バッテリー
ばってりー
概要
あさのあつこによる児童文学小説。
ハードカバー全6巻が教育画劇から、文庫本全6巻が角川文庫から、新書本全6巻が角川つばさ文庫から刊行され、延べ1000万部を超えるベストセラー小説である。
漫画化、映画化、ドラマ化、アニメ化されるなど、メディア展開も多数。
作者であるあさのあつこは本作を野球の取材を一切せず執筆し、『バッテリー』はスポーツ小説ではなく、野球を通して成り立つ人間関係、特に一対一で向き合うバッテリーの関係性を書いていると語っている。
ストーリー
飛びぬけた才能と傲慢なまでの自信を持つピッチャー原田巧と、その才能に戸惑いながら強く魅かれていくキャッチャー永倉豪の一年間の物語。
少年達の真剣な対峙と美しい背景描写が魅力。短いセンテンスのキレがいい文章。語りは三人称だが、感情描写の主体が場面ごとに変わり、それぞれの登場人物の心理を細かく表現している。
登場人物
主人公
本作の主人公。中学一年生。誰もが認める天才ピッチャーで、自分に絶対的な自信を持っている。良くも悪くもまっすぐすぎる性格であり、周囲からは誤解されがち。
中学一年生。巧にキャッチャーとしての実力を認められ、バッテリーを組む。医者の息子で成績も優秀。面倒見がよく優しいが、芯も強い性格。
原田家
原田青波(CV:藤巻勇威)
巧より三歳年下の弟。小学四年生。兄とは違い病弱で、激しい運動ができずにいる。それでも野球が大好き。周囲を和ませる癒し系で、感情の機微に敏感。兄の変化にもよく気づき巧の1番の理解者。
原田真紀子(CV:乃神亜衣子)
巧と青波の母親。甲子園監督だった父・洋三が野球一筋で家庭を顧みなかった為、野球嫌いになる。周囲から浮きがちな巧と、身体が弱い青波のことを心から心配しているが、子どもたちからは過保護だと疎まれることも。
井岡洋三(CV:宝亀克寿)
真紀子の父親。新田高校を春四回、夏六回甲子園へ連れて行った名監督。戸村の監督でもあった。孫をかわいいと思うと同時に、巧の非凡な才能を見極めようとする根っからの野球人。
新田東中学校
1年
沢口文人(CV:村瀬歩)
豪や東谷とは幼なじみ。愛称は「サワ」。クラスは巧と同じ1年2組。紅白戦ではファーストで六番打者。足も速いが手も早く口も早い。小心者だが優しい性格。教師の小野薫子に憧れている。
実家は大きな農家で苺、桃、スイカ、ブドウやサツマイモを育てている。
東谷啓太(CV:石川界人)
豪や沢口とは幼なじみ。愛称は「ヒガシ」。クラスは豪と同じ1年4組。紅白戦ではショートで一番打者。豪や沢口の良き理解者で、彼らの思いやりからくる言動を撥ねつけたりする巧にも、物怖じせず接する。サワとは特に仲が良く、よく一緒に行動している。実家は「天満寿司」という寿司屋。
吉貞伸弘(CV:斉藤壮馬)
愛称は「ヨシ」。紅白戦ではサードで三番打者。
自称「ユーティリティプレイヤー」で攻守共に優れた選手だが自信過剰なお調子者。後にキャッチャーセンスも開花させる。マイペースで陽気なムードメーカーだが人の本質もよく見ている。
2年
野々村旭良(CV:石井マーク)
元キャッチャーで次期キャプテン。体質上激しい運動をすると肩に炎症が起きてしまうため現在はマネージャーのような役割を引き受けている。
個性的な後輩達の言動にも動じない度量の広さ、柔軟性、寛容さがある。意外と饒舌。
高槻周平
ポジションはピッチャー。寡黙で無愛想だが嘘や奇麗ごとを言わない真面目な性格。巧がマウンドに上がる時はファーストにつくことが多い。親友である野々村とは一年間バッテリーを組んでいた。
3年
新田東野球部のキャプテン。四番でショートを守り、成績優秀で生徒会長も務め、リーダーシップもある完璧超人。野球をこよなく愛している。ただの優等生ではなく、相手のスキを突くことにも長けている策士。
展西詠司(CV:森嶋秀太)
野球部の副キャプテン。風紀委員も務め、品行方正な模範的な生徒で通っている。入部してきた巧を嫌悪し、巧や監督に対して彼なりの意地を最後まで貫き通した。部活の後はせっけんで徹底的に手を洗う習慣がある。
磯部悠哉
ポジションはサード。海音寺とは鉄壁の三遊間コンビとして共に野球をやってきた。バッテリーを巡り口論になった際に、素が出たか定かではないが彼を「一希」と呼んだ。非常に仲間想いで熱い性格。漫画版8巻収録の番外編「完全燃焼」で主役を務める。
新田東中学校関係
戸村真(CV:郷田ほづみ)
担当教科は数学で三年の学年主任。生活指導主事。風紀委員会担当。
野球部の監督で若く精悍な風貌だが影で「オトムライ」と呼ばれている。厳格で徹底的な管理野球を強いてきたが、巧と出会い変化していく。
小野薫子
担当教科は国語。四組である豪とヒガシの担任。卓球部の顧問。美人であることから苗字に引っかけて、小町先生と呼ばれている。巧や野球部のファンで、何かと気にかけている。
ラスト・イニング
バッテリーの番外編。横手二中・瑞垣俊二が主人公を務める。
高校生となった瑞垣の視点で彼のその後や心境、最終試合の結果、彼から見た門脇や巧らバッテリーのその後が描かれている。
メディア展開
ラジオドラマ
2000年4月より青春アドベンチャー(NHK-FM)でラジオドラマ化。全10話。
漫画
2004年より本作を原作とした漫画が柚庭千景により月刊Asukaで連載開始。
2010年を最後に長い間休載されていたが、2015年8月号より、同誌にて連載再開。
新書判は絶版になっていた為、連載再開・アニメ化に伴い、新装版が刊行。
- 新書判(あすかコミックス):既刊8巻 (絶版)
- 新装版(角川コミックス):既刊8巻 (9巻は7/26発売予定。以下続刊)
2016年6月よりアニメ化に伴い2度目のコミカライズ。作画は志村貴子が担当し月刊コミックビーム7月号より集中連載開始。
映画
2007年3月10日より全国東宝系で公開される。
主題歌は熊木杏里 「春の風」
監督:滝田洋二郎
脚本:森下直
- 原田巧 役:林遣都(幼少: 後藤聡)
- 永倉豪 役:山田健太
- 東谷啓太 役:太賀
- 沢口文人 役:米谷真一
- 海音寺一希 役:矢崎広
- 門脇秀吾 役:渡辺大
- 瑞垣俊二 役:関泰章
- 原田青波 役:鎗田晟裕
- 原田真紀子 役:天海祐希
- 井岡洋三 役:菅原文太
原作者であるあさのあつこがサプライズ出演している。
映画化に伴い完全読本として『バッテリーSCORE BOARD』が発売された。