シャドウラン(ShadowRun)とは、1989年にアメリカのFASAというところから発表されたサイバーパンク+魔法の世界をロールプレイするTRPGである。
世界観
このゲームは21世紀中盤をロールプレイする。ただし、この世界においては20世紀終盤に多国籍企業の独立勢力化が行われ、さらに2011年12月24日、マヤ暦による魔法や、伝説の生物などの復活が発生したという設定である。
そのため、プレイヤーは複雑かつカオスな社会情勢の中、魔法や銃弾の飛び交う世界を己の魔法やサイバーウェアや特殊技能により、非合法に近い活動を行うキャラクター(ランナーと呼ばれる)をプレイすることになる。
プレイヤーは、人間の他エルフ、ドワーフ、トロール、オークを選択でき、「サイバー空間を疾駆するエルフ」とか、「アサルトライフルを撃ちまくるドワーフ」をプレイすることができる。
ハイ・テックと幻想世界が入り交じった世界観が魅力であり、2011年の現実世界から枝分かれしたために現実に連なる社会問題(人種差別、アメリカ先住民との戦争など)が形を変えて根ざしているなど、異世界ものとは異なる独特の味わいがある。
作中の年表を見ると世界が大きく変化していく様子が分かるようになっている。
日本要素
基本ルールブックにおいてゲームの舞台は北米、特にシアトルがクローズアップされているのだが、にも関わらずというか、作中では頻繁に日本要素が登場する。
例えばサイバーウェアで肉体を強化した傭兵は「ストリート・サムライ」と呼ばれる。
魔法の力による肉体強化で物理法則を超越した動きを見せる「アデプト」は時に「ニンジャ」に例えられる。
一般人からは日本刀がランナーの象徴(5thのKatanaの解説より)のように思われている。
また、日系財閥企業やヤクザが作中の背景で大きな位置を占めており、誰にとっても無視できない存在となっている。
これは元ネタであるニューロマンサーの影響によると思われるが、アメリカ人から見た日本要素であるため、ところどころおかしかったり古いステレオタイプだったりする。日本人「さらりまん」は相変わらずエコノミックアニマルであるし、日本国内では男子の帯刀が合法である上、主な用途は護身ではなく切腹である。あと日系企業グループの名前が「レンラク(通信関係に強い)」だったり「シアワセ」だったり。シアワセは財閥企業なので、創始者一族の名字でもある。直近ではシアワセ一族が作中で天皇陛下に嫁いでいたりもする。
まあ、この辺りの違和感はシャドウランに限った話ではなく、外国フィクションにおける日本要素全般に言える話ではあるのだが。
登場キャラクターの例(日本版リプレイの主要人物、依頼の舞台)
ここでは富士見書房刊リプレイ集の主要キャラを取り上げて、具体的な登場人物の例示にする。アーキタイプと呼ばれるルール記載の職業と技能のセットで作成されたキャラ中心だが、独自に技能等を決めて作成されたキャラも含む。
彼らは仕事帰りの企業人、荒くれ、犯罪者、そしてランナーが集う街東新宿を拠点とし、酒場“シルバー・ムーン”にて依頼を待っている。また、彼らが活躍する依頼の舞台についても、末尾でいくつか補足する。
六堂(りくどう)
極限までサイバーウェアを埋め込んで銃撃・格闘とも最強を目指す男。
戦闘では冷酷だが義理堅く人情に篤い。
紫雲
銃撃の名手で、情報収集や破壊工作にも優れた元企業工作員。冷静で思慮深い男性。
かつては中米の新興企業アズテクノロジーに所属していたが、わけあってランナーとなった。
マオ
都市に息づく自然の力を用いる魔法使い。魔法に加えて自然の精霊を行使することもできる。
好奇心旺盛で気まぐれな女性。
Dヘッド
電子世界を操り、企業や様々な組織のコンピュータシステムに侵入し、工作や情報収集をこなす。日常用語でいうならハッカーにあたるエルフの男。飄々としたマイペースの性格である。
殺(シャア)
武術家の少女。フィジカルアデプトという魔力を格闘能力に転換する技で戦えるので、精霊など通常の攻撃手段に強い相手を得意とする。裏世界を生き抜いてきながら、見た目通り性格も幼く明るい。
遠山探偵事務所
メディア関係者とストリート・チルドレンが集まる渋谷、その裏通りにある「プラチナ・ビル」という小汚い雑居ビルにある探偵事務所。企業関係の仕事を請け負い、またランナーに情報を売ることもある。
ライトニング
池袋の街は企業間の激しい紛争で破壊され、そこに危険なヤクザやギャングらが住み着いている。その中でも最近急速に弱小組織を吸収して強大化しているギャング。首領は魔法使いらしい。
東電子技術研究所
巨大企業「三浜」の子会社である東電子の施設。業務内容はサイバーウェアの開発となっているが、実質は他の企業の製品を分解して技術を盗んでいるらしい。所内は私有地であるので、許可なく侵入すれば企業の判断で「処分」される。これは企業法によりどこの企業にも認められている合法的警備の範囲である。
関連イラスト
シリーズ展開
アメリカにおける状況
この世界はアメリカにおいてはシェアード・ワールド(フィクションにおいて、複数の著者が同一の世界設定や登場人物を共有して創作する作品群)とされ、作品もアメリカにおいては複数発売されている。
また、製造元が2001年、第3版の途中で事業停止し、他社に権利を売却、その後そこからサポートや、版あげ等の活動が続いている。
版によるゲーム性の違い
初版から3版に関しては「年表の追加及びそれに伴う情勢変化」「ルールの追加」程度と推測される。
しかし、4版に関してはルールが大胆に変化しており、単純に言えば「ルールの単純化」、「魔法の単純化」などがその例として挙げられる。
日本においては
日本においては1994年に第2版がグループSNEにより翻訳され、富士見書房により発売された。さらにはコンシューマゲーム(SFC、メガCD)にも移植された。しかし、1997年、第3版発売前にサポートが終了してしまった。
再び日本におけるサポートが始まったのは2007年であり、出版元は新紀元社であった。
Pixivにおけるタグに関して
自PCイラストが多いが、これはこのゲームは設定上状況イラストは死ぬほど面倒なためでは無いかと推測される。