概要
アメリカ合衆国のインディーズアニメ作品。ヴィヴィアン・メドラーノが原作・監督・脚本を務めている。
地獄を舞台としており、登場するキャラクターは主人公をはじめ、殆どが悪魔。
「大人向けのカートゥーン」を銘打っており、売春やポルノスター、ドラッグ、犯罪などの社会的にタブーな描写が盛り込まれている他、特にグロ描写に関しては一切遠慮なしといった過激な作風が特徴で、地上波ではまず放送不可能なレベル(補足すると、エロ描写は流石に一部キャラ設定やスラング、ジェスチャー程度に留められており、グロも作品がカートゥーン調なので若干の耐性があればそこまできつくない)。
インディーズかつ配信媒体がネットであったことから、こうした過激な作風での制作に挑戦できたのだろう。
2019年11月にパイロット版がYouTubeで配信されて以降、ブラックジョークを交えたユーモアな作風や魅力的なキャラクター達が瞬く間に人気を博し、インディーズ作品でありながら大きな注目を浴びている。
2020年8月、『ミッドサマー』等で有名な映画制作・配給会社「A24Films」によるTVシリーズ化が公表される。上記の通り地上波放送でのハードルが非常に高いため、『ネットフリックス』等のサブスクリプションでの配信が予想されている。
2023年9月、シーズン1のトレーラーが解禁。2024年1月からAmazonプライムビデオにて配信開始。シーズン2の製作が決定されている。
パイロット版はYouTubeで無制限で公開されており、視聴は無料。現在は原語版、フランス語版、日本語版の3バージョンが存在する。
あらすじ
悪行を犯して死んだ人間が行き着く地獄。
地獄の世界は悪魔に転生した悪人達で溢れ返り、同世界の治安は最低最悪レベルにまで陥っていた。
人口過剰になった地獄には、年に一回天国から天使達が降りてきて、罪人の悪魔たちを粛清することで人口過剰を解決していた。そのため毎年多くの悪魔たちが殺害されている。
地獄の惨状に心を痛める心優しき王女・チャーリーは、地獄の環境改善のために悪魔の更生施設「ハッピー・ホテル」を開設し入居者を募るも、ほとんどの悪魔達は彼女の提案に耳を傾けず、むしろ彼女を異常者扱いし馬鹿にしていた。
それでもチャーリーはめげずに協力者で恋人のバギーとともにホテルの経営に勤しむ。
そんな中、彼女のもとに全身赤ずくめの謎の紳士が現れるが、彼の正体は過去に地獄の権力者達を次々と葬り去り、その惨状をラジオで放送した"ラジオデーモン"ことアラスターだった。彼はホテルの経営を手伝いたいと言うが…?
作品の特徴
本作最大の特徴が、ミュージカルアニメであり、頻繁に各キャラクターが歌う点。
これはパイロット版からの特徴であり、単なる感情表現としてだけでなく、歌による侮蔑や嘲弄を歌にして返す、ヒップホップさながらのレスバトルとして使用されるのが殊更に特徴的である。
また、カートゥーン調の明るいキャラクタービジュアルや、はちゃめちゃなキャラクター性に反して、彼らの境遇や世界観は陰惨かつ凄絶であり、差別、格差、偏見と言った社会悪と、それに抗う主人公と言う社会派な作品でもある。
登場人物
本作の主人公。地獄のプリンセスであり、『エクスターミネーション』による地獄への虐殺に心を痛め、ハズビンホテルのプロジェクトを計画する。
チャーリーの恋人。チャーリーのことを支えているが、アラスターに対しては警戒している。
有名なポルノ男優。ハズビン・ホテルで更生したかに思われたが、チェリー・ボムとサー・ペンシスとの縄張り争いに参戦、ホテルの評判を落とした。
上級悪魔の中でも最強格に数えられる鹿の悪魔。普通の悪魔以上に悪魔的で破天荒な性格で、何世紀も君臨していた古参の上級悪魔をほぼ駆逐したことから「ラジオデーモン」の異名で恐れられる。自身のラジオを運営していたが、長い間行方を晦ましていた。
ホテルのバーテンダー。安酒が大好きな偏屈で飲んだくれのアル中爺さん。
ホテルの清掃員。アラスターが召喚した単眼の少女悪魔。無軌道でフリーダムな性格だが、随一の純真さ・活発さからみんなに生暖かい目で見守られる。
エンジェル・ダストの悪友。単眼と巨乳が特徴的なパンクな女性悪魔。サー・ペンシスを相手に縄張り争いを繰り広げた。
さまざまな兵器を開発している男性悪魔。蛇のような容姿が特徴。
サー・ペンシスの部下。卵型の体が特徴的。
悪魔のような二本角を持つ天使。天使による虐殺『エクスタミネーション』の先導者
地獄の住人や下級天使は終始見下して小馬鹿にし、反面上級天使には媚びへつらうなど、とても天使に見えない性格。
名前から恐らく最初に産まれた人間「アダム」その人
