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オカルトボール

おかるとぼーる

「オカルトボール」とは、東方Projectに登場するアイテム及びゲームシステムである。
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手に入れろ! オカルトボール!

黄昏フロンティア『東方深秘録』公式ページより)



概要編集

東方Projectに登場するアイテムであり、『東方深秘録』のゲームシステムの一つ。

アイテムとしてはストーリーの中心部分に関わる重要なものであり、ゲームシステムとしてはゲームとしての『深秘録』の個性の一つでもあるという『深秘録』全体に深く関係したマテリアルである。


また同作に初登場した宇佐見菫子の必殺技(スペルカードなどとは異なる、同作における特殊な攻撃体系の一つ)にも同名のものがある。

更にゲーム作品としての『深秘録』に同梱のゲームの起動アイコンもオカルトボールと思しきデザインとなっているなど、『深秘録』の物語に深くかかわる重要な要素となっているものである。


また『深秘録』は「"Play,Doujin!"」のプロジェクトを通してPlayStation4を対応ハードとした作品展開も行われており、PS系ハードにも見られる機能である「トロフィー」に関連して、オカルトボールの名を持つトロフィーも登場している。

本記事では博麗神社例大祭を初頒布の機会とするWindowsを対応機種とした『深秘録』を単に<『深秘録』>、または必要に応じて<例大祭版『深秘録』>と呼称し、PS4を対応ハードとする『深秘録』を<PS4版『深秘録』>と呼称する。


ストーリー中の「オカルトボール」編集

オカルトボールは『深秘録』以前から幻想郷及び幻想郷に関わった菫子を通して多様な影響を与えていた。オカルトボールは『深秘録』では「集めると願いがかなう」などの噂が流されており、やがて「 コンプリートを目指すもの 」たちによる争奪戦が起こり、この争奪戦は殺伐とした雰囲気ももたらしたようである。


例えば少名針妙丸雲居一輪は「集めきると願いが叶う」という噂に乗って争奪戦に参加している他、藤原妹紅はとあるオカルトボールそのものに興味をもったことを始まりに、これを集めている。


さらにオカルトボールは「都市伝説」とセットで運用されており、『深秘録』時点での幻想郷では「 自分にとって都合の良い都市伝説を、自らの力に変える手段が確立しつつあった 」(ストーリーモード・キャラクターセレクト / 霊夢ルート紹介記述)。

これは各キャラクターたちが自らを表現する要素であるところのスペルカードなどでもみられている。


オカルトボールは闘いとその勝敗でのみ所有者が移動するという性質も持ち、放棄する事も出来ない。放棄したとしても、いつのまにか元の所有者の手元に戻っている。

封印などによって存在を隔離することも不可能である。


所有権すら誰も制御できていない 」(聖白蓮、『深秘録』)


闘いの勝者にオカルトボールは自動的に移動し、連勝することでオカルトボールが集まっていくこととなる。


都市伝説に関連してはオカルトボールを持ち込んだ者をはじめ「 神社周辺の連中 」(豊聡耳神子、『深秘録』)、独自のスタンスからこの異変に臨んだ河城にとりなど様々な意図の主体が各々の目的をもってこれを取り扱っており、さらには都市伝説そのものを楽しんだ古明地こいしや都市伝説を成長させた秦こころなど、都市伝説との接し方もそれぞれのキャラクターごとに個性がある。


一方でオカルトボールをめぐってはその危険性などにいち早く気付きこれに対処しようとした者たちもあり、例えば神子や茨木華扇などは『深秘録』開始時点でオカルトボールの意味に気付いており、独自に対処する目的でこれを集めている。

二人については神子の動向には後に物部布都が、華扇の動向には二ッ岩マミゾウがそれぞれフォローをし、特にマミゾウは華扇の計画の「 」を埋め、さらにそのプランに重要なキーアイテム(?)を提供するなど、『深秘録』の異変において解決者としても関わった。


作中では主に神子、華扇、マミゾウらや、あるいは「 オカルトボールを仕込んだ張本人 」である菫子によって、『深秘録』時点でのオカルトボールの仕組みやその正体、何を元に作られているかなどが語られることとなる。


オカルトボールと幻想郷編集

オカルトボールとは、華扇によれば「 科学的で人工的な物質 」であり、マミゾウによれば「 外の世界の聖地の石を集めたもの いわゆるパワーストーンという奴 」である。

