「 私、秘封倶楽部(ひみつをあばくもの)会長として最後の大仕事をします 」
(『東方深秘録』、「真・秘封倶楽部の決意」)
概要
東方Projectに登場する宇佐見菫子の二つ名の一部にして役職名。
菫子が『東方深秘録』に初登場した際にこの両者の要素がいずれも登場した。
二つ名としては『深秘録』における菫子の二つ名、「 深秘を曝け! 秘封倶楽部初代会長 」にその名称は登場する。
幻想郷へと時折入り込み、『深秘録』におけるストーリーではついに本格的に幻想郷という不思議の世界に挑んだ菫子が、「外の世界」において結成した「深秘を曝く」という活動の基盤となる組織こそ「秘封倶楽部」であり、この「初代会長」とされるのが菫子である。
作中での表記は二つ名に見るような「秘封倶楽部初代会長」をはじめ「 秘封倶楽部 初代会長 」と、組織名と役職名の間に半角スペースが入る場合もある。
所属学校・学年なども含めたトータルな肩書では、
「 東深見学園高校一年 秘封倶楽部初代会長 宇佐見菫子 」となる。
なお、倶楽部なのだから「部長」ではないかとも思えるが、深秘録時点でメンバーは菫子一人なので、おそらく同好会扱いなのだろう。
実際に『東方香霖堂』では、菫子自身はその位置づけについて「 部長 」とも自称している。
宇佐見菫子の「秘封倶楽部」
『深秘録』以前
菫子にとっての「秘封倶楽部」とは、元々は「 人を追い払う為 」のものであった。
中学時代は友人というものの価値を見出さず人間関係をつくりあげなかった菫子であったが、高校入学とともにそれまでの人間関係が一新され、菫子自身の成績の優秀さやその態度に魅力を感じた新しい人間関係が形成される下地が出来ていた。
しかし自身の才能、能力、そして知識とによって全能感を帯びていた菫子は自分と他者の間に明確な差異を見出し、他者からのアプローチをむしろ否定的にとらえていた。他人を、「自分を普通の人間のレベルへと落とさせようとする(悪意のある)存在」、と捉えていたようである。
そんな対他者観の中で菫子がアクティブな防衛として結成したのが「秘封倶楽部」であった。
この「 非公認オカルトサークル 」によって、菫子の目論見の通り人は菫子に寄り付かなくなった。
これが『深秘録』以前の菫子と秘封倶楽部の物語である。
『深秘録』以後
「 秘封倶楽部とは、異世界の秘密を自分の足で曝くサークルである。
結果、彼女は世界の深秘に触れた。 」(『東方深秘録』おまけテキスト)
『深秘録』における体験は菫子のメンタリティを大きく変容させた。
実際の妖怪、魔法、不老不死など、中学時代から研究を続けてきたオカルトや都市伝説よりもよりオカルト的な幻想郷で出会う物事に新鮮な驚きは菫子を強く幻想の世界に惹きつけられ、そしてそこでは時に恐怖し、時に再会に喜び、時に癒され、時に笑い合うなど、豊かな生身(?)の体験・交流がなされるのである。
菫子は知識と経験との関係性を菫子なりに見出し、さらに幻想郷の存在たちとの交流によって他者にも開いていけるような気持ちを持てるようになっていったようである。
『深秘録』での出来事は、菫子という一人の人間にとってかけがえのない経験ともなったのである。
曝かれなかった秘密
秘封倶楽部は秘密を曝くサークルである。
しかし『深秘録』では曝かれなかった秘密が残された。
その潮流は『深秘録』として物語が語られる以前から起こっており、『深秘録』の物語へと至る幻想郷における下地には菫子の意志の外にあったものもある。
それは結果としてオカルトボールと相性良く連動し菫子の思惑を支援することとなったが、そのオカルトボールにさえ、菫子が想定していなかったものも含まれた。
菫子が関与したこの物語の「 深秘 」には、まだ曝かれていない多数の謎が残っているのである。
さらに『深秘録』以後の時間である『東方茨歌仙』や『東方香霖堂』でも菫子がオカルトを求めている様子が描かれている。前者の作品では、幻想郷なら可能なのではないかとして、とあるオカルト的存在の召喚実験を行っている。
