概要
晋江文学城にて2018年より唐酒卿により連載されていた古風耽美小説。完結済み。
番外編含め全282章にて構成される長編政治紛争物語。
2020年に簡体字版の書籍が湖南文藝出版社より全4巻(2セット)にて発売されている。
猫耳FMにてラジオドラマが公開されており、現在(2021年8月時点)第三期の放送中。
あらすじ
咸德三年、中博六州が外敵の手に落ちたとき、沈澤川は都に連行され、家族を喪い打ちひしがれる中さらに追い討ちをかけるように拷問を受ける。
蕭馳野はこれを嗅ぎ付け、他人の手ではなく自ら沈澤川を蹴り飛ばして憂さを晴らそうとした。しかし蹴り飛ばされて病弱な身体のはずの子供は意外にも蕭馳野に噛み付き、蕭馳野は返って怪我を負う羽目になった。
これ以降二人の確執は根強く、再会する度に噛みつくようになる。
「運命は自分をこの場所に縛りつけようとするが、その道は自分が選んだものではない。例え黄砂に手足を取られようとも運命に身を任せたくはない」
CP
メインCP
策舟(cezhou)
萧驰野×沈泽川
浪荡败类纨绔攻(放蕩碌でなしどら息子攻)×睚眦必报美人受(狭量な美形受)
咸德三年、逃亡した沈衛の尻拭いを離北鉄騎が押し付けられたことから、蕭馳野は初対面で沈澤川を蹴り殺そうとした。
その後も禁軍を押し付けられたことで自棄になり、刃傷沙汰を起こして辞令が撤回されることを期待し昭罪寺に殴り込むが、笑顔を貼り付ける沈澤川にさらに苛立ち互いに取っ組み合いを始める。
二度の衝突を経て一向に屈しなかった沈澤川に興味を唆られた蕭馳野は、五年後に再会して以降、利用し利用される関係を経て、その才覚と器量に惹かれていることを互いに認めて国の改革に協力するようになる。
なお、沈澤川が身に付けている耳飾りや扇子などの小物は定期的に蕭馳野が贈っているものであり、他人に懐かない鷹の猛も沈澤川には懐く素振りを見せる。
サブCP
松玉
乔天涯×姚温玉
天琛元年の春、喬天涯は古琴を回収しようと訪れた際に、古琴を弾く姚温玉と出逢う。
古琴を教えるという喬天涯に姚温玉は微笑んで応えたが、次に二人が再会したとき、姚温玉は大学の炎上に巻き込まれて足を折られて歩くことも出来ず、毒を盛られて衰弱していた。
“同類”の誼で姚温玉の世話を任されるようになった喬天涯は、それが同病哀憐れむものだと気付いていたが、感情を抑えることはせずに姚温玉と距離を詰めた。
古琴がかつての地位を追われた喬天涯に残された、当時の名残であることを周囲のものは皆気付いていたし、姚温玉の前でしか古琴を弾くことはなかった。
戚花
戚竹音×花香漪
輿入の日、戚竹音は馬車に遅れが出ていたことを気にして迎えに上がると、花香漪が顔を隠す前に馬車の御簾を持ち上げた。花香漪は戚竹音の“お母様”という揶揄いに唖然としたものの、その整った容姿に見惚れてもいた。
戚竹音は政略結婚で嫁いできた花香漪を初めこそ警戒していたものの、花香漪の聡明で民を思う言動に心打たれ、現政権に仕える価値はないと沈澤川の闃都入りを見逃すことを決意する。
登場人物
主人公
沈泽川(shenzechuan)/沈澤川
字を兰舟(lanzhou)/蘭舟。沈衛の八番目の庶子。
母親譲りの美貌の持ち主。
性格は酷薄非情。復讐心が強く、身内の仇とあれば残虐に殺すことも厭わない。
また非常に聡明で、感情や本音を表に出さず言動で周囲を翻弄する。しかし病気や苦痛でさえ抑え込み隠そうとするため、親しい者からは常に気遣いのいる存在としても扱われている。
7歳のとき、端州の紀綱一家に預けられる。
15歳のとき、辺沙兵が中博に侵攻した際、父親である沈衛が逃亡したことにより共犯の嫌疑を掛けられ拷問を受けるが、花鶴娓の提言により処刑は回避され、昭罪寺に監禁される。
五年の幽閉の後、小福子の暗殺事件を機に呼び戻され、花鶴娓への恩義を理由に花家の庇護の元、宮中に出仕するようになる。
萧驰野(xiaochiye)/蕭馳野
字を策安(cean)。離北の二の公子。
英俊にして慧眼。父親譲りの恵まれた体格をしており、非常に頑健。
平時ではさっぱりとした好青年の印象を抱かせるが、政敵や嫌悪する相手の前では強烈な威圧感を放つ。
