「おまえがマスターか、ひどい面構えだ。まあいい……おかしなナリをしているがこれでもアーチャーだ、せいぜいうまく使え」
プロフィール
真名 | エミヤ〔オルタ〕 |
---|---|
クラス | アーチャー |
性別 | 男性 |
身長 | 187cm |
体重 | 78kg |
出典 | Fate/Grand Order(ゲームマテリアル)/ Fate/stay night(書籍マテリアル) |
地域 | 日本 |
属性 | 混沌・悪・人 |
好きなもの | もう忘れた |
嫌いなもの | 増えすぎてわからない |
設定担当 | 奈須きのこ、東出祐一郎 |
ILLUST | 佐々木少年 |
CV | 諏訪部順一 |
概要
『Fate/Grand Order』に登場するアーチャークラスのサーヴァント。レアリティは☆4。
メインシナリオ第1.5部1章『悪性隔絶魔境 新宿』にて新宿のアーチャーが召喚した英霊の1人であり、近代装備に精通した異例とも言える存在である。
真名
名前の通り、エミヤがオルタ化した存在。
武器も愛用の双剣をさらに魔改造したと思しき二丁拳銃を操る(当初見た時「エミヤが飛び道具を使った」と驚いた人もいたのだが後述の生い立ちの違いもあり、生前の頃から銃を使用していた模様)。なお、この銃は銃剣の様に刃のついた構造になっている為、銃撃以外にもお馴染みの双剣スタイルに近い戦闘方法、更に斬撃と銃撃を伴わせたガンブレードのような使用も可能。
また、元の短剣(これも改造が施されており、従来とは形状が異なる)に戻し、更にEXアタック時のように柄の部分を連結させ双頭剣(双刃の薙刀状)として用いる事もある。
これに関して、作中ではジャンヌ・オルタから「悪趣味」と言われている。
無論、一人の人間の人生がこうまで変貌するには理由がある。剣の如き強靭な男の魂を失墜させたのは、聖母の如き慈愛を持つ一人の女だったと言われている。男はこの魔性を追い詰めた代償として、その過程で多くの信者たちを手にかけ、彼らの命に殉じるように魔道に落ちた。
人物
一人称は「オレ」。
皮肉屋で冷徹、自らを「傭兵」と呼び、報酬次第で仕事を請け負うリアリスト。
黒化英霊の例に漏れず、オリジナルにあった親しみやすい甘さ等はすべて排除されており、銃を使う戦闘スタイルからどことなくある暗殺者を想起させる。
理想もない、思想もない、それ故に効率の良い。機械と同じさ、などと嘯く無銘の反英雄。
根本の部分で腐り果てているため、目的遂行のためには情け容赦ない殺戮を繰り広げる。
効率主義を一とし、目的達成のためなら手段は選ばず、こちらに利があると判断したら味方に被害が出ようとあっさりと捨て駒として切り捨てる非情かつ冷酷な面を持つ。
ただ根は“英霊エミヤ”であるため、霊長の抑止力(アラヤ)の意向に沿って任務を全うし、有益と見れば共闘する意思も見せたり、方針に間違いがなければ人助けなど回りくどい戦略を許容する柔軟さもある。そして非情ではあるが完全な悪党ではない。
そのためファンからは「正義の味方」が反転して「悪の敵」になったと言われることも。
能力
戦闘においては、銃剣に魔改造した『干将・莫耶』を用いる。
モーション中では、『干将・莫耶』による銃撃と斬撃を巧みに使い分けて戦っており、エクストラアタックでは剣形態に戻した武器を連結させた双刃薙刀による攻撃も披露している。
ステータス
マスター | 筋力 | 耐久 | 敏捷 | 魔力 | 幸運 | 宝具 |
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藤丸立香 | C | B | D | B | E | ? |
保有スキル
対魔力(D) | アーチャーのクラススキル。魔術に対する抵抗力。Dランクであれば、詠唱が一工程(シングルアクション)の魔術を無効化する事が可能となる。あくまで、魔力避けのアミュレット程度の耐性。 |
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単独行動(A) | アーチャーのクラススキル。マスターからの魔力供給を断っても自立できる能力。マスターなしでも行動可能だが、宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。 |
防弾加工(A) | 最新の英霊による『矢除けの加護』とでも言うべきスキル。名義上は『防弾』とは銘打たれているものの、厳密に言えば高速で飛来する投擲物であれば、大抵のものを弾き返す事が可能となる。 |
投影魔術(C)(条件付きでA+) | 道具をイメージで数分だけ複製する魔術。エミヤ・オルタが愛用する双剣『干将・莫耶』も投影魔術によって作られたもの。投影する対象が『剣』カテゴリの時のみ、ランクは飛躍的に跳ね上がる。この『何度も贋作を用意出来る』特性から、エミヤ・オルタは投影した宝具を破壊、爆発させる事で瞬発的な威力向上を行っている。 |
回路接続(違法)(B+) | 「投影魔術(C)」が変化したスキル。詳細不明。 |
嗤う鉄心(A) | 反転の際に付与された、精神汚染スキル。通常の『精神汚染』スキルと異なり、固定された概念を押しつけられる、一種の洗脳に近い。与えられた思考は人理守護を優先事項とし、それ以外の全てを見捨てる守護者本来の在り方を良しとするもの。Aランクの付与がなければ、この男は反転した状態での力を充分に発揮出来ない。 |
宝具
無限の剣製(アンリミテッド・ロストワークス)
- ランク:E~A
- 種別:対人宝具
- レンジ:30〜60
- 最大捕捉:?
