演じた俳優は、三田村邦彦。
ドラマのエンディングテロップでの役名は『秀』だが、一般的には『飾り職人の秀』または『飾り職の秀』で呼ばれる。
『必殺まっしぐら!』では『かんざしの秀』とOPナレーションで呼ばれ、劇場版での役名は『錺り職の秀』の表記になっている。
人物
必殺シリーズ第15弾『必殺仕事人(第1期)』より登場した、簪(かんざし)などの女性用の装飾品を作る腕の良い飾り職人。
職人としてのセンスと技術力は確かで、品物の評判も良いのだが、自分が気に入った仕事でなければ引き受けない気難しく頑固な一面もある。
裏の仕事の際には洋装風の黒装束を身に纏い、右腕手首には常にシルバーのブレスレットを付けている。
中村主水たちと出会う前にも裏稼業を行っていた時期があり、既に足を洗っていたのだが惚れた女性の命を奪った悪人を始末すべく成り行きで姿を隠したまま主水たちの裏の仕事に加勢し、その後は紆余曲折の末に彼らの裏稼業に加わった。
登場当初は若さゆえ熱くなりやすく、暴走しては主水や畷左門から鉄拳制裁を喰らい、二代目元締のおとわからは存在を危ぶまれて殺されかけた事すらあった。
しかし、仕事人として主水と共に裏家業で幾多の経験を経たことで必殺シリーズ第19弾『必殺仕事人Ⅲ』で西順之助が登場する頃には落ち着いた性格となっており、かつてとは逆に仕事人として未熟な順之助を叱責する立場にもなった。
困った人を放っておけない性分であり、これが原因で事件に巻き込まれてしまったケースもある。
気さくな性格ながら妻子を持たない独身者である一方、必殺シリーズ第21弾『必殺仕事人Ⅳ』では訳あって天涯孤独の身になってしまったお民(演:林佳子)という少女を引き取って育てており、良き父親としての顔も見せていた。
裏稼業仲間の左門とは住居の長屋で隣同士と云うこともあって家族ぐるみの付き合いであり、そんな彼の生きざまを見てきた当人なりに思う所もあったのかもしれない。
殺し技など
専用の小さな道具で相手の急所(主に頚筋や延髄、所謂“盆の窪”)を刺す。
登場してから暫くは錺り細工に使う持ち手に凧糸を巻いた鑿(のみ)を用いていたのだが、畷左門の「新技腰骨はずし」に影響されたのか『必殺仕事人(第1期)』の第33話からお馴染みの短冊飾りのついた殺し専用の特製簪を用いるようになった。
殺し用の簪は複数存在し、色も当初は銀色であったが、後に金色の簪に変更され、後のシリーズでは銀杏葉を模した飾りが付いた簪が登場した事もあったが、劇場版では主に銀色の簪を使用する事が多かった。
悪人へのとどめの「つなぎ」として天井や床下からの急襲による不意打ちの上での格闘も用いており、その腕っぷしたるや刀を構えた侍であっても圧倒して仕留めてしまうほど。
殴ったり蹴ったりして後ろを向かせてから首筋を刺すケースが多いものの、場合によっては脳天や眉間・心臓などを狙い仕留めることもある。
また、上述の高い身体能力を活かし、標的の始末のみならず相手の偵察や追跡などを担うことも少なくない。
余談
秀は当初、必殺シリーズ第17弾『新必殺仕事人』の最終回で殉職する予定であったが、あまりにも人気だった為に秀の殉職の噂を聞き付けた女性ファン達から大量の除名嘆願の署名や抗議文が朝日放送や松竹に殺到してしまい、これによりスタッフ間で協議を重ねた結果、秀の殉職は無くなり、そのまま必殺シリーズでの続投が決定した。
ちなみにこの結果、演者の三田村邦彦が『新必殺仕事人』放送当時レギュラー出演していた『太陽にほえろ!』についてスケジュールの都合で降板せざるを得なくなっている。
その後の秀は『必殺仕事人Ⅳ』までレギュラーとして仕事人シリーズに立て続けに登場して一旦劇中から退場するが、1986年の劇場版『必殺!Ⅲ 裏か表か』にて再登場を果たし、続く必殺シリーズ第26弾『必殺まっしぐら!』ではスピンオフでついに必殺シリーズで主役を張った。
なお、この頃からトレードマークだった右腕のブレスレットを着けなくなった。
その後も劇場版やTVスペシャルで頻繁に主水の相棒として姿を見せていたが、最終的には必殺シリーズ第30弾『必殺仕事人・激突!』にてTVシリーズに復帰し、同作の最終回で江戸を去るまで長く活躍することとなった。
そして、1996年の劇場版『必殺!主水死す』では三味線屋の勇次と共に中村主水の最後を見届けたのだった。