猛という鷹と浪淘雪襟という愛馬を持つが、どちらも非常に気性の激しい個体を屈服させて従えたという話にあるように、相手が手強いほど抑え付け服従させたいという苛烈な征服欲がある。
14歳のとき、初陣にて、兄、蕭既明が辺沙軍の包囲を一晩で突破するような奇策を講じる。
17歳のとき、沈衛の事件を機に離北を離れて闃都に入京する。その際、離北に対する事実上の人質として闃都に留め置かれ、皇族貴族の受け皿でお飾りの軍隊としか機能していなかった禁軍指揮官に任じられる。
五年後、秋猟祭にて叩き上げた禁軍を指揮し、李建恒を暗殺未遂から救出したことで新たに八大営都指揮に任命される。
锦衣卫
乔天涯(qiaotianya)/喬天涯
当初は馴象所配属となった沈澤川の上官だった。
本名は松月。没落した喬家の生き残り。
汚職事件に巻き込まれて一族諸共一掃されかけた際に、齊惠連に救われる。そのため齊惠連に忠誠を誓い、彼の願いから沈澤川の右腕となって行動する。
费盛(feicheng)/費盛
費家の傍系の出身故に正当な評価を受けられずに錦衣衛で燻っていた。その際、沈澤川に才能を買われ取引を始める。
闃都を離れて以降は近衛として沈澤川に付き従う。
葛青青(geqingqing)
紀綱を慕う下士官。闃部の近衛兵。
拷問を受け衰弱していた沈澤川を救うため、紀綱を秘密裏に招き入れた以後も錦衣衛を隠れ蓑に沈澤川を支える。
霍凌云(huolingyun)/霍凌雲
灯州駐屯地の指揮官だった霍慶の息子。父の仇である翼王を討つ機会を淡々と狙っていた。
沈澤川にその才覚を見込まれ、錦衣衛に受け入れられる。
禁军
晨阳(chenyang)/晨陽
蕭馳野が参内するにあたり離北から連れてきた私兵。
朝暉とは直々に蕭方旭に認められた皇子の近衛同士。優秀な副官として名高い彼と比較しては劣等感を抱く。
骨津(gujin)
蕭馳野の部下。丁桃とともに沈澤川の監視を命じられる。酒好きだが、沈澤川を見逃したことで蕭馳野に絞られてからは断酒を決意する。
丁桃(dingtao)
蕭馳野の部下。骨津とともに沈澤川の監視を命じられる。常に手帳を持ち歩き、メモを取る癖がある。
澹台虎(tantaihu)
蕭馳野の部下。端州の指揮官だった兄を沈衛の逃亡により喪ったため、沈衛の息子である沈澤川を恨んでいる。
朝廷
花思谦(huasiqian)/花思謙
太后の兄にして、内閣元輔(宰相)。
海良宜(hailiangyi)
字を仁时(renshi)。
内閣次輔。
孔漱、姚元環の師。
薛修卓(xuexiuzhuo)
字を延清(yanqing)。
大理寺丞(最高裁補佐官)。
孔漱(kongshu)
字を泊然(poran)。
刑部尚書(法務省大臣)。
海良宜に師事。
江青山(jiangqingshan)
字を万霄(moxiao)。
厥西の布政使。
潘如贵(panrugui)/潘如貴
光誠帝、咸德帝時代の司礼監太監(宦官長官)。
潘祥杰(panxiangjie)/潘祥傑
工部尚書(宮内省大臣)。
魏怀古(weihuaigu)/魏懐古
魏懐興の長男。
戶部尚書(宮内庁大臣)
魏怀兴(weihuaixing)/魏懐興
李建雲の妻である魏嬪の兄。
大理寺少卿(最高裁上官)。
岑愈(cenyu)
字を寻益(xunyi)/尋益。
都察院左都御史(検察庁の左士官)
孔漱に師事。
陈珍(chenzhen)/陳珍
字を信之(xinzhi)。
兵部尚書(兵部省大臣)。
孔湫とは同郷の馴染み。
纪雷(jilei)/紀雷
錦衣衛の指揮長官。
紀綱の師弟。紀綱とは袂を別った。
韩丞(hancheng)/韓丞
紀雷の後の錦衣衛指揮長官。
小福子(xiaofuzi)
咸德帝が懇意にしている宦官。
潘如貴の養子。
风泉(fengquan)/風泉
紀雷の養子、潘如貴の孫養子。
後の司礼監太監。
离北铁骑
萧方旭(xiaofangxu)/蕭方旭
離北王。蕭馳野の父。
元四将。その際の異名は“鴻雁鉄翼”。
蕭馳野の初陣での異様な獣性と才覚を危惧して功績を秘匿する、離北鉄騎に合流した蕭馳野の地位を低く抑えるなど、冷淡で堅実な性格だが、同時に息子の行末も案じていた。
