バリ島のバロン
バロンは獅子、虎、猪、蛇などの姿をとるとされるが、多くの場合は赤い顔、ぎょろりと飛び出した目、白い体毛、黄金のたてがみ・髭・冠が特徴的な獅子の姿で表現される。
バロンは髭を水に浸すことで聖水を作り出し、常に魔女ランダとその眷族を見張っている。ただし、古くは人を喰らう魔獣だったといわれ、悪霊を従える姿が描かれることもある。
バロンが善、太陽、解毒、若さを象徴する精霊の王であるのに対し、ランダは悪、夜、病、老いを象徴する魔女である。バリでは善悪が均衡することで世界は存在しているとされ、両要素を意味するバロンとランダの戦いは永遠に決着がつかないという。
また1930年代には「マハーバーラタ」の物語の一節を取り上げたバロン劇が作られ、その中でバロンとランダの戦いの始まりが物語られている。
ある時、死神の生贄に捧げられる運命を負った王子がいた。王子は死神に呪いをかけられた母の手で木に縛り付けられたが、それを見て哀れに思ったシヴァが王子に不死の肉体を与え、死神の目論みを頓挫させることに成功する。
敗北を認めた死神は王子の手で殺されるがその魂は地上に残り、悪の化身ランダが生み出された。同時に王子も善の化身バロンになりランダに挑むが、両者の力は拮抗し終わることのない戦いを続けることになったという。
女神転生シリーズのバロン
初出作品は神話中の敵ランダと同じくFC「女神転生」で、“神獣”族の上位悪魔として登場。
また、バロンとランダの対立構造を象徴するイベントや会話もあり、今も昔も女神転生お馴染みの悪魔である。
表裏一体の神性や舞踏劇でのバロンとランダの姿が一脈相通じるところがある為か、「真・女神転生Ⅱ」の頃まで色違いデザインが採用されており、以後は四足獣が基本の姿でシリーズ作品に登場し続けている。
3Dデザイン化されてからは、異形ながら愛嬌のある顔やバロンダンスのような仕草が目立ち、シヴァの特殊合体素材ということもあって一時仲魔として使用されることも多く、独特の魅力をもつ存在である。