概要
体長1~1.3m、尾長50~65㎝、体重15~35kg。
強力な肉食動物である。外見は犬によく似ているが、長い尾と後ろ足で立ち上がることが出来た。背中には、まるでトラのような縞模様があり、その模様のせいで、「タスマニアタイガー」という名前も付いた。でも本当は、オオカミでもトラでもなく、カンガルーと同じ有袋類の一種なのである。
絶滅
かつてフクロオオカミは、タスマニアデビルと共にオーストラリア本土にも住んでいた。ところが3万年前に人類が進出し、同時期に現れたとされるディンゴとの獲物をめぐる競争に敗れた。タスマニア島は、そうした動物の出入りが簡単に許されないため、彼らは長らく人類が進出出来なかったそこでのみ生き残れた。
しかし19世紀になってそれも終わり、初頭の1803年にイギリスの人間たちが突然上陸してきた。一部の者は脱走して森をさまよった。2年後の記録によると、その中の2人の男が「森の中でトラを見た」と証言している。それが初めての発見記録とされている。
その後、ヨーロッパから入植者が住み着くようになり、家畜の羊や農場の鶏が襲われる事件が相次ぐようになると、「羊や鶏を殺したのは全てタスマニアタイガーだ」と勝手に決めつけられ(実際に彼らが殺した羊や鶏の数はそれほど多くなく、犬やタスマニアデビルも襲っているのにだ)、フクロオオカミは「家畜を狙う凶暴な敵だ」という理由で嫌われ、次々と殺された。1888年から1909年までは懸賞金がかけられ、その11年間に、2184頭もの個体が虐殺されたという。ところがその間に、捕獲された個体数が突如減り、1909年にたった1頭だけが捕獲され、妙な事にそれ以来、森で見かけるのは稀になってしまった。その理由の1つとしては、伝染病(ジステンパーなど)が考えられている。
1930年に、そのような病気で弱っていた1頭のメスが、ある農場の鶏小屋を襲った事で射殺され、野生ではそれが最後とされていた。だが、3年後の1933年に、最後とされる1頭が捕えられ、しばらくの間はホバートの動物園で飼われていた。この個体には「ベン」という名前が付けられたが、信じられない事にその個体はオスではなくメスだったのだ。どんな事でも人に理解されないなんて、皮肉で哀しい話だ。そして1936年9月7日。この日の朝にベンは死亡し、この時をもってフクロオオカミは地上から消えた。
その後も、この動物を見たという目撃情報が何度もあるが、どれも決定的な証拠とはならないため、絶滅したとするしかない。そんな今でも、この動物を探す人は多い。たとえ、絶滅したとされている事を分かっている人でもだ。