これらのパワーストーンは外の世界の「 高い霊力 」を放ち、これは幻想郷を構成する結界(または境界)を揺らがせるものであった。


またオカルトボールは「 パワー 」を溜める性質を持つ。

菫子は「 幻想郷に自由に行き来できるようになる 」ためにこのパワーを集めるべくオカルトボールを幻想郷に投じ、その機会を待った。

オカルトボールの闘いの勝者の方に集まる習性も、トーナメントのように(あるいは蟲毒のように)その力を高めることとなる。


そして誰かがそのパワーを解放することで両者を隔てる結界が無くなることを菫子が目論んだのが『深秘録』の前段であり、こうしてオカルトボールを巡る「異変」がはじまるのである。


全てを集めた者は結界を内側から破壊する新たな鍵となり 結界を破壊しながら外に向かう

  ボールを集めるという噂は誰かが流した禁断の噂だった 」(華扇、『深秘録』)


「イレギュラー」なもの編集

ただし一点だけオカルトボールには「 イレギュラー 」があり、それは「外の世界」には存在しないはずの場所である。したがって、「 パワーストーン 」も入手できよう筈がない。

紛れ込んだそれとは、「月の都」のパワーストーン(オカルトボール)である。


「月の都」は「外の世界」には存在しない。

外の世界にある月は「表」のものであり、例えば菫子がパワーストーンとして「 月の石 」(「大空魔術」、ZUN's Music Collection)のようなものを手に入れたとしても、それはあくまで「表」の荒涼とした月のものであり、「月の都」のものではない。「外の世界の月の都」が存在しない以上、手に入れることは(あるいは概念上そもそも存在することも)不可能なものである。


月における月の都は 地上での幻想郷と同じ関係にある 」(八雲紫、『東方儚月抄』)


しかし現に「月の都」のパワーストーンは存在し、オカルトボールとして機能した。

この事実が、『深秘録』の物語の終盤にかけて大きくかかわることとなる。


結果的に『深秘録』時点ではそれが存在している経緯を誰も知ることはできなかった。

菫子もまた「月の都」のオカルトボールについてはいつそれを手にしていたか(あるいは「 すり替え 」られていたか)さえも判らなかった。


月の都のオカルトボールはあんたの物じゃ無いのね? どういうことだろう

 (博麗霊夢、対戦モード・対菫子戦勝利セリフ、『深秘録』)


さらにオカルトボール争奪戦の喚起に有利に働いた都市伝説もまた菫子が広めたものではなく、菫子やあるいはその事実に行きついた霊夢などによってこの「異変」には菫子の意図の他の「何か」が存在している事が見出された。

そして『深秘録』以後もオカルトボールを手にしていた霧雨魔理沙などを通して『東方紺珠伝』へと物語が連結するのである。


なお、『儚月抄』では「表」の月面に建てられた地上の人々による月面着陸の証である国旗が引きぬかれて地上に投げ返されるという、「裏側の月」からのものと思われる「表の月」への介入の様子が描かれている。

本来なら「 月の都の人は表の月を弄れなかったはず 」(八意永琳、『儚月抄』)であるが、一方で玉兎たちが表の月面に設置された地球-月間の距離を観測するためのレーザー反射鏡について、「 位置をずらしたりして遊んでいる 」(綿月依姫、『儚月抄』)ともあり、両者は完全に触れ得ない存在同士という訳でもないようである。


また旗が投げ返されたという事実から、永琳と蓬莱山輝夜がその対話の中で「 月の民同士 」による月の都の支配権をめぐる「 月面戦争 」を予想し、月の都からの介入も予測していた。


その他のオカルトボール編集

「黄泉比良坂」のオカルトボール編集

七つのオカルトボールの内「月の都」以外にもその出所に疑問をもたれやすいものとして「黄泉比良坂」のボールがあるが、こちらは実際に「黄泉比良坂」の謂れを引き継いだ土地とそこに霊験を備える神社とがあり、この謂れと信仰とを介することで「黄泉比良坂」のパワーストーンを入手することが可能である。


「黄泉比良坂」はイザナギなどの日本神話の根幹にかかわる存在たちにも関連しており、上海アリス幻樂団の他の作品を覗くとき、神話的な「霊験」を纏うオカルトボールは、一つの「イザナギオブジェクト」としての性質も備えているのかもしれない。


幻想郷のオカルトボール?編集

作中、「 幻想郷版のオカルトボール 」が登場しとある経緯から菫子がこれを手に入れるが、これは華扇らが企図したオカルトボールを巡る策に同調したマミゾウが用意した偽物であり、マミゾウ配下の化け狸がオカルトボールに化けたものである。これが華扇らの策を大きく後押しすることとなった。

