記事の閲覧及び編集にあたっての注意
本記事は実際に起こった事件、またその加害者について取り扱っています。猟奇的・暴力的な表現を含んでいるので、閲覧にはくれぐれも注意してください。
また、本記事は事件及び加害者を肯定する意図を持って設立されたわけではない上、被害者やその遺族、事件関係者の意思と権利を尊重する必要があるため、記事内に事件及び加害者を美化するような作品を掲載したり、加害者にとって不都合な情報を削除するなどの行動はお控えください。
概要
〈神戸連続児童殺傷事件〉(外部リンク)の犯人が犯行声明文上にて用いた偽名。
日本の犯罪史上でも残忍で稀に見る猟奇的な犯罪行為であり、更にそれを行った犯人が逮捕時に中学3年生の14歳という少年(以下「少年A」と記述)であった事が判明し世間を震撼させた。
少年Aの生い立ち
少年Aは両親を含める5人家族の長男であり、弟よりも厳しい躾を強いられる身であった。「複雑な家庭環境」「躾の厳しい家庭」等の報道がされたが、両親は否定している。
また小学校に入る前から近くに住んでいた年上の小学生からいじめを受けるという境遇にあった。
ナメクジや猫等複数の小動物を解剖、惨殺し、映画やゲーム内の暴力的なシーンで自慰に耽るなど、屈折した性癖を持つサディズムになっていったとされる。
神戸連続児童殺傷事件
1997年に神戸市須磨区内で、複数の児童を狙った殺傷事件が発生。児童5人が殺傷され、このうち2人が犠牲となる。残忍な犯行手口と犠牲者の児童の遺体を損壊、その遺体の場所に犯行声明文を残し、更に地元の神戸新聞社に声明文を送り付けるなど、常人の理解を超えた犯行であった。
事件の影響
事件の影響は非常に大きく、当時の加害者である少年が14歳の『未成年』であったために通常の刑事責任で立件する事が出来ず刑事罰とは比較的に罰則が緩い少年法で審議をかけられる事となった。このため、犯した罪の重さに対してあまりにも軽い罰則上限と処罰内容が論議の的となり後に少年法改正への切っ掛けとなった。他には自治体による取り組みで児童施設を中心に様々な施設での防犯設備を強化、放課後のグラウンドの解放の中止、警備員の常駐、『こども110番の家』の設置や防犯への取り組みなどが行われる事となる。
また、この事件が日本全体から大きな注目を浴びていたこともあり過熱したマスコミによる事件関係者や被害者遺族の心情に配慮しない報道合戦は後に『マスコミによる暴力』と表現された。
これと並行して、少年Aの取り調べに関する取材のため警察署の前から中継するマスコミのカメラに群がるクソガキが、Vサインをしたり黄色い歓声を上げたりして大騒ぎし、一時番組中継に支障をきたすほどの混乱状態に陥るハプニングも起こり、その無様な様子を機に、事件に対する民間人のモラルを巡る諸問題も大きく取り沙汰された。
この事件が少年による犯行であったためにテレビ番組や漫画、ゲームによる暴力的表現が少年に影響を与えたものと有識者から取り上げられ、これらに対する表現規制の議論も噴出することになる。
当事件の影響はウルトラシリーズの表現にも及び、表現規制が厳しくなった事でウルトラマンティガの宿那鬼を最後に首を切断される形で倒される敵はいなくなった。
上記でも記述したように、この事件を引き起こした少年Aが『未成年』であるために通常の刑事罰が適用されない事に影響を受けたとされる、犯人と同じ世代の複数の人間が出現し、彼を模してバスジャック事件や殺傷事件などが次々に引き起こされる事態にまで発展した。(殺人犯の中には影響を受けた人物として彼の名を挙げる者もおり、実際に2014年に起きた柏通り魔事件では、その犯人が酒鬼薔薇の名を挙げていたとされる。あろうことか、先述のバスジャック事件では公式に警察庁に設置されたSATが初めて投入された事件となり、治安が脅かされる事件としても看過できない爪痕を残した)その他には少年Aが残した犯行声明文の文体や文字を真似るような悪質かつ幼稚なイタズラやパロディを行う者もいた。
このように日本の犯罪事件の中でも残忍であり、世間に多大な影響を与えた重大事件の一つとして挙げられる。
その後
逮捕後に収容された少年院内において、人為的に疑似家族を作るという方法で更生させるという過去に例のない心理更生プログラムが施され、7年に及ぶ彼の少年院生活は終わり少年Aは2005年に少年院を本退院。現在は第二の人生を送っているとされる。亡くなった2人の遺族に対して2004年から手紙を送っていたが、2015年に後述する『絶歌』を出版、その後は被害者遺族は「思いを踏みにじられた」と手紙の受け取りを拒否した。なお2018年以降はその手紙も途絶えているという。
本退院に際し、それまでの犯行当時の本名とは全く違う名前に変更されており、現在彼が使用している名前は不明のため、今どこで何をしているのかも不明である。
出版
2015年6月11日に、事件を起こすに至った経緯を綴った『絶歌』というタイトルの名の手記が太田出版から出版された。しかし、この出版に関しては被害者遺族には何の連絡もせずに無断で出版に踏み切ったため、遺族が出版社に対し回収を求める抗議文を発表、世間からも大きな批判を浴びることになった。太田出版側曰く、企画は彼から持ち込まれたもので、当初は幻冬社からの企画が進んでいたが、彼の反省が十分でないのではないかとの疑念などの理由から、社長判断で幻冬社版の企画は中止、社長が太田出版に鉢を回す形で企画を紹介しそれを受けたという。太田出版側は彼以外の個人情報に抵触すると判断した一部は削除したものの、概ね著者の初稿に添う形で出版した。