後者の作品に登場した際の菫子はオカルトを求める理由として菫子の個人的興味等複数の理由を挙げている他、「 完全な形 」での幻想郷来訪もまだあきらめていない様子である。
そのためのオカルト自体の研究にも余念がなく、オカルトに影響を受けないための理論的バックボーンを見出している他、都市伝説騒動の拡大に伴う「 オカルトパワーを使った大きくて破滅的なうねり 」について予見しているなど、先述の『深秘録』の物語に加えて以後の菫子が挑もうとする未知の「 深秘 」はその影響も含めてまだまだ数多存在する様子である。
「ZUN's Music Collection」の「秘封倶楽部」
上海アリス幻樂団の作品である「ZUN's Music Collection」にも「秘封倶楽部」は登場する。
こちらは宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーン(メリー)の二人による「 良くある霊能者サークル 」(「蓮台野夜行」)、「 オカルトサークル 」(「夢違科学世紀」他)である。
そしてその「 裏の顔 」こそ、メリーの「 眼 」によって「 世界中の結界 」を見つけ、蓮子とともに様々な世界を体験するという、「 張り巡らされた結界を暴くサークル 」なのである(「蓮台野夜行」、魔術師メリー)。
蓮子とメリーの二人は、複数の作品で境界に飛び込んではその先の世界を楽しむという体験を重ねている。2015年5月現在の最新作である「伊弉諾物質」では、菫子の言うところの「 オカルト 」ともいえる「 イザナギオブジェクト 」を手にし、「 神の時代の風景 」を識る可能性までも拓いた。
二人の未知なる「 不思議 」を目指す姿勢は、菫子の「 深秘を曝く 」活動とも類似している。
ただし『深秘録』あるいは「伊弉諾物質」時点では菫子の「秘封倶楽部」と蓮子とメリーの「秘封倶楽部」の両者の関係性などは語られておらず、菫子のそれに見る「初代会長」の意味も語られていない。
両者の時間的・空間的接点なども語られておらず、上記の両作品の現在時点では、二つの「秘封倶楽部」の関係もまた、「深秘」にして「不思議」の領分にあるものである。
「 夢と現は区別できない様に、人間と胡蝶と区別できないように、
ヴァーチャルとリアルは決して区別できない、と言うのが今の常識である。 」
(「卯酉東海道」、最も澄みわたる空と海。蓮子とメリーの秘封倶楽部周辺。)
「秘封」の読み
「秘封倶楽部初代会長」の名にもある「秘封」は、上海アリス幻樂団作品においては先述の通り「ZUN's Music Collection」の「秘封倶楽部」に関連して先行して登場しており、その読み方についてもファンの間で様々な考察がなされていた。
その候補が「ひ-ふう」と「ひ-ほう」の二種である。
この読み方の議論は上海アリス幻樂団も制作にかかわった『深秘録』に登場した菫子の「秘封倶楽部初代会長」についても適用されており、先の「秘封」同様に二種類の読みが想像されていた。
この状況にあって、2016年4月26日に行われたニコニコ生放送に原作者であるZUNが出演した際、「秘封」の読みについて「ひふう」であるとの明言がなされた。
これは当時現在時点の「ZUN's Music Collection」最新作である「燕石博物誌」に関連した、<「ZUN's Music Collection」の「秘封倶楽部」>に関連した発言であるが、同放送ではZUNが「ひほう」の読み方を想定していなかった旨も語られているため、菫子にかかわる「秘封倶楽部初代会長」においても「ZUN's Music Collection」の秘封倶楽部同様にその読みは「ひふう」となることが想像される。
本記事もこれに倣い、同現在時点では「秘封倶楽部初代会長」にみる「秘封」についても「ひ-ふう」と読む可能性を主眼としている。
同放送における「秘封」の読みにまつわる事柄については「秘封倶楽部」記事も参照。