概要
哺乳綱オーストラリア有袋大目フクロネコ目フクロオオカミ科フクロオオカミ属に分類される絶滅動物の一種。
タスマニア島に棲んでいたことからタスマニアオオカミ、背中の横縞からタスマニアタイガーとも呼ばれた。
体長1~1.3m、尾長50~65cm、体重15~35kg。
タスマニア島の開けた森林に生息していた肉食動物で、ワラビーなどの小動物や鳥などを捕食。夜行性で昼は森の中に休み、夜になると草原で狩りをしていた。
外見は犬に似ているが、長い尾と後ろ足で立ち上がることが出来た。
絶滅
かつてフクロオオカミは、タスマニアデビルと共にオーストラリア大陸やニューギニア島などにも住んでいた。3万年前に人類が進出し、4,000~5,000年前に現れた野生犬ディンゴとの獲物をめぐる競争に敗れた。しかし大陸から240km離れたタスマニア島は、陸生動物の出入りが困難で、彼らはそこでのみ生き残れた。
しかし1803年、タスマニア島にイギリス人が上陸し、一部の者は脱走して森をさまよった。2年後の記録によると、その中の2人の男が「森の中でトラを見た」と証言している。それが初めての発見記録とされている。
その後、タスマニア島にヨーロッパ人が入植し、農場の羊や鶏が襲われる事件が相次ぐと、「羊や鶏を殺したのは全てタスマニアタイガーだ」と決めつけられ(実際に彼らが殺した羊や鶏はそれほど多くなく、犬やタスマニアデビルも襲っていた)、フクロオオカミは「家畜を狙う凶暴な敵」という理由で次々と殺された。1888年から1909年までは懸賞金がかけられ、11年間で2184頭が殺された。ところがある年を境に捕獲されるフクロオオカミが急に減り、1909年にたった1頭だけが捕獲され、それ以降、姿を見かけることは稀になってしまった。理由としては、伝染病(ジステンパーなど)などが考えられている。
1930年に、病気で弱った1頭のメスが、鶏小屋を襲って射殺され、野生のフクロオオカミはそれが最後とされていた。
だが、3年後の1933年に、最後の個体とされる1頭が生け捕られ、しばらくホバートの動物園で飼われていた。このフクロオオカミは「ベン」と名付けられたが、信じられない事にその個体はオスではなくメスだったのだ。どんなに小さな事でも、最後の最後まで人に理解されないなんて、皮肉で哀しい話だ。
1936年9月7日の朝にベンは死亡。この時をもってフクロオオカミは地上から消えた。
その後も、この動物を見たという目撃情報は何度もあるが、どれも決定的な証拠とはならず、もう絶滅したものと考えられている。そんな今でもこの動物を探す人は多い。たとえ、絶滅したと分かっている人でもだ。