本書は著名人からも多くの批判が表明された。
小池一夫はこの出版自体が事件当時から更生していない彼の幼稚な自己顕示欲の現れであると指摘し、「僕は読まない」と表明している。
カルト宗教や消費者問題などを手がける弁護士の紀藤正樹は少年事件犯人を匿名にすることが「将来の更正の機会を奪わないため」であることを論拠とし、この出版は彼が更正してはいない証拠と指弾の上「実名で出版すべきだった」としている。
産婦人科医師でコメンテーターの宋美玄なども「金儲けのためではないか」と同社を非難している。
明石市長は市内の書店に対して手記を販売しないよう求める声明を発表。
啓文堂書店では『絶歌』の販売を自粛し、神戸市立図書館は購入しない事に決めた。
過去に出版した本の印税を遺族への賠償にあてた上祐史浩氏は出版に関して「過去の教訓を社会に伝えるという意味では高過ぎて金銭欲が目立つ。本人の印税の使い方も、本人任せだから、賠償に充てられるかの保証がない。」とコメントしたとされる。
また発行部数からの推定で元少年に入る印税額は少なくとも2000万円以上は確実であり、それについての使途は一切発表がない。このような他者の感情を全く省みないやり口に昔から本質的な性格は変わっておらず更正していないのではないかと疑問視する声があがっている。
これは印税だけの問題だけでなく「社会に深刻な影響を与える重大事件を引き起こした者がその手記を出版すれば印税で多額の利益が得られる」という実例を与えかねず、道徳的モラルに反した犯罪行為を誘発させる事案に繋がりかねない深刻な問題である。そのため、今回のケースを受けて犯罪の商業利用について表現の自由を抑制する事なく金銭を受け取る事を制限する米国の法律、通称『サムの息子法』への注目が集まっている。
実際に存在する苗字「榊原」との関係性
酒鬼薔薇の読み方について
名前の「酒鬼薔薇」という部分は犯行声明文の一つを警察が会見の際に読み上げた時には
さけ・おに・ばら……と読んでいた。
しかし、とあるテレビ番組でジャーナリストである故黒田清氏が
さかきばらと読むのではないか?
と発言したことでそう読むのが通例となった。
(実際に犯行声明文の名前間違いの後に神戸新聞社へ送られてきた第二の犯行声明文の中には
さけ・おに・ばら……という読み方は違うということを指摘している部分がある)
pixivにおける投稿
pixivにおいても、一部ユーザーにより加害者や事件を美化するような作品が投稿されているが、当事件は現実に起こった残酷な犯罪であり、日本社会に甚大な影響を及ぼしている。
そして、被害者遺族や加害者の家族、事件の関係者が現在でも苦しめられている状態である。
pixivは不特定多数の人物がアクセス・閲覧可能なサービスである以上、関係者が目にする可能性もあることから、事件にまつわる作品の存在自体が不適切であり、一切の投稿は認められず、即刻削除するべきであるという極論すら存在する。
一方で個人が作品を制作・発表することは憲法によって「表現の自由」として認められているものであり、それらをすべからく禁止することはできない。
pixivにおけるガイドラインでは、作品やコメント等の投稿情報に関して「反社会的行為を賛美し、これを過度に助長しているもの」が禁止事項の一つに挙げられているが、事件にまつわる内容を描いた作品(あるいは事件に着想を得たフィクションなど)がすべて「賛美し、過度に助長」する意図や目的を持って制作されたとは限らず、また最終的にそうであると判断し、そのことが倫理的・法的に許されるかどうかを判断するのは運営者及び裁判所などの公的機関である。
しかしながら、表現の自由は「公共の福祉」の概念によって制御されるものであり、他者の人権を侵害するような表現は規制されるべきといえる。
思いのままに制作した作品が、閲覧した人、特に被害者とその遺族、加害者の家族、事件の関係者、そして加害者の名誉や人格を深く傷付けるようなものならば、発表することを避ける・取り下げることも時には必要である。
あくまで(一般ユーザーによって編集が行われる)本記事では、個人の投稿そのものを制限することはできないため「記事内にそのような作品を掲載しないように」という注意に留めるが、実際に起きた事件である以上、仮に美化するような目的でなくても、制作や投稿においては慎重に取り扱うべきであるという点は明記させていただきたい。
作品の投稿やその取り扱いについてはこちらのガイドラインも参照のこと。
関連項目
榊原恒一:ホラー小説「Another」の主人公。名字の読みが同じであることから過去にからかわれていたことがある。
吉本隆明:思想家。酒鬼薔薇の「猟奇的空想」を書いた日記などを分析した上で「この子は精神的におかしい子ではない」という旨の論を書く。
西丈一郎:GANTZの登場人物。容姿のモデルとして前半まで酒鬼薔薇をモチーフにしていた。(後半は、実写版公開で人気を博していた本郷奏多氏をモチーフにしている。)