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少年法

しょうねんほう

少年法とは、少年保護手続に関する刑法・刑事訴訟法の特則を規定した日本の法律。
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概要編集

罪を犯した未成年者の処分について定めた法律。刑法(少年法は広義の刑法に含まれる)における「少年」は女性(少女)も含まれる。


少年法というそのものずばりの法律の他、少年院法などの関連法規も含めて少年法と呼ぶ場合もある。


未成年による凶悪犯罪やいじめによる自殺事件が発生するたび、悪法であるとして改正や廃止が訴えられる。


実態編集

この法律により未成年犯罪者は刑事罰も成人のそれより軽減される。…といわれるし、実際そのような規定は多い。例えば18歳未満であれば死刑判決を言い渡すことができなくなる。(少年法51条)1人殺害の18-19歳に対しても1978年を最後に死刑適用事例がない。また1980年代以降は死刑になっても執行まで事件発生から平均約27年もかかってしまっている。


犯行時18歳未満で無期懲役に減刑された事例


発生年事件名死亡者備考
1945鹿児島雑貨商一家殺人事件3戦後に改正された少年法で無期懲役に減刑された
1988名古屋アベック殺人事件2被害者のカップルを殺害した実行犯で準主犯。一審で主犯に対しは死刑、準主犯にたいしては死刑相当としつつ無期懲役を言い渡した。後に主犯も無期懲役が確定した
2003金沢老夫婦強盗殺人事件2強盗殺人での2人殺害は死刑が相場だが51条の規定により無期懲役に減刑された


しかし、大人なら執行猶予や罰金など自由までは奪われずに済む事件が、少年であるがゆえに少年院で自由のない暮らしをしなければならないようなケースも少なくなく、一概に処遇が軽くなるという訳ではない。


また、成人の場合は刑法の定める犯罪に該当しなければどんなに反社会的な人物でも全く処罰できない(罪刑法定主義)が、少年の場合、夜間徘徊や不良交友と言ったそれ自体は犯罪でないことでも「虞犯」として処分できる(2022年4月1日以降は18歳未満に限定)。成人の場合、裁判所で言い渡した刑期が終わればどんなに更生していなくとも釈放しなければならないが、少年の場合、更生していない少年をさらに少年院にいれておくことも可能である(少年院法138条)。

大人は処罰、少年は保護処分とそもそもの目的が違うので、そのズレの中で結果的に少年の処分がより重くなることもあるのだ。


また、14歳未満については刑法上殺人であれ強盗であれ一切の処罰の対象とならない(刑法41条)ので、むしろ少年法がないとますます何の処分もできなくなる。

少年法が処分を軽くする規定は確かに存在するものの、ただ少年法を廃止すれば厳罰になるというものではなく、少年法を議論するに当たっては少年法のどの規定をどのように改正すべきなのか、少年法以外の関連法規と併せて検討していかなければならないのである。


なお、18歳未満が死刑にならないのは少年法にも規定があるが(犯行時18歳を超えていれば死刑判決は言渡し可能)、国際法である「児童の権利に関する条約」37条や「国際人権規約」B規約によって禁止と定められており、日本はこれを批准している。

条約は国内法に優先して適用されるため、少年法の規定がないとしても死刑の判決を下すことはできない。これを批准していないのはアメリカ合衆国ソマリアの二か国だけであり、またアメリカ合衆国でも州によっては死刑そのものが廃止されていたり、少年に対する死刑は残虐な刑罰として違憲判決が言い渡されたケースもある。


存在意義編集

簡単に言うと、未成年者というのは「人格に大きく可塑性を持っている」つまり改心または更生する可能性が強いし、大人と同じ方法が適切とは言い難い場合が多いと考えられているからである。

今現在手の施しようがない悪ガキでも、周囲がしっかりと見守り育てれば一人前になるかもしれない。成人と同様に刑務所に入れた場合、刑務所に入って世間から隔離されて社会経験もないまま浦島太郎状態になり、それまで毒親不良仲間などに囲まれたよくない環境に置かれていたとすれば、その環境を直さないと何年刑務所に入れても同じことを繰り返してしまう。


実際、通常の刑法による懲役などの処罰を経てなお更生しない・できない大人は全く珍しくなく、刑務所での交友の結果もっと犯罪傾向が進んでしまう者もいる。これは成人受刑者への対応が処罰に偏り改善更生・社会復帰の支援が十分ではないためだとして、「むしろ成人受刑者の処遇を少年の方に近づけるべき」という意見もある。


また、犯罪を処罰するには「犯罪しない選択肢があった」と言えなければならないと考えられているが、少年の場合、他の方法を知らない・教えられる機会が乏しい・正しくない方法を教えられてもそれが正しくないと気づきにくいと考えられ、だからこそ厳しく処罰する根拠が大人と比べて小さいケースが多いのである。


