必殺口上
世の中は行くな戻るな居座るな 寝るな起きるな立つな座るな
生麦生米生卵 どじょうニョロニョロ三ニョロニョロ 合わせてニョロニョロ六ニョロニョロ
尻尾押さえりゃ頭が逃げる 頭押さえりゃ尻尾がはねる
とかくこの世は悪党ぞろい
悪人ヒョコヒョコ三ヒョコヒョコ
四ヒョコ五ヒョコ六ヒョコ七ヒョコ八ヒョコ九ヒョコ十ヒョコ
ええい面倒くせい 殺っちまえ!
(語り:古今亭志ん朝)
概要
1981年5月~翌年6月に放送された、『必殺シリーズ』の第17弾。全55話。
中村主水が主要人物となる8作目の作品である。
前々作『必殺仕事人』の続編であり、世界観や一部登場人物が引き継がれているものの、本作からの登場人物や各話ごとのストーリー展開の一本化、世相や流行をより多く取り入れた作風の本格的な導入など、新たに採用された要素も多く、所謂「後期必殺シリーズ」の基本形を確立させた作品となっている。
中でも本作にて仕事人たちが裏稼業に赴く際に流れるBGM(出陣テーマ曲)『仕事人出陣』と、悪人を仕留める際のBGM(殺しのテーマ曲)『闇夜に仕掛ける』は特に有名となり、必殺シリーズをよく知らなくともイントロ部分だけ聴けば判る程に、誰しも一度は聞いたことがあるであろう一曲となった。
殺しテーマ曲の冒頭に『必殺仕掛人』以来の(仕掛人BGMの流用作品は除く)「パラパー♪」のトランペット音が復活したのも本作からである。
また、三味線屋の勇次が使用した殺し技は強烈な印象を視聴者に残し、シリーズの象徴と言っても過言ではないほどのものとして世間に定着した。
なお、それまでの作品と比べ主水が主人公である点がより前面に押し出されているのが特徴で、各話のラストが中村家でのやり取りでほぼ固定されたほか、本作のサブタイトルは全て「主水 〇〇する」で統一されている。
登場人物
仕事人
- 中村主水(演:藤田まこと)
南町奉行所同心。
『必殺仕事人』最終回で裏稼業仲間の畷左門が妻を亡くし、ショックで記憶喪失となった娘を連れて旅に出たのを機に仕事人グループを解散。
裏稼業から足を洗い、太り気味になるほどのだらけた生活を送っていたが、ひょんなことから裏稼業に戻ることとなる。
殺し技は脇差などによる不意討ちや騙し討ちを主とした「剣術」。
主水と同じく『必殺仕事人』から引き続き登場。
仕事人グループ解散後旅に出ていたが江戸に戻り、再び主水たちと組むこととなる。熱血漢ぶりが前面に出ていた前作と比べ、本作ではやや落ち着いた様子を見せている。
殺し技は裏稼業専用にあつらえた簪で相手の首筋や眉間を突き刺す「刺殺」。
- 加代(演:鮎川いずみ)
こちらも『必殺仕事人』に引き続いての登場。
仕事人グループ解散後、やはり旅に出るも、旅先で全財産をなくしボロボロの姿で江戸に舞い戻るり、再会した主水と秀に裏稼業再開を持ちかける。
本作の途中から「何でも屋」を開業しており、以降『何でも屋の加代』の名が定着してゆくこととなる。
サポート役としての役回りがもっぱらであるが、何でも屋という職業柄、依頼引受人となることも多い。
本作にて初登場。
主水たちと組む以前から上方で裏稼業を行っていたベテランの仕事人であり、それをネタに悪人から強請りを受けた一件をきっかけに主水たちのグループに加わった。
柳橋にて三味線屋を営んでおり、やがて小唄の家庭教師として中村家にも出入りするようになる。
殺し技は蝋で丹念にコーティングされた三味線の「三の糸」を相手の首に巻き付け吊り上げる「絞殺」。
同じく本作から登場。
勇次の育ての親であるベテランの仕事人で、旅先から主水たちを支援したりすることも少なくない。
表稼業では勇次ともども三味線屋の仕事をしており、道端などで自ら三味線を弾いていることもよくある。
殺し技は相手の頸動脈を鋭利に研いだ三味線の撥で一瞬で切り裂く「斬殺」。
南町奉行所
- 筆頭同心 内山(演:須賀不二男)
主水の上司その1。
べらんめえ口調の江戸っ子訛りが特徴。
主水の昼行燈ぶりに頭を痛めており、何かにつけて彼の「長い顔」をいじる。
中盤に幕府の命を受けアヘンの売人の摘発に乗り出すもその売人が主水ら仕事人に始末されてしまい、摘発失敗の責任を問われ、かつての主水よろしく幕府直轄領を治める八王子の番所に左遷されてしまった。
- 筆頭同心 田中(演:山内としお)
主水の上司その2。
内山様の後任として奉行所にやってきた。
主水と親子ほどに年の離れた若い同心で、真面目だがあまり能力は高くない様子。
初期は主水を「アンタ」と呼んで男らしくしていたが、徐々にオネエっぽさが折に触れて見られる様になり、続編『必殺仕事人Ⅲ』以降はその傾向が加速、視聴者から「オカマの田中様」と呼ばれ親しまれるようになる。
その他
- 中村せん(演:菅井きん)
- 中村りつ(演:白木万理)
主水の姑と嫁。小唄の師匠として出入りする勇次に色目を使っているが、肝心の小唄が上達しないことも相まって主水はもちろん当の勇次もあきれ気味の様子。
秀 「八丁堀…今のは人間の声か?」 (二人の歌う小唄を聞いて)
主水 「バケモノが二匹いるんだ…」
余談
本作では前作から続投した主水・秀・加代と、新登場の三味線屋おりく・勇次の「二つの裏稼業集団」が統合され仕事人グループが構成されているが、これは初期案にて『江戸プロフェッショナル必殺商売人』同様にグループ内の派閥間対立をテーマの一つとして描く構想があった名残である模様。
しかし、おりく役の山田五十鈴がスケジュールの都合により不定期出演となったことから、その構想は立ち消えとなった。
『必殺仕事人』の名を冠した作品では唯一、本作と連動したドラマスペシャルが制作されていない(一応、後日談にして次作『必殺仕事人Ⅲ』の前日談である『必殺スペシャル 仕事人大集合』は制作されている)。
主題歌は秀役の三田村邦彦が歌う『思い出の糸車』。
中村主水が登場する作品では初となる、メインキャストの一人が歌唱を担当した主題歌で、以降の作品でもこのパターンは度々見られることとなる。
ちなみに上述した殺しテーマ曲の『闇夜に仕掛ける』は、この曲のアレンジ版である。
関連項目
中村主水シリーズ