そしてこの物語が『深秘録』における菫子を主人公としたストーリーへと繋がっていく。


菫子が『深秘録』で手にした「 幻想郷のパワーストーン 」は霊験の有無どころか石ですらなかったが、「人間を化かすもの」という意味ではそれが今日でも起こり得る、実に幻想郷的なものであるとも言えるだろう。


キャラクターたちの反応編集

先述のように各々の理由からオカルトボールに触れた幻想郷の面々であるが、その捉え方も多様である。


例えば白蓮はオカルトボールやそれを巡る争奪戦に否定的な感情を示し、それを封印管理すべくこの「異変」に参加した。後に白蓮と対峙した神子はこの白蓮の反応を「 お前らしい 」と評している。


白蓮「 このボール 無為の好奇と深秘で出来ているんですもの

神子「 好奇と深秘……か お前らしい見え方だな


またにとりはオカルトボールをめぐる流行を一種の商機ととらえ、この売買に乗り出している。にとり自身は都市伝説を信じることは無かったが、オカルトボールに関わるべくそれを独自の科学力で具体化し、これを使用することで都市伝説と絡み合うオカルトボール争奪戦に参加した。

ただしその結果としてにとりもまた都市伝説にとりつかれている。


オカルトボールを巡る物語は、キャラクターによって参加動機や視点も異なるものとなっているのである。



そして終盤ではオカルトボールの危険性を見出した霊夢が、菫子がその危険に手をかけてしまう前に保護すべく急いで菫子を追った。オカルトボールの性質や意味するところについては先述のように複数のキャラクターがそれぞれのアプローチからそれを見出しているが、特に霊夢は結界の巫女としてその緊急性と菫子以外の意志の介在の理解に至っており、その危機感も高いものとなった。

その様子は霊夢ルート終盤のキャラクタールート紹介をはじめ同ルートの霊夢の台詞に描かれており、霊夢の強い意志が現れている。


オカルトボールが導く外の世界編集

オカルトボールはそれを集めきることで外の世界へと飛ばされることとなる。

このオカルトボールの性質によって、異変に関わった一部の幻想郷の面々は「外の世界」を体験することとなった。


近年の来訪者にして元々外の世界との行き来に支障のないマミゾウなどの例外もあるが、往々にして今現在の外の世界を体験することは多くのキャラクターにとって初めての体験であった模様である。


例えば魔理沙は夜の外の世界(ビル群)における照明のきらめきなどを通して「 眩しくて綺麗な場所だった 」と肯定的な感想を抱き、妹紅は自身が知る世界の様子からの変化の様子に素直に驚いた。華扇もこの機に乗じて「探し物」を捜しに出かけるなどそれぞれの様子で思い思いに過ごしている。


仕方が無いか あれから千年近くも経ってるもんなぁ 」(妹紅、『深秘録』)


一方でその「 絡みつくような大量な霊気 」に一輪は不快さを感じ、あるいは世界そのものが自身を否定するかのような感覚を感じている。

また華扇もその空気感には良い感想を抱いていない様子である。


相変わらずこっちは肌に合わないわね 」(華扇、『深秘録』)


ただし一輪については直接体験したものではなく、まるで見た夢を回想するような状況で語られるものとなっている。


逆に外の世界から幻想郷に憧れていた菫子からは幻想郷について「 美しい世界 」との評が語られている。

その一方外の世界では失われた妖怪の恐怖が幻想郷では現実のものであるため、菫子に対する華扇やマミゾウの策は大いにハマることともなった。

さらに技術的な理由から幻想郷では受けの悪かったこいしの都市伝説についてこいしが望む最高の反応を示したのも菫子であり、『深秘録』では両者の世界の違いによる要素も随所で登場している。


『東方紺珠伝』におけるオカルトボール編集

夢は具体化するんですよ 貴方も体感したんじゃ無いですか?

  都市伝説(オカルトボール)で、ね

     (ドレミー・スイート、『東方紺珠伝』。魔理沙に対して)


『深秘録』ではその元々の経緯などが不明なものであることが語られたオカルトボールであるが、『紺珠伝』ではさらに月の都のオカルトボール(パワーストーン)などを通して上記の菫子以外の意思について語られた。


月の都のパワーストーンは元々「月の都」を守るためのものである。

『深秘録』以前の当時、月の都は純狐の攻撃に晒されていた。

純狐は今回の攻撃に際して「月の民」が手が出せない方法を使用して月の都を攻撃したため、月の都はその侵攻に対して都の凍結と住人の「夢の世界」への避難という消極的な処置しか取る事が出来なかった。


