セル画
せるが
概要
薄く透明な板状のプラスチック板にキャラクター等が描かれたもの。通称「セル」(これは過去にはこの板にセルロイドが用いられたためである)。30分のアニメでさえ数千枚のセルが必要な事もあった。
なお、セルが使用されていた頃のアニメは、完成後には大抵、全ての場面が、僅かながらにゆれている。これは、デジタル画に変更された後も、一部のアニメ映画(例:第1作以外の「ONEPIECE」映画や、2003年の「ドラえもん のび太とふしぎ風使い」など)においても存在する。(ただし、ジブリ制作の映画は、2014年現在でも、全ての作品がそうなっている。)
システム
かつて一般的なアニメは紙に手描きされた「背景などの動かなくてよいもの」とセルに描かれた「キャラクターなどの動かす必要があるもの」によって構成されていた。
セルは複数枚重ねることが可能(もっともあまり重ねすぎると問題が生じるが)である。
キャラクターなどの動くものをスムーズに動かすためには、フィルムのコマ数と同じく一秒あたり24枚(デジタル作品だと1秒間に30枚)が必要となる(ただし、1秒当たり8枚でもある程度は動かすことは可能)。そのため作業の簡素化と多人数での分担作業時の整合性を高めるためにグラデーションやエアブラシを使わず色をきっちりと塗り分ける独特な技法として進化した。
作業の歴史
当初は動画用紙に鉛筆で描かれた原画から、特殊なインクと付けペンで線画をトレースするところからの作業であった。後に動画用紙から直接セルに転写する技術が登場した。
とは言え、数百枚から数千枚ものセルを人力で彩色するのは大変な労力を要した。そのためセルの使いまわしや動きの省略、セルではなく撮影のカメラを動かすなどの「セルを省略する手法」が発達した。一例を挙げると魔法少女ものなどによくある変身シーンなどはセルを新規に起こす作業を節約するためのものであった。
注意していると分かるのだが、大きくパースやカメラアングルが変化するシーンにおいては単色や単純な繰り返しパターンで背景が描かれていることが多い。
このようなシーンにおいては所詮2次元の紙に描かれた背景では数枚で済ませることが困難であり、かといってすべてのコマで正確なパースの背景用のセルを描き起こすのは莫大な労力が発生するからで、後述する「CG」は当初はこのような三次元的な背景の製作に使用されることから始まっている。
(始めてCGが使用されたのはドラえもんのタイムマシンの背景である)
セルアニメの場合、他のアニメーションでは不可能、あるいは難しいとされるいくつもの特殊な技法が開発された。一例を挙げるとセルにカッターで浅い傷を何本も刻み雨の表現としたり、意図的に折り目をつけて撮影光を反射させ逆光を現すという表現も可能である。また、現在では「どのようにそれを行ったのか」がまったくわかっていない技術も存在するといわれる。
一応セルを用いずにアニメーションを作成することも可能である(粘土を使ったクレイアニメや、パラパラ漫画の手法を用いる方法)が、セルを用いるよりはるかに手間がかかるため、あまり行われない。
撮影後
撮影後のセルは会社により異なる。セル画が保管されることは(場所の関係上)まれであり、関係者などに配布したり、一定期間保管の後そのまま処分されたりする。このようなセル画はまれに市場に流れることがあり、有名アニメ、かつ人気キャラクターおよび有名シーンのセル(たとえばディズニーの初期作品)は高値で取引されることもあった。