「進め、すすめ。あれは風車にあらず、化け物じゃー!!」
概説
っとまぁ、こんな感じの思い込み激しい(今風に言えば痛い爺さん)アロンソ(自称ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ)と、無理矢理付き合わされた農夫サンチョ・パンサのドタバタ珍道中を描いた、ミゲル・デ・セルバンテスの小説。
初版は1605年で、10年も経たずにヨーロッパで大ヒットした。
この中で、風車を巨人と思い込んで突撃し、吹っ飛ばされるエピソードに太陽の沈まぬ帝国の落日を見た、という暗喩があったりもする。
普通に「セルバンテス 作」というわけでなくて、「モーロ人の歴史家シデ・ハメーテ(アラビア人ぽい名前)・ベネンヘーリ(地元の名産茄子が好きすぎる人 の意)によってアラビア語で記録され、セルバンテスはその記録を編纂して発表」という「又聞き」ということになっている。投獄中に書かれたという大人の事情ほかが絡んでいるらしい。
後編発行時「前編が出版されて世に出回っている」という設定とか、登場人物たちが前編の批評をするとか、「続編と称する贋作が(実際に)出たのでそれ読んでムカ入ったラマンチャの郷士ドン・キホーテが、それによるとサラゴサくんだりに行くとかこき腐るのでふんじゃあつうてバルセロナへ行く」という、頭われるようなメタフィクション構造を取る。
また、この作品からインスパイアされてか、ディスカウントストアの「ドン.キホーテ(ドンキ)」やドンキホーテ・ドフラミンゴ/ドンキホーテ・ロシナンテなるキャラクターなどが生まれた。
文学的な側面
本小説には、当時まだスペインで旧態然と根を張っていた「騎士道精神」、またスペインという国家へに対する痛烈な皮肉が随所にちりばめられていると云われ、その内容が何を示唆しているか、現在でも盛んに論議が交わされている。
また「近代小説の魁」とも云われており、それまで神や運命の気まぐれを前提とした叙事詩的な作品、――乱暴な云い方に換えれば“ご都合主義の悲劇的英雄伝”に傾倒していたところに、老人の思い込みから始まった珍道中という、神も運命もない“人間の成長”を描いた最初の小説ともされている。
このことから「近代小説百選」でも人気第一位の栄誉に浴している。