しかしこの方法は長期にわたって維持できるものではなく、特に住民たちを夢の世界に置いておくわけにはいかなかった。「 長い夢 」はその精神に悪影響を与えるためである。

月の「 賢者達 」はこの危機に際してとある計画の立案へと至り、その計画は「 幻想郷遷都計画 」(または「 月の都遷都計画 」)として結ばれた。ただし本計画は「 保険」である。


これは月の都を幻想郷へと移し、純狐の攻撃を回避するというものであるが、この実行の下準備のために稀神サグメによって生み出された特殊なパワーストーンが使用された。

一連のパワーストーンはサグメが自身の能力を使ってつくりあげたものあり、「 言葉で世界を変える力 」を備えていた。


月の都の遷都にはいくつかの課題があるが、その一つに地上に月の都を現わす必要性がある。そのためにサグメが利用したものが、幻想郷の性質と都市伝説としての「アポロ計画の捏造」の二種であった。


サグメが生み出したパワーストーン込められた「 言葉で世界を変える力 」とは「 存在しないはずの噂話 」を具体性を伴って顕現させる力であり、これは「 都市伝説 」を具体化させるものでもあった。

その様子は『深秘録』作中で描かれた通りのもので、都市伝説たちは時に力となり、時に相手に取りつき、時には成長するなどして様々に具体化した。


しかし多様な都市伝説の具体化の発生はサグメの目的ではない。サグメが流行を求めた都市伝説はただ一つであり、それが「 アポロ計画陰謀論 」である。

これはかつてのアポロ計画では人類は月で何らかの異生体と接触しており、「 NASA 」や政府がそれを隠蔽している、とする都市伝説・オカルト的なストーリーの一つである。

概ね異生体は高度な文明を持つとされており、都市伝説の上では漠然としたものであっても「月にある文明」が想像もつかない幻想的な世界であれば、その様子は「月の都」とも合致する。


都市伝説を具現化させるパワーストーンの所持者を通してその影響下にある幻想郷で「 アポロ計画陰謀論 」が流行する事は、同都市伝説で語られる「 月の文明 」が幻想郷に具現化されることを意味し、幻想の世界における「月の文明」である月の都が幻想郷に顕現することを意味する。

これがサグメがパワーストーンを介して行おうとした遷都計画の具体的な手段である。


あの都市伝説が広まったとき 遷都は現実化し、危機は回避される

     (サグメ、『紺珠伝』。元のセリフでは「あの」の部分に強調のルビがある)


かつて月の都において地上から月へと至ろうとした「 アポロの脅威 」は取り除かれた(『儚月抄』)が、今度はアポロ計画にまつわる「 」を利用することで月の都を救おうとしたのである。


パワーストーン・オカルトボールに関連した『紺珠伝』に至る経過としては次のような形となる。

状況作品時系列視点・場所
月の都、純狐の攻撃に効果的な対策が取れず『深秘録』・『紺珠伝』以前月、月の都
都の凍結・住民の退避月の都
賢者達 」によって保険として遷都計画が立案
サグメ、都市伝説を具現化させるパワーストーンを生み出す
幻想郷で都市伝説の具現化が蔓延する『深秘録』周辺幻想郷(地上)
オカルトボールとして具体化し、結界を破る力が増す『深秘録』
菫子が幻想郷と外の世界との境界を無くす行動に出る(霊夢らによって未然に防がれる)『深秘録』終盤幻想郷、外の世界
魔理沙、月の都のオカルトボールを回収する『深秘録』後、『紺珠伝』導入幻想郷
永琳、月の都を救うべく行動を開始する
霊夢、魔理沙、東風谷早苗鈴仙・優曇華院・イナバらがそれぞれの理由から(結果的に)月の都を目指す『紺珠伝』幻想郷~月の都

そして『紺珠伝』本編へと至る。


ただしパワーストーンやオカルトボールを生み出す起点となった本計画にはもう一つ要点があり、月の都を幻想郷に現すだけでは計画は成し得ない。

その要点こそ地上の「 浄化 」であり、穢れを生み出す地上の生命の「 殲滅 」である。幻想郷側で月の都が顕現しても、凍結を解除し月の民を移住させるためには重大な課題があるのである。


本計画に関連して玉兎らによる地上の調査も平行して行われていたが、計画の実行に当たったサグメは本計画に乗り気ではなく、いざ遷都となってもそれを望む民はいないだろうと想像されていた。本計画に携わった月の民(とその協力者)は得てして建設的なモチベーションに乏しい。


