鈴奈庵鈴仙
すずなあんれいせん
東方Projectに登場する鈴仙・優曇華院・イナバが書籍作品『東方鈴奈庵』に登場した際の姿を描いた作品に用いられるタグ。
同作に登場した際の二つ名は「地上のムーンラビット」。
2017年3月現在、主に同作に鈴仙が変装した姿で登場した際のものを指す。
『鈴奈庵』での鈴仙
『鈴奈庵』では、鈴仙は薬売りとして人間の里に入り、薬と一緒にお手製の置物を売り込んでいた。
しかしある日の行商の際、霧雨魔理沙によって人里の中で正体を看破され、「 ダッと (脱兎) 」のごとく逃亡。
人里の外と思われる場所まで全力で逃げた。
「 そりゃ逃げるわよ 暴徒が襲いかかってきたら 」(鈴仙、『鈴奈庵』)
人里の外と思しき場所まで逃げに逃げ、人気のない場所で追いかけてきた魔理沙とともに息を切らしつつ座り込んだ。そして魔理沙に持参の竹製と思われる水筒の水を分け与えつつ語ったところによると人里での薬の販売は真っ当なもので、新たに売り込んだ置物もきちんと効果のあるものである。
特にこの置物は「 永琳様の手を借りずに 」自身が開発した自信作であった。
開発には「 月の科学 」に基づくものも含まれる様子である。
そして鈴仙は真っ当な商売で人々に貢献する事の意味と今日の永遠亭の独自のスタンスがどのように関連しているかなども語った。
これは「 地上の民として暮らす 」(『東方儚月抄』)事を決めた八意永琳らの『鈴奈庵』での今を語るものでもある。そして永琳たちが今日の幻想郷で様々な存在とともに生きていくためのやり方にして互いのために働くという地上の民の「 勤め 」の実践のあり方の一つでもある様子である。
その後も人里に薬売りに訪れる様子が描かれているが、こちらの機会でも鈴仙の元に月の都の人々の情報を求めに来た魔理沙に人里の中でつかまっており、逃げようとしたところをやはり再び里の中で正体を暴かれそうになって大慌てしている。
この他の機会としては、射命丸文が語る幻想郷の人間の里事情に絡んで、イメージ的に「 兎 」勢力の象徴としても後述の変装した姿での鈴仙が登場している。
『鈴奈庵』以外では
『鈴奈庵』以外の作品で本衣装による鈴仙が登場するケースとしては、鈴仙が独自のストーリーを伴ったキャラクターとして追加されたPS4版『東方深秘録』などがある。同作の一場面にもこの薬売りの際の鈴仙の姿が登場する。例えば対戦モードの対戦前のポージングの一つにこの姿が見られており、背を向けた薬売り姿の鈴仙が、笠を外しつつわずかに振り返ると同時に『花映塚』等でも見られたような、本作デフォルトの服装であるブラウス姿に変化する。
姿だけではなく薬売りの際のアイテムも使用しており、例えば必殺技の一つである「メディスンチェスト」は鈴仙が薬売りの際に使用しているつづらを投げつけるというアクションである。
加えてPS4版『深秘録』初回盤に付録されたサウンドトラックである「深秘的楽曲集・補」にも薬売りの際の笠やつづらが描かれているなど、『鈴奈庵』登場時の鈴仙の姿は鈴仙の他の服装と並んで鈴仙のアイデンティティの一つともなっている様子である。
また先述の文とも関連して、文による「文々春新報」の個別記事にも複数の場面でこの服装による鈴仙が登場している。
ただ、本来人間の里に入る際の変装の意味合いもあるこの服装で、人間の手にも届けることを想定したこの誌面に笠を外した(兎の耳が見えた)変装姿で「 撮影 」(挿絵)に応じている点には幾許かの心配も感じさせる。誌面を通した状態では他者の認識をずらす能力も届かないだろう。
その実、文の取材に応じて月時代を回想したり撮影の際にポーズをとる鈴仙は楽しそうなので、案外問題ないのかもしれない(『東方文果真報』)。
変装時
大きな笠と大きなつづらを備え、行者のようないでたちに変装している。その長い髪は特徴的な耳とともに笠の中に纏めて隠しており、場面によっては普段は長い髪に覆われている後ろの首筋などものぞくことのできるものともなっている。
エピソード中、一度笠が暴かれ耳とともにその腰よりも長い豊かな髪が露わになっており、その後落ち着いたところで再び笠に納められるようまとめ直す様子が描かれている。鈴仙は手慣れた様子でそれを行っているが、その髪の量から察するに、整え直すのは大変そうである。
これとはまた別の作中機会では笠から耳がのぞいており、寒い気候の時期と思われる場面では襟元にマフラーのようなものを巻いているなど、初登場時とはまた異なる様子も見られている。
PS4版『深秘録』のドット絵などでは後ろ姿で笠を外した状態の鈴仙が描かれており、髪が笠の中でどのようにまとめられているかも見ることができる。これを見る範囲では、お団子状にアップにし、後頭部寄りの位置にまとめている様子である。
また本ドット絵は、後ろ姿ではあるものの、足元までを含めた全身のカラーが描かれたものでもある。
『鈴奈庵』作中でも見られるような笠を外した状態と髪を下ろした状態というセットは文々春新報掲載の写真にも見られている(『文果真報』)。
