「 明るいニュースの号外が舞う
それは、民間人を乗せた月面ツアーのニュースだった
永遠の浪漫、車椅子の宇宙
――秘封倶楽部に新しい目標が生まれる 」
(上海アリス幻樂団公式ページ、音樂CD紹介ページより)
概要
大空魔術とは、同人サークル「上海アリス幻樂団」による「 音樂CD 」のシリーズ作品である「ZUN's Music Collection」の第五弾作品。
正式名称は
ZUN's Music Collection Vol.5
「大空魔術(おおぞらまじゅつ) ~ Magical Astronomy」
となっている。
2006年8月、コミックマーケット70にて頒布された。
「ZUN's Music Collection」
「ZUN's Music Collection」は上海アリス幻樂団主宰のZUN作曲による音楽を収録したものであり、同じく上海アリス幻樂団作品である「東方Project」の各作品(ゲーム・書籍付属CD等)で使用された楽曲またはそのアレンジ(セルフアレンジ)と、各CDのために新たにつくられた楽曲の二種類からなる。
さらに「ZUN's Music Collection」では同梱のシートまたはブックレットにて、それぞれの楽曲の項目に並んでZUNによる独自のストーリーが語られている。
本作は宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーン(メリー)の世界で月面旅行の可能性が一般人にも開かれたことを告げる号外ニュースについて、大学構内のカフェテラスで二人が語り合うという内容となっている。
二人はそこで人工衛星内に出来たというカフェテラスを想い、さらにその向こう側にある「 月面 」、引いてはその「 月面 」に隠された「 忘れられた世界 」(「 月の都 」)へと想いを広げていく。
また「 解釈と哲学の時代 」に入った物理学の今が蓮子などによって語られるなど、二人の住まう世界の科学や技術、あるいは今の世界情勢などについても語られるものともなっている。
一方でその科学の様子故に蓮子がメリーが見る「 不思議な世界 」に想いを寄せる様子も描かれているなど、二人のメンタリティが二人を取り巻く現実的な様々な要素からも語られている。
そしてそんな現実的な世界にあって不思議を見る眼をもつ「 魔術師メリー 」は「 結界の向こう側 」の月を見ており、その体験を通して蓮子にある提案をするのである。
ネクロファンタジア
本作では宇宙という広大な世界観と同時に「 不老不死 」という生命そのものの在り方に焦点を当てたエピソードも語られている。主に蓮子が不老不死に手が届いたとき、どのような決断をするか、ということについてメリーとの対話の中で語られる。
そして蓮子から見た不老不死がどのようなものであるかも語られるが、そのエピソードに重ねられる曲が「ネクロファンタジア」である。「ネクロファンタジア」は東方Projectに登場する八雲紫のテーマ曲であり、このときの蓮子の台詞には紫にまつわる語が、「 ネクロファンタジア 」の当て字も含め複数散りばめられている。
「 じゃ、不老不死の薬が手に入ったら、蓮子は使うの? 」(メリー、「大空魔術」、ネクロファンタジア)
「Physicist is magician」
「 Physicist is magician 」とはブックレット表紙に描かれている言葉で、「10のマイナス11乗」の輪の線上に描かれている。
また「 Physicist 」の赤文字が蓮子のスカート左足側、「 magician 」の白文字がメリーのスカート右足側に描かれており、それぞれの語がそれぞれのキャラクターに関連づけられるような演出となっている。
一般に「Physicist」は物理学者、自然科学者を意味し、「magician」は魔術師を意味する。さらにメリーはメリー個人のテーマとして「魔術師メリー」(「蓮台野夜行」収録)があり、テーマ曲の面でも「 magician 」との関連が語られている。
ただし、「博麗神主」によれば、「 別にメリーは魔術師では無い 」(『東方文花帖』書籍版)。
科学解説者であり著名なSF作家でもあったアーサー・C・クラークは著作「2001年宇宙の旅」あとがきにて「 高度に発達した科学は魔法と見分けがつかない 」と語っているなど、サイエンスは発達すればするほど、一見マジカルであるものへと変化していくようである。
SFにおける時間旅行では科学的次元が自身の世界よりも高度に発展した別世界に至った人物が、その科学的根拠や客観的研究の蓄積と実績とを知るまではその世界は魔法の世界(ファンタジー)であるかのような錯覚を覚える、というギャップモチーフは古くから取り扱われている。
あるいは科学の系譜がかつては魔法体系として科学から除かれた部分の分析と理解とを完了するなどのストーリーでは、まさに科学と魔法は見分けがつかないもの(あるいは融合したもの)としても描かれる。