『深秘録』においてオカルトボールは幻想郷と外の世界の二つの世界の垣根を排除するものとして機能したが、その存在の大本の目的が語られた『紺珠伝』では幻想郷を月の都とするというこちらもまた世界観そのものに関わる要素を備えていた。


忘れられた者たちの存在が危うくなったりはたまた経過の如何によっては地上の生き物が滅ぼされかかったりと、オカルトボールは少女たちが抱きかかえられるサイズの小さな玉でありながら出どころの月の都の技術らしい見た目に不釣り合いな超常的な能力を有していたのである。



なお同作で語られたところによると月の都のパワーストーンには『深秘録』での霊夢や『紺珠伝』での魔理沙のほかに興味を示したキャラクターがおり、その人物はオカルトボールと都市伝説とによって幻想郷にもたらされた「 混乱 」の肯定的な側面を見出している。

そしてそれがもたらす新たな変化を期待している。


その後のオカルトボール編集

『深秘録』や『紺珠伝』以後もオカルトボール・パワーストーンがもたらした「都市伝説」の具現化は継続しており、幻想郷ではこれにまつわる新しい波乱が生まれているようである。

オカルトボールが生み出される要因と対峙することともなった『紺珠伝』を経て以後も、複数の作品でその「 混乱 」がまだ続いている様子が描かれている。


オカルトボールの消失と都市伝説編集

先述の『深秘録』以後の時間にして、『紺珠伝』を経た後の時間の物語であるPS4版『深秘録』EXTRAストーリーでは、オカルトボールは消失した事が語られている。同作中のエピソードによれば、菫子のもたらした問題や月の都の問題への対処のひとまずの完了、あるいは月の問題に対して対処した地上と月の両者において「 中立 」の立場をとる永琳らの永遠亭の動きがこの間にあった様子である。


それに伴い先述のような争奪戦などの「 オカルトボール騒ぎ 」(白蓮、PS4版『深秘録』)自体は落ち着いた様子であるが、それでもなお「都市伝説の具現化」はいまだ見られており、霊夢によれば「 むしろ浸透している 」ともいえる状態にある。


オカルトボールの消失はその発生から幻想郷への影響などの流れが『東方香霖堂』(『東方外來韋編』連載版)でも語られており、同作では森近霖之助の視点を通したオカルトボールとオカルトをめぐる騒乱の様子が語られている。

また霖之助は上記の『深秘録』で解決者としても関わった華扇や霊夢と、さらに異変の首謀者ともなった菫子の両者からオカルトボールなどの事実について情報を得ているなど幻想郷側で得ることのできる範囲の情報の真髄に近い位置にある。

加えてオカルトボールの根幹にあるものが幻想郷以外(月の都)に由来することを教えられるなど、「 幻想郷のオカルト騒ぎ 」にまつわる情報の精度も異変などに関係した面々たちとの接触によって高まっている。


この他の場面でオカルトボールが語られる機会として、魔理沙と月の民との関係を通したものもある。

先述のように『紺珠伝』への導入に際して魔理沙がオカルトボールを捜している様子が語られているが、『紺珠伝』とはまた別に、魔理沙が元月の姫である輝夜個人について言及した機会において、輝夜の保有する「 龍の頸の五色の玉 」についてこれはオカルトボールなのではないか、とする場面がある。

そしてオカルトボールを集めたら輝夜に見せに行く、ともしている。

ただし魔理沙はそれぞれの「玉」の数の違いにも言及しており、両者の同一性を魔理沙がどこまで本気にしているかは不明(『外來韋編』)。


様々な作品における「都市伝説の具現化」編集

オカルトボールは都市伝説の発現に密接に結びついているが、白蓮が都市伝説を調査したところによれば、幻想郷で発現する都市伝説は次のような特徴を持つ(いずれもPS4版『深秘録』)。

  • 容易に操作できる
  • 人為的に操作する場合 その気質に合った噂しか扱えない
  • 具体的な内容が無かったり何らかの条件を満たす一部の都市伝説は具現化しない
  • 満月の日には影響が強く出る

また神子も『深秘録』以後もオカルトボールを調べており、PS4版『深秘録』では月の都のオカルトボールの特異性について月の関係者に直接問うている。


月の都のオカルトボールな あれはおかしいな

  まるでホワイトホールのようにオカルトパワーがわき出ている

  まさに無限だ 」(神子、PS4版『深秘録』)


都市伝説は『深秘録』以外でも日常生活の場面でも影を落としており、オカルトボールの根幹である「噂」がもたらす「都市伝説の具現化」という現象を前提とした文脈では先述の『深秘録』の前後の時間において人間妖怪問わず広く「噂」に敏感になる様子も描かれている。