なお「古くから改正されず、時代にそぐわない」と言われたりもするが、実際には21世紀以降だけでも2007年・2008年・2014年・2021年と4回改正されている。(他の法律の改正や制定に伴って辻褄を合わせる程度の改正であれば更に多く行われている。)

そのきっかけの多くは少年による重犯罪事件に対して、世論や被害者の声が高まったことである。

2000年(平成12年)改正で刑事責任が発生する年齢が16歳から14歳に引き下げられ、2007年(平成19年)改正で、少年院送致の対象年齢が「おおむね12歳以上」と定められた。

とはいえ、こうした改正を経てなお、未成年者に対しての改善更生を前提にした処遇が失われていないのは、少年法について一定の意義を見出す法実務家が多いということでもある。(法改正に携わるのも、司法試験に合格して少年法に一定の知識のある者が多い)


また、過去の本記事で本法の制定された経緯として「戦後の食糧難などでやむに止まれず罪を犯した少年を守るための法律」という説明をした編集者がいるが、これは明確な誤りである。

幼者の犯罪行為に対しての刑の減刑や通常の刑罰と異なる教育的措置で臨む選択肢を定めた法律は紀元前から見られ、現在でも世界中に存する考えであり、現代日本特有のものではない。

日本だけに目を向けても、例えば江戸時代の刑罰では15歳未満の者に対しては減刑が行われており、近世以前から同様の概念があったことが分かる。

ただし、国によって大人同様の裁判をして刑罰だけ減らす国や、裁判所よりも社会福祉に携わる行政機関が中心となって処分を決する国などもあり、対応の方法論は様々である。


日本では、戦前から戦後にかけて、成人も含めた刑事裁判制度そのものが大幅に変わり、家庭裁判所ができた(戦前は家庭裁判所自体がなかった)ことにより、少年の犯罪については専用の少年審判所から家庭裁判所の管轄になるなど、少年犯罪についての裁判の仕組み自体が大幅に変わったことは事実である。

また、その時期に食糧難などから犯罪に走る少年が発生していたことも確かであるが、食糧難と現行少年法が直接結びつく訳ではない。

未成年者に対して処罰と保護処分の双方を用い、その中で保護処分を優先する運用は戦前から行われており、しかも保護処分の大半は訓戒など、社会内での処遇であった。昭和45年は検察官送致しての刑事処分が10%程度であったのに対し、昭和17年の刑事処分は6%程度であり、むしろ戦前の方が保護優先的であった。


実名報道について編集

未成年者が起こした事件は、少年法61条で起訴後の実名報道が禁じられている。成人が殺人事件を起こしたならば逮捕時点で顔も名前も公開されたとえ有期刑以下の刑罰でも社会的な制裁を受ける(後述のDV案件や、被疑者に精神障害の疑いがあり刑事責任能力がないと判断される場合などはその限りではない)が、少年の場合はたとえ改正後の18、19歳でも起訴後の解禁である。18歳未満では絶対に報道されることはない。

一方、殺人被害者はたとえ未成年であろうと基本的に顔も名前もすべて報道される(死者にはプライバシーが無く、個人情報保護の対象にもならないため)。このため、遺された被害者などもいたたまれない生活を送らされるケースもある。


18歳未満というだけで、死刑からも、報道による社会制裁からも守られ、他方で被害者は報道される。これでは不公平に思う人が多いのも無理はないだろう。

他方で、被害者やその親族に対する報道被害は被疑者が成人であっても起こり得る問題であり、少年法の問題と言うよりも報道全般の問題であるとする意見もある。

実際、犯罪は比較的身近な人の間で起こることが多く、被害者の氏名を伏せても被疑者を報道した結果被害者まで特定され、心ない噂を流されてしまうケースもあり、成人被疑者の事件でも性犯罪DVなどの案件では被害者に配慮して加害者まで含めた匿名報道がされている場合が多い。


なお、この61条は対象が新聞紙その他出版物に限られているうえに罰則がなく、対象外であるテレビ局やラジオ局といった報道機関が独自の判断で実名報道に踏み切ることは可能であり、またインターネットで簡単に情報を拡散できることから、この報道禁止に関しては事実上形骸化していると言われることがある。出版物についても起訴前の実名報道は禁止されておらず、事実重大な少年事件が起きた際、週刊誌が被疑者の顔写真を報道したケースもあり、事件内容が報道された時点で「犯人」の顔も名前も住所も電話番号も全て特定されインターネットで晒されることもしばしばある(もちろんこのような行為は民法上の不法行為責任や名誉毀損として刑罰を科せられる行為であるので絶対にやってはいけない。特に、特定された「犯人」が無関係な第三者であったという場合は目も当てられない)。


2022年の法改正(4月に施行)で、実名報道は許されることになったが、これも家庭裁判所に送致された後、家庭裁判所が通常の裁判に付する決定を行ったいわゆる「逆送」された事件が対象であり、単に逮捕された時点で実名を報道することはやはり違法となる。

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