萧既明(xiaojiming)/蕭既明
現在の離北鉄騎を率いる将。
蕭馳野の兄。母親譲りの穏やかな性質。
現四将の一人。異名は“鉄馬冰河”。
父から譲り受けた離北鉄騎の装甲を薄く調整することで機動力を上げた軍を実現する。
朝暉
蕭既明の副将。柳阳三大菅の指揮を執る。
皇室
光诚帝/光誠帝
秦王、太子、李建雲、李建恒の父にして先代の皇帝。
秦王
光誠帝の息子。
幽閉され精神を病んで亡くなった。
秦王妃
秦王王妃。李剣霆の母親。
太子
光誠帝の嫡子。
齊惠連に師事し、その教えを受けて宮中の在り方に異議を唱えたために皇室から放逐される。
昭罪寺に幽閉される中、既に国の腐敗が進んでいることに打ち拉がれて自殺したとされている。
李建云(lijianyun)/李建雲
咸德帝。光誠帝の嫡子。
李建恒(lijianheng)
天琛帝。光誠帝の嫡子。李建雲の弟。
蕭馳野が故郷に帰りたがっていることを理解していたが、皇帝という重責に耐えられず気心の知れた側近として留め置いた。
花鹤娓(huahewei)/花鶴娓
太后。光誠帝に嫁ぎ現在の花家の地位を築いた立役者。
沈澤川の師娘(師の伴侶)が花家出身の花娉婷であったことを理由に、拷問を受けていた沈澤川の助命を願った。
李剑霆(lijianting)/李剣霆
光誠帝の庶子。
薛修卓が擁立する女帝。
その他重要人物
纪纲(jigang)/紀綱
元錦衣衛指揮長官。沈澤川の養父にして武術鍛錬の師。
紀雷は師弟にあたるが、思想の違いから袂を別つことになった。その際に錦衣衛を辞し、端州で妻子とともに穏やかな生活を送っていたが、沈衛の逃亡により中博六州は戦場となり、一家離散する中で妻子も喪った。
纪暮(jimu)/紀暮
紀綱の息子。沈澤川の義兄。
じきに許嫁と結納するという矢先、辺沙軍が中博に侵攻する事件が起きる。
沈澤川を追っ手から逃すため、一人で茶石天坑に残り亡くなった。
齐惠连(qihuilian)/齊惠連
永宜時代の内閣次輔。帝師として太子を指導する立場にあったが、太子が花家に目の敵にされ、昭罪寺に幽閉されていた。
昭罪寺に抑留されることになった沈澤川と出会い、沈澤川が父親とは性質が異なることを理解した上で、太子を死に追いやった宮廷に復讐するため沈澤川に知識を叩き込む。
奚鸿轩(xihongxuan)/奚鴻軒
奚家の次男。
優秀な経営者であり、李建恒とも交友関係を持つ。
沈澤川とも政治取引を行い、蕭馳野を嵌めようとするも沈澤川に裏切られる。
初めに、沈澤川のその後の習慣となる扇子を贈った人物。
姚温玉(yaowenyu)
字を元琢(yuanzhuo)。
稀に見る才子であり、その頭脳は師である海良宜を始め、交友関係のある蕭馳野も非常に高く評価している。しかし宮中に出仕することには意義を見出さず、気ままに諸国行脚を繰り返しているため出逢う機会は殆どない。
左千秋(zuoqianqiu)
鎖天関の馮一聖の後継。
四将の一人。異名は“雷沈玉台”。
蕭馳野の師にして、紀綱、紀雷の師兄。
民を守るために捕虜となった伴侶を射抜いたことを憂いて前線を退いた。その際に髪も白くなっている。
陆广白(luguangbai)/陸広白
啓東の辺郡を治める。父は元四将の陸平煙。
現四将の一人。異名は“烽火吹沙”。
遊撃軍が主力の将軍。
妹が蕭既明に嫁いでいることもあり、蕭家とも親しい。
戚竹音(qizhuyin)
啓東の蒼郡を治める。父は元四将の戚時雨。
現四将の一人。異名は“風引烈野”。
指揮能力に非常に優れ、騎兵と歩兵を組み合わせた独特の部隊を持つ。
女であることを理由に僻まれることも多い中、陸広白は早期からその才覚を評価していた。
花香漪(huaxiangyi)
通称は花三。花鶴娓の姪。
沈澤川と蕭馳野を中心とする反乱軍を危惧した花鶴娓が蒼郡を取り込むために戚時雨に嫁がせた。
淑女然とした少女だが、戚家の家計簿を修正して戚竹音を唸らせるなど聡明でもあり、花家が踏み躙ってきた民を案じ国の行く末を憂うなど非常に誠実な性格。
沈卫 (shenwei)/沈衛
建興王。中博六州の長官。