例えば人間の里に「世界の終わり」の噂が広まった際は、霊夢や魔理沙は都市伝説の具現化が蔓延する幻想郷にあってはそれが実現するのではと強い危機感を感じ、それぞれが調査に乗り出した。

この都市伝説については霊夢や魔理沙とは別に、同じくこの都市伝説に触れて調査を行っていた射命丸文が自らの新聞でこれを打ち消す記事を執筆している。

趣旨としては近年蔓延している外の世界における「 150年近く前 」の「 嘘の予言 」に踊らされることのないように、とのものであったが、これ以前から不安に苛まれていた人々や危機感から記事紙面の細部まで目を通す余裕のなかった霊夢や魔理沙などは文の執筆意図とは別の形でこの記事を捉えることとなった(『東方鈴奈庵』)。


文はこれ以後も都市伝説騒動を追っており、取材活動を通して菫子をはじめヘカーティア・ラピスラズリと接触してインタビューを行った他、ヘカーティアとさらなる追取材を通してはサグメの存在へと辿り着いている。これは『紺珠伝』で直接月に関わった面々以外や一部の識者を除いてサグメへと行きついた数少ないケースである。

文によればサグメの能力による都市伝説の具現化は「作り話と分かる話ほどに実現しやすい」というもので、フィクション的であればあるほど、「 ありもしない 」もでであるほどに具現化しやすい。

文は一連の都市伝説の怪異を「 都市伝説異変 」ともしている(『東方文果真報』)。

鈴仙によればその具現化に向かう反応は非常に敏感かつ強力な実現性を持っており、例えば鈴仙の「耳」にまつわるささいな誤認が鈴仙が関わることとなるオカルトである「くねくね」の実現に結びつくなど出所不明にして噂自体も僅かなものであってもそれを具体化している(PS4版『深秘録』)。


『深秘録』や『紺珠伝』などで見られたものとは別にこの「噂」を利用して自らの怪異を発現するものもある。その最たるものが、封獣ぬえである。

元々ぬえの根源である「」という存在が人々の「噂」や「噂」によって膨れ上がった言い知れぬ不可解、「 正体不明 」の集合体であることもあり、ぬえは自らの姿を明かすことのないままに『深秘録』で他の人間妖怪たちが行ったように自分に合った都市伝説を備えて不可解蠢く幻想郷に怪奇と恐怖をもたらした(『鈴奈庵』)。

ぬえとは異なり怪異をもたらすものではないが、白蓮は自らが関わった都市伝説を個人的にも気に入っており、異変が収束して都市伝説の具現化が解かれる前にそれを十分に楽しんでおこうとする様子も見られる(PS4版『深秘録』)。


霊夢もまた監視の他に都市伝説そのものや都市伝説の影響を利用しようと考えることもあるが、後手に回って結局損をしたり他者が利益を得た後で残りの副産物の後始末に骨を折ったりすることが多い。

鈴仙などは霊夢について「 異変の拡散のために良いように使われて悪用しているのはあんた 」としているなど、都市伝説騒動を通しても霊夢の目論見というものが上手くいかない様子が語られている。


人間の里などでは都市伝説の具現化は本居小鈴の言葉に見られるようにそれぞれの体験に帰結するもので客観的に共有し得る実在性を明示できるものではなかったが、稗田阿求はその調査を通してその「 実在 」を見出しており、以後阿求は都市伝説関連の事象について「 幻想郷のルールにそぐわない怪異 」としてこれらを記録している(『鈴奈庵』)。


またそもそもの都市伝説の影響の拡大について、マミゾウは、妖怪達も大いに利用した一連の都市伝説の蔓延には、しかし個別の妖怪たちの動向とは別にそもそも利用価値のある噂を密かに流布させている何者かの意思があるのでは、と感じてもいる。

それは『紺珠伝』で語られたような月の勢力が目的とする「月の都のため」というものとは全く別の、いわば「幻想郷のため」(幻想郷の「 活性化 」)といえるものである様子で、マミゾウはその別の意思のようなものがもしも仮にあるとするならばとした上で、その意思の不可視性と影響力の大きさに畏怖の念をおぼえている(『鈴奈庵』)。


都市伝説異変そのものは、先述のように『紺珠伝』でも語られた通り「 月の都のトラブルが原因 」である(鈴仙、PS4版『深秘録』)。鈴仙によればすでに都市伝説は本来ものから「 牙が抜かれた 」状態にありしだいに異変も沈静化するであろう(PS4版『深秘録』)とのことであるが、各作品で語られる都市伝説の怪異はその後も収まることなく、『紺珠伝』などの以後も、特に都市伝説利用者たちの影響を通して『東方憑依華』などに物語が結ばれ、サグメや永琳の「 」をからは離れた新たな都市伝説の影響が語られることとなる。


