概要
上海アリス幻樂団の作品である東方Projectに登場する古明地こいしと「ZUN's Music Collection」に登場するマエリベリー・ハーン(メリー)のカップリング。
こいしは『東方地霊殿』、メリーは「蓮台野夜行」にそれぞれ初登場した。
2016年11月現在、原作では両者は出会っていない他、両者が住まう世界がどのような関係性であるかなどについては作中では語られていないため、その接触可能性の程度についても不詳である。
一方で両者に関連した二次創作においては従来より二人の交流も想像されており、作品の進行によって原作においても一部のワードなどで二人に類似した要素が語られるなどしていることなどもあって、ファンの間でも様々な交流の在り方が想像されている。
無意識と夢
こいしとメリーについてはそれぞれ「無意識」と「夢」という要素がある。
こいしは「無意識を操る程度の能力」をもち、スペルカードなどにも「無意識」に関連した用語などを含むものを持つ。さとりとしての「目」を閉じたことで(存在までも)「さとられない」存在となった。
メリーは「 夢 」を通して異なる複数の世界を体験しており、「夢違科学世紀」や「鳥船遺跡」など、それはもはやただの「 夢 」ではなくなっている。
さらにメリーは大学において「 相対性精神学 」を専攻しており、「 夢 」についての近年の「 常識 」のありかたについても知識を得ている(「夢違科学世紀」)。
無意識を単に「自分自身が認識できる意識外のもの」としない、それ自体が何らかの機能なり有機的な構造なりをもつとするなどの立場の場合、無意識の何らかの発露が夢であるとする視点や夢は無意識の作用であるとする視点などがある。
例えば「無意識」(スーパーエゴ的な「無意識」の視点によるもの)の機能に基づく心理的な「抑圧」がその形質を変えて象徴化されたものとしての「夢」ととらえる視点や、個人を越えた普遍的な無意識を仮定するものでは夢はそれを象徴的に映し出すシアターのような機能を有するなどともされる。
実際のケースとしての「夢での異世界体験」などはそれぞれの研究的、または臨床的立場において
各々ごとの形で解釈や具体的アプローチが提案されてきているという歴史をもつ。
上記のような立場はこいしのスペルカードのモチーフとなった心理学的アプローチにもみることができ、例えばスーパーエゴやイドといった要素にはそれの力動の象徴の場として「夢」が想定されることがある。こいしにみる「無意識」には単なる意識外の分野としての「無意識」以外の無意識の在り方も包含されていることを見ることができる。
無意識と夢はその機能や仕組みを通して互いに交わり合う、時には同一のフィールド上にあるものと
考えられることもあり、これもまた無意識と夢との両者に深くかかわりあうこいしとメリーの交流の入り口やその接触の場などとして「こいメリ」も含めたこいしとメリーの二次創作においても関連付けて考えられることがある。
ただし先述のようにメリーの「 夢 」は「ただの夢」ではなく、同様にこいしもまた単なる「無意識」の存在でない一個のパーソナリティをもっているという点が「夢」や「無意識」の「実体」には触れることはできない実際の心理学的アプローチとはまた異なっており、こいしとメリーならではの概念的な象徴性と実体の両方を持つ二人としての多様なアプローチが試みられている。
例えばこいしは具体的な無意識的機能としての「 イマジナリーコンパニオン 」(イマジナリーフレンドとも)としての側面ももち(『東方求聞口授』)、他者に影響する具体的な無意識的存在でもあるという、象徴と具体性を同時に備えてもおり、こいしとの「夢」を介した交流は他者性をもった「無意識」との交流ともなる。
「メリー」と『深秘録』
メリーは作中において宇佐見蓮子から「 メリー 」との愛称で呼ばれており、作中においても一部の例外を除いて「メリー」以外の呼びかけられ方をすることがない(先述の現在時点)。
「メリー」とは、例えば英語圏などの人名としてのものを考えるとき、この人名・愛称にも縁した要素をこいしも備えることとなった。それが『東方深秘録』にいてこいしが自らの行使するオカルトとして関連をもった都市伝説としての「メリーさん」である。
『深秘録』においてこいしは「メリーさん」の怪異を構成する要素をこいしならではのアレンジも加えつつ披露展開し、それがどこまで通用するかを楽しむなど、「メリーさん」と関わった。
ファンの間では上海アリス幻樂団作品における「メリー」といえば先述のようにマエリベリー・ハーンのことでもあるため、『深秘録』においてこいしが「メリーさん」と関わったことで愛称と都市伝説の怪異という異なるベクトルから二人の関連性を見出すことともなったのである。
なお、『深秘録』においてこの都市伝説の怪異の(異変の起点側としての)中心に位置し、その流れを盛り立てたのはメリーと同じく「秘封倶楽部」の名を冠するサークル活動の「初代会長」である宇佐見菫子である。同作ではこいしもまた菫子に出会っている。
こいしとメリーについては『深秘録』を通しては「メリーさん」と「秘封倶楽部」という二点についてその関連要素を見ることができるのである。
二次創作では
原作においてその住まう世界そのものが異なるこいしとメリーについては二人の交流という視点の他にその接点の在り方なども創作の範囲となることもある。
例えば二人が出会う際に介在する要素として先述のようにメリーの「 夢 」(実体験としてのものも含めて)やこいしの「無意識」(「 夢 」に入り込んだ状況など)の要素などが想定されることもある。
「 夢 」を通して(本人の意図するものとは限らずに)異世界を渡る際にメリーの「無意識」とリンクしたこいしと出会うといった想像の在り方などが具体的な一例である。
時には他者に理解されない「 夢 」にまつわる物事の共感を願うメリーの「イマジナリーコンパニオン」としてこいしが応えたり、こいしの潜在的な人恋しさに対する友達としてメリーが引き寄せられたりと、それぞれの境遇などを通した惹かれあいの姿も想像されている。
またメリーは夢を通して「 真っ赤なお屋敷 」を訪れ、その屋敷でもてなしをうけた経験を持つ(「夢違科学世紀」)。メリーの語る描写などからファンの間ではこの屋敷は「紅魔館」ではないかとも考えられている。
この経験と同様にメリーが夢を通してこいしの帰る場所である「地霊殿」へと至るという創作アプローチもあり、ここでこいしと交流するというストーリーも想像されている。
これはメリーが実際の結界の向こう側の世界でこいしとであうケースの導入の在り方の一つと言えるだろう。
さらに『深秘録』で外の世界を体験したこいしが何らかの拍子にメリーも住まう外の世界に降り立つという想像もあり、世界をまたいだこいしとメリーの交流について様々なアプローチがなされている。
なお、地霊殿も所在する旧地獄の彼岸花は美しいらしい(霧雨魔理沙、『東方求聞口授』)が、メリーは彼岸花は嫌いである(蓮台野夜行)。
自分自身でさえ次の行動が予測不能なこいしと未知の世界に挑むメリーの二人の交流は、二次創作においても様々な可能性を想像しながら、多様な展開を生み出している。