蓮子とメリーの世界は科学の高度な発達を見ているが、一方で禁じられたファンタジーを追い求める秘封倶楽部のような存在があり、秘封倶楽部が求める数々の「 不思議 」や、前作「卯酉東海道」で語られた卯酉東海道線があえて回避したルートなどにも見られるような、ファンタジーの領分にあるものもまたこの世界に存在しているのである。
一方本作における「 Physicist is magician 」についての全く異なる解釈として、ファンなどの間では蓮子とメリーのカップリングである「蓮メリ」を基盤としたものがある。
それは一例ととして、次のような解釈・理解の流れをたどる。
- 「Physicist is magician」。フィジシストはマジシャン。
- フィジシストは蓮子。マジシャンはメリー(「魔術師メリー」)。
- 即ち蓮子はメリー。即ちメリーは蓮子。
- 蓮メリちゅっちゅ。
ただしこれは蓮子とメリーにまつわる二次創作的なアプローチでもある。
収録曲
No | 楽曲名 | 出展 |
---|---|---|
1 | 月面ツアーへようこそ | オリジナル |
2 | 天空のグリニッジ | オリジナル |
3 | 東の国の眠らない夜 | 東方文花帖 |
4 | 車椅子の未来宇宙 | オリジナル |
5 | Demystify Feast | 東方萃夢想 |
6 | 衛星カフェテラス | オリジナル |
7 | G Free | オリジナル |
8 | 大空魔術 ~ Magical Astronomy | オリジナル |
9 | ネクロファンタジア | 東方妖々夢 |
10 | 向こう側の月 | オリジナル |
本CD収録曲は、2003年から2006年までに作曲、または同期間に発表されたゲーム等に使用された楽曲である。
蓮子とメリーのデザイン
宇佐見蓮子
耳付近でウェーブのかかった肩ほどまでの黒髪で、黒帽子を目深にかぶり、右目が髪に隠れている。瞳の色は黒系統。黒帽子には白色のリボンが結ばれている。
白色のブラウスと黒色のロングスカートを着ており、本作ではさらに上着としてスカートと同色のケープを羽織っている。ブラウスには正面に黒い立体的な丸ボタンが描かれている。スカートとケープには裾先に波縫い状の白いデザインが入っている。
また先述のようにスカート右足側裾先に赤字で「 Physicist 」とデザインされている。
先の丸いパンプス様の靴は足の甲付近に留め帯がある。
足元は白のソックスを履き、足首付近で畳まれている。
そして「10のマイナス4乗」と「10のマイナス11乗」の輪の中に佇み、右手を上に向けて人差し指と親指だけを緩やかに伸ばしている。
少し下方向に視線を寄せ、結んだ口元にかすかに笑みを浮かべている。
所持しているアイテムは閉じた本(左手に持ち、腰前辺りに抱えている)。
立ち位置は向かって右手側(メリーの前)。
マエリベリー・ハーン
左足を高く上げつつ体を左側に傾けている様子が描かれているためか、金色のウェーブがかった髪も傾き方向に流れている。
左目前のボリュームが特徴的(蓮子の髪で隠れた右目とコンセプトが類似している)。瞳の色は金色系統。
本作では「蓮台野夜行」以降久々となる全面にフリルのついた白色の帽子をかぶっている。
紫色のワンピースと思われる衣装で、腕部分の袖は半袖、スカートはロングスカートとなっている。袖は袖先より少し上で絞られており、黒色系統の紐またはそれに限らず何らかの陰影で表現されている。
スカートの裾には白色のフリルが描かれており、これはペチコートなどのアンダーによるものの可能性とスカート自体にあしらわれたものの可能性とがある。
また胸元には黄色の二つのボタン、襟元には前作「卯酉東海道」におけるデザインにも見られた赤い線とドットによるデザインが見られる。
先述のようにスカート右足側裾先に白字で「 magician 」とデザインされている。
足元には赤いパンプス様の靴を履いており、ソックスは足の付け根付近がフリル状になっている。
「10のマイナス4乗」と「10のマイナス11乗」の輪の中で体を右に傾けるとともに左足をあげ、さらに左手を蓮子の肩にのせている。
右手は蓮子と同じように人差し指と親指だけを緩やかに伸ばしている。
本作では特に所持しているアイテムは無いが、上記のように左手が蓮子に触れている。
このとき、人差し指の先少しだけが「10のマイナス11乗」の輪の外に出ている。
またスカート右足側が一部「10のマイナス39乗」の輪にかかっている。
立ち位置は向かって左手側(蓮子の後ろ)。
なお、本作では蓮子、メリーともに爪がよく見えるデザインとなっている。
関連イラスト
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作品関連
宇佐見蓮子(蓮子) マエリベリー・ハーン(メリー)
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