これはオカルトボール騒ぎよりも重大な被害をもたらす可能性が高いものだ

(神子、PS4版『深秘録』。同作エピソードから続く新たな怪異について)


都市伝説への対抗編集

都市伝説への対抗手段は第一に知識である。

菫子によれば、オカルトの影響を回避する手段は「 オカルトを知り尽くすこと 」(『香霖堂』)。


都市伝説が意味するものやストーリーを知ることで対策を講じることができ、実際の行動としてそのストーリーを「解決」へと向かうことのできるものとする文脈へと記述を変えるのである。

例えば『深秘録』以前に霊夢が行った「足切り婆」への対処(ストーリーに怪異を博麗神社へと誘導する一文の付与。『茨歌仙』)や「こっくりさん」の噂の上書き(「 無力化 」とも。『鈴奈庵』)などは危険性のある都市伝説に対する有効な手法である。

魔理沙などは壺を売りつける霊感商法めいたことでこれに便乗してもいる(『鈴奈庵』)。


都市伝説の蔓延による「不安」の拡大への対処もそれぞれで、先述のような霊夢や魔理沙のアクションの他、命蓮寺が地蔵菩薩像を新たに置いて人心の乱れを除こうとする様子や竹林の薬売りを通した「 現代医学 」による対処が人々の間で語られたりしている。


決闘中に菫子が使用するオカルトボール編集

『深秘録』決闘中にも菫子が技の一種あるいはスペルカードなどを通してオカルトボールを使用する。


例えば「オカルトアタック」によるモーションではオカルトボールがダイレクトに使用されるようで、菫子が両手を斜め下に降ろすと菫子の周囲を囲むように7つのオカルトボールが出現し、菫子がその両手を上にあげるとオカルトボールたちが相手に向かって突撃するという攻撃方法をとる。


怪ラストワードの一つである<*現し世のオカルティシャン*>では複数のオカルトボールが画面外から菫子にあつまり、その後菫子が画面を横断する規模のレーザーを順に発射する攻撃をとる。

これは比那名居天子の<「全人類の緋想天」>の攻撃方法の一つである太い直線レーザーのようなモーションにも似ている。


さらに上記のものとは別の菫子の怪ラストワードの一つである<*深秘のエソテリックセブン*>(CPU専用怪ラストワード)では、オカルトボールが出現し、さらにゲームシステムにおける後述の「ミステリースポット」の効果が発揮される。

同怪ラストワードでは菫子が『深秘録』冒頭霊夢ルートで現れたシルエットの状態となり、周辺にオカルトボールが浮遊する。そしてそのオカルトボールを介した「ミステリースポット」の効果戦闘画面全体にそれぞれ生み出し、さらに本怪ラストワードオリジナルの攻撃方法を加えた攻撃を展開する。


ミステリースポットは個別順番に展開されるが、しだいに発動時間間隔は短くなり、以前の攻撃オブジェクトがフィールド上に残っている状態で次のオカルトボールの攻撃へと移行するようになる。やがて複数の攻撃オブジェクトが画面上を占めていくのである。

最終的にはほぼ途切れることなくオカルトボール・ミステリースポットの攻撃が連続するなど、回避主体のSTGの弾幕を彷彿とさせる画面構成となる。

詳細は「*深秘のエソテリックセブン*」記事も参照。


なお、ストーリーの都合上怪ラストワード<*深秘のエソテリックセブン*>に出会い、その弾幕構成を体験できるのは終盤の霊夢ルートだけである。これは例大祭版『深秘録』だけでなくその後に展開されたPS4版『深秘録』でも同様である。


ゲームシステムとしてのオカルトボール編集

『深秘録』では、ゲームシステムとしてもオカルトボールが登場する。

主にストーリーモードのものと対戦モードのものの二種類がある。


共通する部分としては必殺技の使用制限・性能や怪ラストワードの使用条件などにその時点でのオカルトボール保有数が関わっている。例えば怪ラストワードの使用にはオカルトボールを四つ以上保有してる事が条件となっている。


