概要
共通戦術装輪車とは、陸上自衛隊の16式機動戦闘車をベースとした装輪装甲車ファミリーのことである。
16式機動戦闘車のコンポーネントを流用した車体をベースに、歩兵戦闘車型、機動迫撃砲型(自走砲型)、偵察戦闘車型などの開発と配備が予定されている。
日本全国の即応機動連隊などに配備予定。16式との連携運用が予定されていることから、偵察戦闘大隊への配備も考えられている。
バリエーション
歩兵戦闘車型
調達時の名称は「共通戦術装輪車(歩兵戦闘車)」。
Mk.44ブッシュマスターII 30mm機関砲とMk.52 7.62mmチェーンガンを備えた砲塔を車体上部に搭載し、車体後部に人員8名が乗車できるようにした歩兵戦闘車型。
車長、砲手、操縦手の3名によって運用される。
令和6年度予算では24両の調達が計画されている。
なお、自衛隊用語では本来「装甲戦闘車型」となる筈だが、防衛省資料でも「歩兵戦闘車型」と表記している(自衛隊では歩兵科の代わりに普通科が存在しており、通常は「歩兵」という単語が用いられない。既存の車両も89式装甲戦闘車のように「装甲戦闘車」表記となる)。
機動迫撃砲型
調達時の名称は「共通戦術装輪車(機動迫撃砲)」。
車体後部にフランスの2R2M半自動120mm重迫撃砲(アメリカ海兵隊のドラゴンファイア迫撃砲システムの原型)を搭載した機動迫撃砲型。
2R2Mは陸上自衛隊でも運用している120mm迫撃砲RTがベースとなっているが、半自動装填装置とコンピュータ制御式の射撃管制装置を備えており、従来の迫撃砲と比べて早い連射速度や高精度の射撃を可能とする高度なシステムとなっている。
車長、操縦手、照準手、砲手、弾薬手の5名によって運用される。
令和6年度予算では8両の調達が計画されている。
偵察戦闘車型
歩兵戦闘車型と同じ30mm機関砲と7.62mmチェーンガンの砲塔を搭載し、車体後部に監視装置や衛星通信アンテナを装備した偵察車型。
車長、砲手、操縦手、監視員、斥候員の5名によって運用される。
令和6年度予算では本車のみ調達が計画されていない。
その他
共通戦術装輪車には含まれないが、開発元の三菱重工では16式をベースとした装甲兵員輸送車「MAV(機動装甲車)」を試作していた。
最大戦闘重量は28t。地雷やIED対策としてフローティング・シートが車内に採用され、車体底部にもV字型の増加装甲を装着できる。スラットアーマー(対戦車ミサイル対策の金網装甲)も装着可能。乗員は車長と操縦士の2名によって運用され、車体後部に9名が乗車できる。
本車は陸自の96式装輪装甲車の後継として提案されていたが、防衛省はフィンランドのパトリアAMVの採用を決定したため、MAVは不採用となった。