概要
稀代の陰陽師・安倍晴明と彼の親友・源博雅が、都に蔓延る様々な怪奇現象と対峙し、その解決に乗り出す。
奇知に富み飄々とした晴明と実直な博雅のユーモラスな掛け合い、リズミカルな“夢枕節”に彩られたおどろおどろしくも引き込まれるような怪奇の世界、それらに対峙して見えてくる「人の業」と「世の無常」の数々……と、単なる怪奇小説の枠には収まらない、何とも言えない「味わい」が多分に含まれた作品である。
1988年に単行本化されて以来、実に30年近い長期シリーズとなっており、下記にあるように多数のメディアミックスにも恵まれている。2000年代に流行した「陰陽師ブーム」の火付け役でもあり、創作作品での陰陽師の地位の向上に一役買ってもいる。
ただ、2000年に入るまでは細々とした不定期連載による発表が多く、本格的な執筆は2000年に突入して以降である。
夢枕氏の代表先であり、『キマイラ・吼』シリーズと並び、現在では氏のライフワークの一つとなった作品でもある。
単行本
- 『陰陽師』
- 『陰陽師 飛天ノ巻』
- 『陰陽師 付喪神ノ巻』
- 『陰陽師 鳳凰ノ巻』
- 『陰陽師 龍笛ノ巻』
- 『陰陽師 太極ノ巻』
- 『陰陽師 滝夜叉姫ノ巻』(上)(下)
- 『陰陽師 夜光杯ノ巻』
- 『陰陽師 天鼓ノ巻』
- 『陰陽師 醍醐ノ巻』
- 『陰陽師 蒼猴ノ巻』
- 『陰陽師 螢火ノ巻』
メディアミックス
漫画版
1993年~2005年にかけて岡野玲子によるコミカライズが連載。
2011年より続編『陰陽師 玉手匣』が連載中だが、こちらは原作を離れた独自の展開となっており、夢枕獏は「原案」となっている。
映画・ドラマ版
2001年と2003年に、滝田洋二郎監督、野村萬斎主演で映画化されている。
2001年にNHKでドラマ版が放送。主演は稲垣吾郎。全10回。
舞台版
2013年に市川染五郎(七代目)の歌舞伎『新作 陰陽師 滝夜叉姫』が上演された。
主な登場人物
安倍晴明(あべのせいめい)
また庶民から人外の輩に至るまで様々なモノの依頼を受けてその力を振るう。
常に口元に微笑を含み、その言動は変幻自在で謎めいている。
源博雅(みなもとのひろまさ)
醍醐天皇の孫にして従三位にもなる身分の高い貴族。
しかし作中では武士でもあり、身分の低い晴明を友人と扱って単身訪れる気さくな人物。
武勇以上にその奏でる笛の音が妖すら魅了することで知られている。
蘆屋道満(あしやどうまん)
晴明ら朝廷につかえる陰陽師とは異なる在野の老法師。
その力は晴明に匹敵するとされ、その時々の目的に応じて敵とも味方ともなる。