皇帝のいない八月
こうていのいないはちがつ
小林久三の小説を原作とした1978年公開の映画。
概要
原作は社会派推理小説の一種であり、鉄道ミステリーの変形種でもある。
クーデターを起こして右翼政権樹立を狙う自衛隊の中の不穏分子と、それを秘密裏に鎮圧しようとする日本政府の攻防を描く。
原作ではタイトルの意味が明確にされることはなかったが、映画版では重要な意味を持つこととなる。
『新幹線大爆破』と同様内容が内容なだけに国鉄の撮影協力が得られず、自衛隊側も「自衛隊員がクーデターを起こす映画の撮影協力なぞできん」というスタンスだったので『戦国自衛隊』の撮影で使われた物を使用している。
なお、作者の小林久三は、イタリアの鉄道パニック映画「カサンドラ・クロス」を参考にこの物語を作ったとのこと。
余談
- 寝台特急さくらの外観セットは三菱大夕張鉄道の古い客車にハリボテをつけたもの。よく見ると台車が当時さくらに使われていた14系客車の空気バネ台車ではなく、イコライザー式台車を装備している(外部リンク)。
- 映画のクライマックスシーンにてさくらを爆破してしまったことに対し、国鉄の怒りも大爆発。松竹ばかりか他の映画会社にまで「もうウチは映画の撮影に協力してやらん!」という通達を出してしまった。なお、この作品の元ネタ的存在の「カサンドラ・クロス」でも、スイス国鉄をヒールまがいの描写をしてしまったためにスイス国鉄がブチ切れ、結果その後一切映画の協力を行わなくなっている。
- 監督の山本薩夫は撮影に入ってから軍事専門家より「自衛隊員が一般人と一緒の列車で移動するのは行動の迅速性という問題からあり得ないことだ」と指摘されたが、物語の中心である寝台特急の乗っ取りを変えることが出来ないために非常に悩んだとか。
- 本作にて狂信的な軍国主義者のキャラを演じきった渡瀬恒彦の演技は非常に高く評価され、役者として一皮むけることに成功した。今では想像し辛いが、渡瀬はそれまでヤクザやチンピラといった役ばかりであった。