超能力を操る程度の能力
ちょうのうりょくをあやつるていどののうりょく
初登場した『東方深秘録』において、菫子は「 本物の超能力者であった 」とされている。
「超能力」とは一般的な人間の機能の範囲外の特殊な能力の全般を指す語である。それには多様な種類があるが、菫子が初登場した『深秘録』で発揮したものの一例とその使用例は次の通りである。
- 身体的延長等による物理的力によらない「念力」、「サイコキネシス」
- アーバンサイコキネシス(必)、各種のテレキネシス(必他)、念力「サイコキネシスアプリ」(ス)
- 空間的に離れた場所を瞬時に移動する「瞬間移動」、「テレポーテーション」
- テレポーテーション(必)
- 火気の無いところに発火現象を発生させる「パイロキネシス」
- 射撃、連携攻撃他
- 他の物理的力などによらず中空に浮遊する「空中浮遊」
- 移動時など。(幻想郷では人間を除き良くみられる能力であるが、「外の世界」では「超能力」である)
※凡例/「必」:必殺技、「ス」:スペルカード
超能力には「予知」や「テレパシー」、「サイコメトリー」といったものもあるが、『深秘録』作中で菫子が発揮したものは上記のとおりである。
上記の要素の内サイコキネシスは弾幕アクションの決闘場面でも応用が利くものが多いようで、複数のモーションでそれらしい様子が見られる。この能力は菫子が持つスマートフォン(あるいはタブレット型のような端末機器)の特定のアプリケーションとも連動しているようで、自身の能力を仲介、あるいは強化、または調整などするための仲介デバイスとしても利用している様子である(念力「サイコキネシスアプリ」等)。
さらにはバスの標識や道路標識付きの電柱を手を触れずに勢いよく操る、中空でパンダカーに乗って突撃するといったサイコキネシスの応用と思われるモーションもある。水流を操る「ハイドロキネシス マンホール」(必)もこの応用だろうか。
テレポーテーションの際には菫子周辺と移動先に光の柱が出現している。
上記のもの以外で菫子が披露したものとしては、決闘シーンなどでは菫子は本人の姿そのものではなく大きさの異なる輝くドットの群れとして登場し、それが一か所に集まって後姿の菫子となる、という演出となっている。これは超能力と並ぶ菫子のもう一つの要素である「オカルティシャン」的な演出的なモーションともなっている。
またスプーン曲げと思しき演出や帽子の中から数羽のハトを呼び出す演出もあるなど、菫子自身もまた「超能力」然としたものばかりではなく、愛嬌のある、「 ユーモラスで胡散臭さを含んだオカルト楽園 」(ZUN、『深秘録』おまけテキスト)を表現している。
一方、怪ラストワードである<*幻視せよ! 異世界の狂気を*>では、オカルトボールと同色の謎の光柱を相手に降り注がせるなど、従来の「超能力」の範疇にとどまらない「菫子の超能力」ともいえる要素も披露している。この際には同作キャラクターデザインの春河もえによる菫子の歓喜の表情のキャラクターカット(全身)が挿入されている。
さらに『深秘録』の騒動以後は、眠りと夢を通して特定の世界に精神だけが移動できるということも「 どういう訳か 」(菫子、『深秘録』)出来るようになっている。
幻想郷と行き来できるこの能力が菫子のものであるとするならば、これもまた「菫子の超能力」といえるものであるのかもしれない。
ただしここで受けたダメージなどは何らかの形で実際の菫子に影響を及ぼしているなど、その全てを自身で便利に調整できるわけではない模様である。
「怪我しちゃった でも夢だからいいや
まてよ……? この間のアザが残ってたような……」
(菫子、『深秘録』対戦モード、汎用勝利セリフ)
これ以外に「超能力」に関連したアイテムとして、菫子は射撃にESPカード(主に五感によらない「超感覚的知覚」の有無を検査するための試験カード)を用いている。このカードはストーリー上でも特定のキャラクターとの関係を繋ぐ特別なアイテムとして登場する。
『深秘録』に続く『東方憑依華』では本作に新たに追加された「組み技」においてもサイコキネシスと思しき能力を行使しており、至近距離にある相手をサイコキネシスでとらえた後、相手の物理的な身体そのものを鉄骨や廃棄物の要領で操り、天地(ゲーム演出としては決闘フィールドの上下に)に叩き付ける攻撃を行う。サイコキネシスの操縦は先述のパイロキネシスで火炎弾を射出するときなどにも見られるような二本指で行う。
また『憑依華』ではとある場面で菫子は菫子ならではの特殊なシチュエーションに直面しており、菫子の超能力について「 W超能力 」という可能性も展開された。
『憑依華』では具体的にスペルカード(CPU専用)の<W超能力「サイコキネシステレポーテーション」>や<W超能力「絶体絶命メトロポリタン」>などとして登場している。
<W超能力「サイコキネシステレポーテーション」>はサイコキネシスで廃棄物を操りながら菫子がテレポーテーションでフィールド内を瞬時に移動する。菫子本人は定点的な移動であるがサイコキネシス影響下の廃棄物群は画面内を回転しつつゆっくり移動するので、緩急異なる二種類の移動パターンを持つ別々ターゲット、オブジェクトが展開されるものとなる。
<W超能力「絶体絶命メトロポリタン」>は菫子が使用する、外の世界における「都市」(メトロポリタン。「大都市の」の意)の構造物やインフラを利用したサイコキネシス攻撃の同時展開。
具体的には電波塔や電柱、地下人工水道の水流(ハイドロキネシス)などを展開する。
いずれも菫子が行使する超能力の複合的・同時連続的な展開から成るこの二スペルカードは確かに菫子の超能力の可能性である。それはこれを展開する菫子についてドレミー・スイートが菫子本人であることに間違いないと確認していることからも裏付けられるが、その実、この「 W超能力 」を展開できるシチュエーションは『憑依華』における夢の世界をまたいだマスターとスレイブの性質、あるいは菫子が関連したとある都市伝説の性質からして、同時点での菫子が別場面などで任意に行使し得るものではないという特殊な性質も持つ。
『憑依華』における「 W超能力 」は都市伝説と憑依という二者の要素が同時に存在することで展開されるものであり、それは「完全憑依異変」の基盤にしてこれに先立って発生していた「都市伝説異変」の二者が発生しているシチュエーションであったからこそ顕現したものであった。
本作での「 W超能力 」は、「完全憑依異変」に巻き込まれただけでなくその異変を通して独自の都市伝説ともついに向き合うこととなった菫子ならではのものである。
『深秘録』おまけテキストでは、菫子が他者よりも自身が優れていると感じさせていた理由の一つに深めた知識(「 ネット 」経由)に並んで「 能力 」が挙げられている。
他者を遠ざけて生活するなかでやがてはじめた「 独自の研究 」の内容の一つにも、「 自身が超能力を使える理由 」があった様子である。
中学時代から高校と、「秘封倶楽部」設立なども通して他者と交わらなかった菫子であるが、それらの研究を通して幻想郷を識ることとなり、やがては『深秘録』での混乱とその後の出会いへと至るなど、菫子と密接に連動している。
そしてこの能力も通して幻想郷で出会った「 彼女が見下すことの出来ない人間達 」は、菫子にこれまでの自身の視点を覆させるショックを与えたとともに「 友達を作るのも悪くない 」と思わせるようになるなど、菫子に変化をもたらしている。
この能力は菫子の重要な個性の一つであるとともに、菫子という個人の形成にも今まさに大きく影響しているのである。