ストーリーモード(決闘時)のオカルトボール編集

ストーリーモードにおける決闘中、相手が怪スペルカードや怪ラストワードを発動するとその間に何らかの形でオカルトボールが出現する。


その際にはオカルトオーラが周囲に発生しており、オカルトボール本体やこのオカルトオーラに触れるとオカルトゲージを減少させる事が出来る。

オカルトゲージとは怪スペルカードなどの耐久力であり、ゲージは接触の度合いなどによって減少し、0になると相手のスペルカードを中断させる事が出来る。

表示はプレイ画面中央上部で、キャラクターのライフゲージに挟まれた位置にある。


怪スペルカードには基本的にひるみが無いため、オカルトゲージを奪い切って行動を中断させることは戦術上重要である。ケースによってはオカルトゲージを0にするまで攻撃判定すら出現しない、いわば耐久スペル状態のものもあるため、このような場合では如何に相手の攻撃を回避しつつ的確にオカルトボールに接触するかが重要となる。


対戦モードのオカルトボール編集

「オカルトシステム(VSモード)」とも。

戦闘中に時折オカルトボールの出現カウントが表示され、カウントが0になるとオカルトボールが出現する。同時に戦闘フィールドに「ミステリースポット」が出現する。

オカルトボールは画面中を緩やかに跳ねるように動き、キャラクターに接触するとはじかれるように動く。一定の接触で消えるが、この際より接触の多かったキャラクターが当該のオカルトボールを入手できる。


七種類のミステリースポットの詳細は「東方深秘録」記事を参照。


PS4版『深秘録』EXTRAでは編集

PS4版『深秘録』におけるEXTRAストーリーでは先述のようにオカルトボール消失後の物語であることもあってシステムが変化しており、オカルトボール自体は登場しないもののスペルカード発動中などに発生するCPUの周辺を球状に覆う透明なものにオカルトゲージに影響する機能がある。


透明色が青色を帯びる際はオカルトゲージの削りや与えるダメージは鈍く相手も怯むことはない。

しかし一定の攻撃モーションの後などこれが赤色の透明色に変化し、この間は効果的に相手のオカルトゲージも削ることができるようになる。

オカルトゲージを削り切ると球体は一時消失し、ひるみ状態となる。

これは『深秘録』本編にみるオカルトゲージを削り切った状態と等しい。

ただし『深秘録』同様に球体やオカルトオーラなどではなく特殊なターゲットに攻撃をあてることでオカルトゲージを削るというものもあり、例えばPS4版『深秘録』では神子の<「死生有命 ~自らの意思で最期を選べ」>などがそれにあたる。


PS4版『深秘録』でも例大祭版『深秘録』と同一のエピソード(オカルトボールが現存している時間)や先述の対戦モードなどでは例大祭版『深秘録』と同様にオカルトボールの存在を前提としたシステムが採用されている。


その他の場面では編集

ゲーム作品や各種書籍作品以外の場面でのオカルトボールの登場機会としては、『深秘録』のサウンドトラック作品である「深秘的楽曲集 宇佐見菫子と秘密の部室」のジャケットイラストに菫子と共にオカルトボールらしきものが描かれている。

菫子が保有する紫色の水晶玉の可能性もあるが、そのカラーリングや大きさなどはオカルトボールにも類似している。


またオカルトボール自体が登場したものではないが、広く上海アリス幻樂団作品を見るとき、『深秘録』以後に発表された作品である「ZUN's Music Collection」第八弾作品である「燕石博物誌」のブックレット表紙デザインが公開された際、ファンの間では紫色の服装のマエリベリー・ハーンメリー)の自身の膝を両手で抱えた様子が、同じく紫系統の色のオカルトボールにも見えたことから、ファンの間で「オカルトボールを抱いたメリー」という想像が広がったこともあった。

詳細は「燕石博物誌」記事も参照。


なお、「燕石博物誌」ブックレットにみる宇佐見蓮子とメリーの二人の背面に描かれた同種の半透明な大きな球体の意匠の数は七つ。同じデザインで二人が描かれていない裏表紙が確認しやすい。


オカルトボールに関わった菫子はその後幻想郷の事柄を外の世界側のSNSで発信しており(『文果真報』)、「燕石博物誌」はメリーが覗いた異世界を他者に伝えるための書籍(「 同人誌 」)である(「旧約酒場」)など、ファンの間での多様な想像によっては菫子、蓮子、メリーの三者に見る他者に指向するという点で「燕石博物誌」と特筆点とした両者のかかわりを見出すものもある。


二次創作などでは異なる二つの秘封倶楽部を結ぶ具体的なアイテムとしてのオカルトボールが想像されることもあり、秘封倶楽部などの言葉とも併せて、オカルトボール自体もまた多くが語られていない上海アリス幻樂団作品全般を結ぶアイテムの一つとして見出されることもある。


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