西順之助
にしじゅんのすけ
演:ひかる一平
『必殺仕事人Ⅲ』から登場した青年。
蘭学所の学生で、家は西洋医学所、つまるところ医者の家柄のお坊ちゃん。
ある日の夜に主水たち仕事人が殺しを行う現場をたまたま目撃してしまったことをきっかけに彼らと面識を持ち、仕事人に加入した。
加入後は主水たちから「坊や」と呼ばれ、しばしば何でも屋の加代と行動している。
世間にはびこる悪を許せぬ気持ちが強く、故に加入前から仕事人を「義賊」として英雄視するきらいがあった様子。実情を知ったうえで加入してからも、自分たち仕事人の存在によって少しでも世の中が良くなれば良い、という良く言えば常識人的な、悪く言えば理想主義的なことを考えている節があり、仕事人でありながら裏稼業の人間らしからぬ面が見られる。
さらに裏稼業とはおよそ無縁の裕福な家庭環境で育ったことも相まってか、当初は世の理不尽さに対してあまり耐性が無く、それゆえ未熟さゆえの感情的な言動に走っては主水たちから諫められることも少なくなく、時には鉄拳制裁を振るわれることさえあった。
とはいえ主水たちとしてもその気持ち自体は否定しておらず、むしろ彼を加入させた理由も「この世の不条理を真っ当に嘆き悲しむ奴が一人くらい居ても良い」というもの。諌めるのはあくまで「行き過ぎた正義感が暴走しないよう、あくまで殺し屋としての一線をわきまえておく」という信条の表れである。
母親からはかなり過保護気味の扱いを受けており、そのせいで殺しはおろか陽動にさえ加われないことも珍しくない。
一方で、自ら殺しに動く場合にはきっちり役割をこなしているほか、直接参加しなくとも陽動や下準備などで活躍することも多く、実働・サポートのどちらでも優秀な働きぶりを見せる。
医学に関する知識は蘭学所に通う身の上なだけあり相当なもので、毒を飲まされた悪人の被害者に治療を施すこともあるほか、蘭方医と商人との関わりを仲間に教えたこともある。
医学に限らず勉強熱心かつ博識であり、瓦版で知った高利貸しの危うさをあの加代よりも早く理解していたりするほど。
また、オランダ語が読めることを活かし標的の商人の手伝いとして潜入し加代の偵察の足掛かりになったり(なお手伝い料も標的からちゃんと貰っている)、闇の武器商人を仲間が仕留めた後で武器庫に火をつけ「鉄砲などの裏取引をしていた」という悪事の暴露と「その火薬から引火・爆発し自業自得で事故死」と傍目から見える形での後始末とを同時にこなしたりするなど、機転も利き頭も回る。
『必殺仕事人Ⅲ』では若さゆえの未熟な一面が多く見られたが、『Ⅳ』『Ⅴ』ではそうした面を多少残しつつも、怪しげな商売を行う加代に振り回されたり、広目屋の玉助(演:梅津栄)にストーカー気味に追い回されたり、親が決めた許婚のお新(演:森口瑤子)と玉助が彼を巡って喧嘩を繰り広げたりと、苦労人としての役回りも増えていった。
…こう書くと色恋沙汰には疎そうに見えるかもしれないが、自宅の近所にできた出会茶屋を望遠鏡で覗き見していたり、「松田屋のお聖」なる女性の写真をこっそり自室に飾っていたりと、意外と年相応に好色である。
『Ⅴ』最終回以降しばらくの留学を経て、『Ⅴ旋風編』にて再登場。こちらでは長屋に住みつつ歯医者を営んでおり、同じ長屋の番人となった主水から「先生」の通り名で呼ばれ一目置かれるようになるなど風格が増した。しかし隣近所の住人に色々な意味で気に入られすぎて辟易する日々を送るなど、苦労人属性は相変わらずの様子。
裏稼業は勿論、表稼業でも長屋の住人たちの纏め役として主水を支える立場となっていたが、『Ⅴ旋風編』最終回にて、悪人が起こした長屋への放火により携行していた火薬が引火・爆発。川に飛び込み、そのまま生死不明となった。
シリーズに登場するたびに使う技が変化しているが、いずれもからくりや飛び道具に近いものを使用している。
Ⅲ
エレキテルを充電したライデン瓶を用意し、これを悪人の体に押し当てて高圧電流を流し感電死させる。
高い威力を誇る反面、確殺できる射程が短いうえに本人の腕っぷしが弱く反撃されると分が悪いことから、加代の協力の元で遠距離から感電させ動きを封じたうえで接近し仕留めることが多かった。
場合によってはライデン瓶を応用し、秀の夢遊病や勇次の腕の痙攣を治療したり、針金に流して電熱線とし標的の屋敷の番犬を遠ざけたりしたこともあった。
Ⅳ・Ⅴ
両親にライデン瓶を捨てられてしまったため、こちらでは直接の殺しを行わず、加代とともに自前の投石器を用いて門番の制圧や陽動を担うことがもっぱら。
当初は射程に応じてアームを交換するなど手間を要していたが、ダイヤル式の射程調整や狙撃スコープらしきものが追加されるなど幾度か改良が施された。『Ⅴ』では内部に磁石を仕込み、それで敵の刀を奪い無力化することもあるなど、単純な投石に留まらずサポート役としても存在感を発揮している。
Ⅴ旋風編
留学先の長崎で得た火薬の知識をフル活用し、久々に実働部隊に復帰している。竹筒を用いたバズーカ砲のようなものを用い、標的を狙撃・爆殺する。
標的を仕留める以外にも、サポートのため煙幕を張ったり標的の館の門をこじ開けたりするのに用いており、その応用範囲は意外に広い。
また、機会は少ないながら密偵としても優秀に立ち回っており、他の仕事人に探りを入れながらも見つかることなく情報を持ち帰るファインプレーを見せたこともあった。
このほか、劇場作品などでは手榴弾のようなものを使用している。
本来は『新必殺仕事人』にて殉職するはずだった飾り職人の秀の後を受ける形で登場するキャラクターとされていたのだが、秀のあまりの人気ぶりにより『Ⅲ』以降でも続投することが決定したことから、秀はそのままに新たに登場する運びとなった。
演じるひかる一平は初登場時まだ10代であり、当時ジャニーズ所属の現役のアイドル歌手。「10代の役者が10代の設定である仕事人を演じた」初のケースとなった。
これについて「設定も役者も未成年の人物が殺しを行うのもいかがなものか」という問題提起も当時あったようで、それに配慮してか『Ⅳ』『Ⅴ』ではサポート役での参戦となった(もっとも、江戸時代であれば二十歳前ともなればすでに元服済み、つまり成人と見做される年齢ではある)。
『Ⅲ』放送年に制作されたドラマスペシャル『(秘)必殺現代版』では登場人物で唯一、メンバーの子孫や関係者ではなく、一般の受験生としての登場となっている。
『Ⅴ旋風編』では歴代の裏稼業者の中でも珍しい「生死不明」という形で退場しているが、これはのちのシリーズに再登場する構想が存在したためとされている。このためか、同作放送終了後の1987年に公開された映画『必殺4 恨みはらします』にも姿を見せ、主水とともに敵首領の最期を見届けるなど存在感を発揮していた。
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