- V軍団
地獄の一角で絶対的な権力を持つ頭文字がVの三人組。
かつてアラスターを仲間に引き入れようとしたが袖にされ、以降ヴォックスを筆頭に目の敵にしている。
- チームV
V軍団の表記揺れ。
薄型テレビの顔をしているTVの悪魔。右目を見たものを催眠状態にする能力を持つ。
ヴォックステック社社長にしてV軍団のまとめ役。
ラジオMCであるアラスターに対して特に強い敵意を向けており、再び姿を現した彼にTV放送で宣戦布告するも、ラジオを介したレスバトルにていいように翻弄されてしまった。
人形の悪魔。ファッションデザイナー
三人の中では比較的に落ち着いており、フラットな意見を上げることが多い。
上級悪魔の会議では発見した天使の死体を見せ、反撃の可能性があるのではないかと煽る。
蛾の悪魔。売春やポルノ映画の利権を握っている
エンジェルダストの雇い主で、彼を契約によって縛り付け従えている。
エンジェル曰く「サイコパス野郎」 彼に対して非常に強い執着を見せており、気に食わないことがあると癇癪を起しては衝動的に殺人を行う。
上級悪魔。アラスターに駆逐された古参の上級悪魔の数少ない生き残りの一人で、上級悪魔たちが集う会議で初登場する。
白と黒を基調とした、大きな手が特徴の女性悪魔。上級悪魔たちが集う会議で初登場する。
人喰いの悪魔であり、アラスターとは親密な関係。
チャーリーの父親。原初の悪魔にして堕天使(元熾天使)。
堕天した経験と地獄の住人の有様を見てきたことから、地獄に希望を見出せないでいる。
不器用ながらも娘を心から愛しており、心は折れていながらも彼女の手助けをしようと天国へ会議を持ちかける。
チャーリーの母親。現在はルシファーと別れていて行方不明。
アマプラ版エピソード1のチャーリーの話によると、彼女が歌で地獄の悪魔たちに力を与えたらしい。
小太りの女性悪魔。アラスターやハスクとは旧知で、特にアラスターとは人間時代からの長い付き合いがある。アラスター曰く「全盛期は美人だった」らしい。
天界を纏め上げる熾天使。アダムと結託して地獄を滅ぼそうとしている。
セラが大事に想っている熾天使の少女。チャーリーと似たような考え方を持つ心優しい性格。
専門用語
- ハズビン・ホテル
地獄における悪魔たちの更生施設。チャーリー発案の元、悪魔を更生して天国に渡すことで、天使たちによるエクスターミネーションを防ぐ事を目的として作られた。
- 悪魔
地獄の住人。地獄に暮らしている理由は様々だが、多くの者たちが元人間であり、生前に罪を犯したことで地獄で暮らしている。他の悪魔との契約により、強制的に上下関係を結ばされることもあり、その上下関係は絶対である。
地獄に落とされたことからも分かる通り、根底の人間性は暴力的かつ享楽的で、地獄では常に権力闘争を兼ねた武力抗争が巻き起こっている。一方で、必ずしもその性質が悪魔の全てというわけでもなく、家族への愛情や、他者に親身になる者など、善悪の両面を兼ね備えている者も多い。
- 上級悪魔
地獄における実力者たち。実質的な地獄の支配者たちであり、地獄の運営を執り行っている。
- 天使
天国の住人。生前に何らかの功徳を詰んだことによって天国で暮らしている人々。
ただし、彼ら、彼女らが何故に天国で暮らせる様になったかは、彼女たち自身にも分かっておらず、地獄の住人がどうやれば天国に来れるかは不明である。ただし、天使が地獄に落ちる事はあり、上級の天使たちの怒りを買うことで地獄に落とされる。
ハズビン・ホテル世界においては、殆ど貴族的な存在であると言ってよく、地獄の住人である悪魔たちを一方的に苦しめている。
- エクスターミネーション
天国による、地獄への虐殺行為。当初は年に一回行われ、チャーリーによるハズビンホテル計画のきっかけとなる。
表面的にはその実態や存在は伏せられている。天国の住人からも基本的には正当な行いであるとはされていないが、大義名分としては、天国への反乱を未然に防ぐためとされている。しかし、実際にはアダムなどの実行犯は虐殺を楽しんでおり、天使たちの中にも反感を覚える者もいる。
関連イラスト
関連動画
公式トレーラー(日本語字幕あり)
パイロット本編
パイロット(日本語吹替版)
シーズン1トレーラー
関連項目
ヘルヴァ・ボス:同じくヴィヴィアン・メドラーノ原作のインディーズカートゥーン作品。同一の世界観だが、こちらは「地獄世界の日常」をテーマにしている。
表記揺れ
外部リンク
HAZBIN HOTEL (PILOT) - Amara.org - 日本語字幕ありのパイロット版
Hazbin Hotel - 公式Twitter