辺沙十二部が大周に攻め入ろうとしたときに敵前逃亡を図り、中博六州中を敗走して死んだとされているがその死には謎が多い。そのため、沈衛が辺沙十二部に亡命しようとしていたのではないかという疑惑が上がり、情報を得るために息子である沈澤川が捕らえられた。
沈澤川の父親だが、親子関係は希薄。妻である白茶の死後、沈澤川の世話を侍従に投げ出して以降顧みることはなかった。
白茶(baicha)
沈澤川の母親。
端州の舞姫だったところを沈衛に見初められる。
沈澤川の容姿は母親譲りと言われるように、沈澤川の顔を見て、厉熊は見覚えがあると白茶の肖像画を指し示した。
边沙十二部
阿木尔(amuer)/阿木爾
辺沙四部の統領。
蕭方旭とは何度も鎬を削った宿敵。
現在は前線を退き、養子の育成に注力している。
哈森(hasen)
阿木爾の養子。
阿木爾の後継として非常に抜きん出ており、离北鉄騎を追い詰める。
用語解説
固有名詞
八大世家
貴族の中でも特に優秀な人材や経済力のある一族であり、花家、姚家,薛家、奚家,魏家、潘家、費家、韓家の八家。この八家の中でも優劣は存在する。
四将
特に優秀な功績を持つ四人の将軍に贈られる称号。代替わりがあり、多くは血族に受け継がれる。
現在は蕭既明、陸広白、戚竹音、左千秋であり、戚竹音は大周で初の女将軍。
一代前は、蕭方旭、陸平煙、戚時雨、馮一聖。
それぞれの活躍ぶりに合わせた異名が存在する。
地域、地名
阒部(qubu)八大城/闃部八大城
首都を含む八つの都市。それぞれ八大世家の領地と連動している。
- 荻城(花氏)
- 普城(姚氏)
- 泉城(薛氏)
- 嵯城(奚氏)
- 椿城(魏氏)
- 迷城(潘氏)
- 丹城(費氏)
- 蕪城(韓氏)
中博(zhongbo)六州
離北大境と並ぶ辺沙十二部との国境線の要。
- 茨州
- 敦州 沈氏が治める土地。
- 端州 紀家の所在。
- 灯州 霍凌雲の父、霍慶が治めていた土地。
- 茶州
- 樊州 翼王が治める土地。
启东(qidong)五郡/啓東五郡
- 蒼郡 戚氏が治める土地。
- 赤郡
- 策郡
- 滁郡
- 辺郡 陸氏が治める土地。
厥西(juexi)
- 白馬州 十三城
- 琴州
- 庸城
- 永泉港
- 永宜港
离北(libei)大境/離北大境
功績を讃えて贈られた土地を築き上げ、蕭方旭を離北王と言わしめるまでに至った。
国防を担う重要な土地であると共に、离北鉄騎の軍事力を危惧し、裏切ることのないように花鶴娓が抑え込んでいた。
边沙(biansha)十二部/辺沙十二部
大周を侵さんとする外敵。
阿木爾を将として掲げ、これまで数十年に渡り小競り合いを続けており、その都度離北が追い返してきた。
- 悍蛇部 阿木爾の部族
- 暸鷹部
- 長鷲部
- 勾馬部
- 胡鹿部 哈森の妻の部族
他
年表
永宜三十年 | 太子、齊惠連、昭罪寺に追放 |
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喬氏、投獄。喬天涯、義姉と共に逃奔。 | |
咸德二年 | 海良宜、薛修卓と共に花思謙の汚職を突き止める。 |
咸德三年 | 阿木爾、中博に進軍。沈衛、亡命を試みるも自刃。 |
沈蘭舟、蕭馳野、入都。 | |
咸德四年 | 蕭馳野、禁軍指揮官拝命。 |
咸德八年 | 咸德帝、病状の悪化。 |
小福子の暗殺事件。 | |
咸德年間 | 秋猟祭にて、咸德帝と海良宜、薛修卓が共謀し、花思謙を排斥する。 |
錦衣衛の李建恒暗殺未遂。 | |
蕭馳野、八大営都指揮官拝命。沈蘭舟、鎏輿司に昇進。 | |
天琛元年 | 李建恒即位。 |
沈蘭舟、錦衣衛南鎮撫司拝命。 |
書籍情報
2020年に簡体字版が江蘇鳳凰文藝出版社より出版されている。上下巻2冊で1セットの販売形態が採られている。全4冊。
巻数 | 2(上下2冊セット) |
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発売日 | 2020年4月 |
出版社 | 江苏凤凰文芸出版社 |
ISBN(上下巻) | 9787559445940 |
ISBN(終章) | 9787559450395 |