曖昧さ回避
概要
「理想を叶えた、か。確かにオレは理想通りの正義の味方とやらになったさ。
だが、その果てに得たものは後悔だけだった。残ったものは死だけだったからな」
「殺して、殺して、殺し尽くした。
己の理想を貫く為に多くの人間を殺して、
無関係な人間の命なぞどうもよくなるぐらい殺して、殺した人間の数千倍の人々を救ったよ」
「――――だが終わる事などなかった。
生きている限り、争いはどこにいっても目に付いた。
キリがなかった。何も争いのない世界なんてものを夢見ていた訳じゃない。
ただオレは、せめて自分が知りうるかぎりの世界では、誰にも涙して欲しくなかっただけなのにな」
エミヤとは、『Fate/stay night』に登場するアーチャーの真名である。
とある未来において、正義の味方を目指した衛宮士郎が辿り着いた成れの果て。
皮膚や髪の色が士郎と異なるのは、固有結界魔術の反動によるもの。
世界の意思と契約し、その後数多くの人間を救ったが、裏切りを恐れる人々に殺され生涯を終えたという。
彼はその結末自体には後悔など無かったのだが、その後霊長の守護者として数え切れないほど「世界を滅ぼそうとする人間達」を虐殺することになり、その中でかつての理想に絶望し、精神を磨耗していく。
そうしていつしか、「自分の手で過去の自身を殺すことでタイムパラドックスを起し、自分の存在を消そう」と考えるようになる。
なお公式曰く、この方法をとっても実現することはまずないとの事。本人もその事を自覚し、ただの八つ当たりだと判っていながらもUBWルートで実行に移すことになる。
この事実を示すヒントはFateルートの時点から既にいくつか明に暗に提示されているが、判りやすい例は遠坂凛が持つ「父の形見のペンダント」の存在だろう。
このペンダントはプロローグで士郎を蘇生させた折に落としていたが、その後アーチャーが拾ったと言い凛に返却している。
ところが、意識を取り戻した士郎もまたこのペンダントを拾い、自宅に保管していた。
唯一無二のはずの物が二つ存在するというこの矛盾は、アーチャーが未来から来た英霊である証拠であり、本人曰く「士郎は恩人の落とし物であるこのペンダントを生涯持ち続けた」とのことである。
ちなみに「プロローグで記憶喪失だと言ってたのにいつの間に記憶が?」と思う人もいるかもしれないが、実はマスターである遠坂凛の名前を聞いた時点で殆どの記憶を取り戻していた。
なお、エミヤはあくまで「衛宮士郎が辿りうる可能性の一つ」であって、確定された未来ではない。一方で、英霊の座はあらゆる並行世界から登録されるため、「衛宮士郎がエミヤとならない世界」であっても彼を召喚することは可能である。
余談
士郎にとっては勝利確定BGMの「エミヤ」だが、アーチャーにとっては負けフラグである。なお『Fate/EXTRA』で普通に勝利できているのは「真名も曲名も違うからセーフ」という解釈がファンの間では一般的。まああちらはRPGなので仕方がないとも言える。
また、とある平行世界では衛宮士郎と最も近しい人物が『エミヤ』を代行している。
少年は言った。死んでいく人を見たくない。
助けられるものなら苦しむ人々全てを助けることはできないか、と。
少年が斬り伏せようとしていたのは自分自身。信じていくもののために剣を振るった。
戦いは終わり、引き返す道などもはや存在しない。
ただ、答えは得た。
後悔はある。やり直しなど何度望んだかわからない。
この結末を未来永劫、エミヤは呪い続けるだろう。
だが、それでも───俺は、間違えてなどいなかった───