この変装姿はそれ以外の鈴仙に見られるようなスカートによる服装ではないため、例えば『鈴奈庵』作中でも見られるように椅子に座った状態で片足(足首付近)をもう一方の足(腿)に乗せたり、そのまま曲げた方の足(膝裏付近)に肘を下ろして思索にふけるなどのポーズもスカートを気にせず安全にとることができる。
カラーリングは『鈴奈庵』単行本第三巻(通常版)裏表紙には薬売り姿のバストアップが描かれており、それによれば全体的に紫を基調としたもので、背負うつづらを留めるバンド様の止め帯も紫である。
二次創作などに見るカラーバリエーションについては後述。
この他作中ではエピソード中に笠をかぶった全身像(正面)と同単行本設定資料に笠を除いた正面からの全身像が描かれている。
変装については本人曰く、「 精一杯人間に変装している 」とのこと。
『儚月抄』では八雲紫が永琳らと比較して「 兎 」については「 あれは人間になりすますには無理がある 」とも評しており、鈴仙も人間の里に入る際の決め事を前に苦労している模様である。
『鈴奈庵』では変装も手伝ってか、あるいはその能力で他者の波長を操っていたためか普段の鈴仙とは異なる、どことなく不気味な雰囲気も漂わせる妖しさも醸し出していた。
『鈴奈庵』単行本巻末設定資料においても変装時と通常時では表情が描き分けられているが、変装時の妖しげな様子には、その欄外にて鈴仙の普段の実態をよく知る因幡てゐがツッコミを入れている。
通常の服装
『鈴奈庵』においても他エピソード中に上記の変装をともなう服装ではない姿でも描かれており、いずれもイメージ的なカットではあるが『東方花映塚』等で見られたようなブラウス姿(永遠亭の活動について語られる場面、永琳のお仕置きを受ける場面)や『東方永夜抄』等で見られたようなブレザー姿(『東方鈴奈庵』限定版裏表紙)でも登場している。それぞれの作品に登場した際の鈴仙の衣装については「鈴仙・優曇華院・イナバ」記事の「容姿」の項目を参照。
鈴仙は自身も住まう永遠亭が外部に開放された今日、師である永琳の手による薬を売りに人里を訪れるようになった。
稗田阿求曰く、「 怪しげな薬を大量に持ち歩く事でも有名 」。
仕事を終えると「 人間を避けるように 」永遠亭へと帰ってしまう様子である(「幻想郷縁起」、『東方求聞史紀』)。
ただし『鈴奈庵』によれば薬の製造や販売に関わる者たちが人間でない事は「 知らない約束になっている 」とのことである。
鈴仙が主人公として描かれている『東方儚月抄 ~ 月のイナバと地上の因幡』においても鈴仙が人里に薬を売りに来る様子が描かれている。
この際には置き薬の補充という定期的な巡回サービスが行われている様子も描かれており、同作中では顧客として上白沢慧音の勤める寺子屋と阿求の邸宅が登場している。
なお『鈴奈庵』では「鈴奈庵」にも置き薬の交換に訪れている。
鈴仙は様々な人間と顔を合わせなければならない薬売りについて億劫に感じている様子で、時には「憂鬱な時に」として渡されたらしい永琳の手による特別な薬を飲んだりもしている。
またそのモチベーションの低さは販売時の対面の際にも現れているようで、薬の販売に際しての説明についても一方的になりがちであった。
相手が説明を理解しているかどうかなどについては気に留めていなかった様子である。
人々からは「 わけがわからないことを喋っている兎 」、「 少し気味が悪い 」と言われており、鈴仙もそのように評価されている理由について、慧音に説明の際の一方通行すぎる様が要因であると指摘されるまで気づかなかった。
慧音には「 あいかわらず意味不明の単語ばかりでわけがわからないな 」とはっきり言われている。
同作ではてゐが薬売りの背負い籠にサボりを兼ねてまぎれ込んでいる。
また『鈴奈庵』では鈴仙が販売する具体的な薬の種類も登場しており、その薬包と思しきものには製造者について「 兎角同盟製薬 」との銘がある。
この名称にみる兎角同盟は、薬売りとはまた異なる鈴仙の活動の一つでもある(『東方文花帖』)。
また『文果真報』の記事では、置き薬の販売を行っている組織として「蓬莱薬局」が存在し、評判や販売方法からして同一の存在と思われる。
原作漫画中のモノクロでの表現から想像される風合いや薬売りなどのイメージから白色を基調としたカラーリングで書かれることもある。
このカラーにまつわる多様な想像は鈴仙の変装衣装について登場当初の作中ではカラーでは描かれていないことにも由来しており、詳細なカラーリング未発表の段階から二次創作でも原作の作画表現の情報を基に多様な想像がなされていたことにもはじまりをもつ。
白色基調の服装によるデザインとしてはpixivには次のような作品が発表されている。
最右の作品は原作にも見られるようなモノクロ的表現であり、こちらの作品のようなモノクロに見るカラー表現から具体的な様々なカラーリングの在り方が想像されていた。
なお、先述の通り第3巻の裏表紙にて、バストアップだけではあるが公式カラーが発表された。
『鈴奈庵』での変装した鈴仙のように書籍作品においてその具体的な配色などが当初発表されず、二次創作において原作におけるモノクロの様子から髪色や服装をはじめ関係する具体的なカラーリングが多様に想像されたキャラクターとしては、茨木華扇(『東方茨歌仙』)などのケースがある。