概要
ドラゴンの年(The Year of the Dragon)とは、イギリスの作曲家フィリップ・スパークの作曲によるブラスバンド(英国式金管バンド)のための作品である。作曲者自身による吹奏楽編成向けの編曲版も存在する。
この曲は1984年、イギリス・ウェールズの名門ブラスバンドであるコーリー・バンド(Cory Band)の結成100周年を記念して作られた委嘱作品であり、
曲名にある「ドラゴン」とはウェールズ国旗に描かれた赤い竜「レッド・ドラゴン(Y Ddraig Goch)」を指す。
今までに多くのブラスバンド団体や吹奏楽団で演奏され、今日では強豪団体のスタンダート・レパートリーのひとつとして選ばれている。
曲は全3楽章で構成され、全曲演奏すると14分程度を要する。なお、本来は全4楽章であったが、作曲の過程で最終的に第1楽章が割愛され現在の構成になっている。
余談だが、まれに常軌を逸した超絶技巧を超高速で見せつける演奏が存在し、「鼻血ドラゴン」なる名称で語り継がれている。
曲の構成(吹奏楽編曲版)
第1楽章「トッカータ」(Toccata)
Molto allegro, con malizia(♩=168)
スネアドラムとホルンにリードされた16分音符のリズムによる鋭利で不気味なサウンドと、これを受け止める低音楽器とバスドラムの重厚な強打による、緊張感の高い幕開けで曲は始まる。
ベルトーンによる各楽器の応酬、トランペット、トロンボーンの鮮烈な打ち込みを経て、間に木管楽器の煌びやかな舞曲風のモチーフが挟まれる。
そして更にスケールを増した再現部分が現れると、深みに沈むようなアンサンブルを奏でつつ徐々に遠くへと消え去っていく。
第2楽章「間奏曲」(Interlude)
Con moto(♩=72) ma rall.
壮大で印象的な下降音型の冒頭から緩やかに収まっていき、直後、静かにくすんだ伴奏の中からコールアングレ(原曲ではトロンボーン)の憂いを秘めたしみじみとしたソロが響き、それに続くようにフルートやオーボエが物悲しいフレーズを受け継いでいく。
中間部からはトゥッティによる荘厳で美しいコラールが流れる。曲の進行と共に高揚を増す旋律は、やがて楽章の高まりの頂きでこれでもかと言わんばかりの輝きを放ち、華やかに散っていくような終わり方で再びコールアングレにソロを明け渡していく。
第3楽章「終曲」(Finale)
Molto vivace(♩=138)
16分音符による細かいパッセージの衝撃的な入りで幕を開け、超絶技巧によるスリリング且つエネルギッシュな展開がそれに続く。
各パートによるソリスティックな旋律の交錯、躍動するフレーズの幾重もの波を経たのちに、曲はやがて壮大で華麗なコーダを迎え入れる。
クライマックスでは急速なアッチェレランドの高まりの中、全管楽器と打楽器が渾然一体となってビシリと締める。
主な演奏団体(関連動画)
ブラスバンド版
ブリタニア・ビルディング・ソサエティ・バンド(Britannia Building Society Band)
ブラスバンド・ヘーマン(Brass Band Heman)
イーラ・ブラスバンド(Ila Brass Band)
吹奏楽編曲版
東京佼成ウインドオーケストラ(Tokyo Kosei Wind Orchestra)
オランダ王国海軍軍楽隊(Marine Band of the Royal Netherlands Navy)
ベルゲン・シンフォニックバンド(Bergen Symphonic Band)
ブリッツ・フィルハーモニックウインズ(Blitz Philharmonic winds)
ウィッシュ・ウインドオーケストラ(WISH Wind Orchestra)
関連タグ
イギリス ウェールズ ドラゴン レッドドラゴン Y_Ddraig_Goch
外部リンク
参考文献
- 秋山紀夫「吹奏楽曲プログラム・ノート」 株式会社ミュージックエイト 2003年6月18日発行 495~496ページ