の筋肉はそげ落ち、銃のトリガーを引くことすらもできなくなってしまっていた。
復活、そして…
海原神とユニオン・テオーペの事件が終わってから数ヶ月後、獠たちに黙って教授の家から出て社会復帰しており、半月程『シティーハンター』を名乗って獠たちの仕事を横取りしていた事が発覚。
紆余曲折あって獠とケンカして家出してきた香とコンビを組み『シティーハンター』の名を賭けて獠と同じ仕事で対決するが、結果的に自身がプロのスイーパーとして通用しなくなっている現実を思い知らされる事に。
この仕事中のアクシデントで怪我をしてしまったミックは入院するが、そこに教授の助手である名取かずえが獠に連れられて来ていた。かずえは突然ミックに抱きついて泣き出し、突然の状況に香は驚く。
実はミックは教授の家でかずえから献身的な治療と介護を受けるうちに、互いに特別な感情が芽生えてかずえと恋仲になっていたのだった。
獠はかずえから「ミックのことを頼む」と密かに依頼されていたのだ。
これによって、ミックは獠と香に自らの完敗を認め、スイーパーを引退した。
その後は恋人のかずえと二人で暮らしながら、冴羽アパートの向かいのビルに『M.ANGEL OFFICE』を開業し、米誌「ウィークリィ・ニュース」の特派記者として働く事になった(因みにこのウィークリィ・ニュースは香の実姉・立木さゆりも所属しており、ニューヨーク本社で働いている)。
銃を扱う事は出来なくなったが、それを補うように袖にダーツを仕込んだり、発信機を持ち歩くなど他の道具を駆使するようになった。
不遇?
獠の前歴を語るうえで欠かせない重要人物の一人なのだが、原作では初登場して連載が終了するまでの期間が一年未満と最終盤のみのキャラクターであるうえに、海原神のエピソード後はエンジェルダストと高圧電流による感電の後遺症で目立った活躍が出来ず、知名度の割には出番は少ない。
シティーハンターのパラレルワールドである『エンジェル・ハート』では、ミックを思わせる様な「獠のアメリカ時代の相棒」的なキャラクターは最後まで登場しなかった。
それどころか、アニメ版を始めとする映像作品への登場も一切なく、原作以外ではドラマCDと宝塚版しか登場していない不遇なキャラと言える。
2023年9月8日に公開されたアニメ映画『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』での登場が期待されていたが、劇中で存在が言及される事すら無かった。
今後、アニメ版の続編が製作された場合にミックが登場するかどうかは完全に未知数である。
なお、アニメ『シティーハンター2』では「獠のアメリカ時代のパートナーで親友」、「アメリカNo.1スイーパー」というミックと共通する設定のオリジナルキャラクター、ロバート・ハリスン(CV堀秀行)が登場している。
ロバートは仕事のために来日し、獠と協力することに。しかし、敵対組織に婚約者のソフィー・シルバーマン(CV佐々木るん)を人質に取られ、獠を殺すように脅されており、獠と対決した。
その結果、獠との決闘で命を落とした。
『シティーハンター3』最終エピソードでは、その恋人のソフィーが敵討ちのために来日。香を人質に取り獠と決闘しようとするが、割って入った香の言葉に心を打たれて改心し、彼の想い出を胸に帰国した。
原作者の北条司氏によれば、このロバートの影響で漫画でのミックの登場が大幅に遅れたとのこと。
獠の飛行機恐怖症の設定をアニメ版『シティーハンター2』終了まで原作漫画では描かなかった様に、アニメ化が原作にもたらした弊害と言える。
ただし、アニメスタッフと北条氏との関係は常に良好で、アニメ版監督のこだま兼嗣氏は「北条先生にはアニメのせいで色々と気を遣わせてしまって申し訳なかった」と後に文庫本の対談で語っていた。
余談
担当声優の成田剣はエンドオブエタニティでヴァシュロンを演じている。
ヴァシュロンがどういう人物かというと、
「作中屈指の実力者だがスケベ(同居しているヒロインから手痛いツッコミを受けまくる)」
「かつて軍隊に所属していたが現在は拳銃を片手に何でも屋を営んでいる(凄腕の師匠がいたが、彼が絡んだある事件の後で軍を脱退した)」
などなど獠とよく似た設定である。
一部ミックと類似している部分もあり、
「依頼人から権力者の結婚式に乗り込み、自分を振った元カノを拉致してほしいという依頼を受ける(つまり他の男から女を奪い取るということ)」
「かつての依頼人と敵対する(幸いにも依頼人本人とは相対しなかったのでバレずに済んだようで、ミックのように報復はされなかった)」
「大怪我をするがある事情によって治癒し、そこを後に依頼人となる人物に助けられる(そして後に敵対する)」
などの展開がある。