「魔力を回せ、すぐに終わらせてやる……」
「I am the bone of my sword. So as I pray,『Unlimited Lost Works』……!!」
本来は世界を引っ繰り返し自分の世界を作り出す『固有結界』そのものを、相手の体内へ潜り込ませる性質を持つ魔弾にして発射する。命中した相手の中で固有結界は暴走し、体内から無数の剣を突き出しながら相手を破裂させ、彼の心象世界が一瞬だけ外界へ顕現する(この現象は、彼の固有結界の暴走と酷似する)。心象世界は、血のように赤い空にドス黒い大地、空の歯車には鎖が絡まるなど大きく異なっている。
その性質は、とある魔術師殺しの礼装に近いと言えるかもしれない(見た目が似てるだけで、後述のように隕石などの回路もなにもない無機物にも通用するなど、実際の効果は別物だが)。
ちなみに、『無限の剣製』とされているものの、マテリアルでは「限」の文字に削りとったかのような傷が重なっており、『無の剣製』とも読めるような表現になっている。
本編では小惑星を丸ごと粉々に砕くなど凄まじい威力を発揮した。
※ 実装当初は今までの『UBW』に倣いランクがE~A++だったが、何故か『UBW』共々ランクがE~Aに変更された。ちなみに作中ではジャンヌ・オルタの宝具を回避する際に盾の宝具を使用しているが、漫画版では『熾天覆う七つの円環』となっているが原作では描写されていないため不明。
ゲーム上での性能
最大HP | 12250(LV80) |
---|---|
最大ATK | 8996(LV80) |
コマンドカード | Arts:2/Quick:2/Buster:1 |
宝具カード | Arts |
スキル1 | 防弾加工(A)/自身の防御力をUP(3回・5T)+自身に被ダメージカット状態を付与(3回) |
スキル2 | 投影魔術(C)/自身の全カード性能UP(1T) |
スキル2(強化後) | 回路接続(違法)(B+)/自身の全カード性能UP(3回・3T)+自身のNPを増やす(20~30%) |
スキル3 | 嗤う鉄心(A)/自身の攻撃力をアップ(3回・5T) |
宝具 | 敵単体に超強力な防御力無視攻撃&確率で敵単体のチャージを減らす<OCで効果アップ> |
宝具(強化後) | 威力とチャージ減の確率アップ |
全体的には攻防と継続力のバランスが取れた自己完結型の☆4アーチャー。
オルタ系では珍しく、HP偏重かつ防御性能が高いうえに二つのバフスキルにより瞬発力も高いバランスの良さが最大の特徴である。強力な回数制の攻防バフをやりくりし、味方と共に耐えながら堅実に宝具攻撃を狙うというArtsパでの基本運用で立ち回りが基本。「防弾加工」はゲーム上では、防御力アップと複数回の回避を付与する「矢除けの加護」に対し、防御面強化に特化している。持続が長くLv10にすると切れ目が無くなる為、積極的に使っていける。
本人のATKは低いものの、自身で持つ2つのバフスキルが異種かつ優秀な効果なので火力にそう問題はない。さらに宝具強化の単体瞬間火力においては今なお単体宝具アーチャーでもトップクラスを誇っている。また宝具が多段ArtsなのでNPが回収できるのが利点であり、スキルやArtsブレイブチェインのクリティカルも重なれば連発も狙えなくはない。
特筆する難点はスキルレベルが低いとCTの関係でバフ効果が消えるターンが出る為全スキルの強化が必要な点に加わる育成の難しさ、そして逆に味方とのシナジーの薄さや回数制の為防御バフを剝がされる全体攻撃持ちの相手など。また、チャージ減少が確率のため、敵の宝具に対する防御がズレてしまう事故の原因になりかねない点には注意が必要。
なお、ストーリー限定である点は、入手機会が少ないという欠点の一方で、1回の召喚で手に入るサーヴァントコインが多いという利点もあるため、一長一短と言える。
関連人物
生前
生前どこかの世界で始末したものの彼を失墜させる決定的な原因を作った因縁の相手。
在り方が社会に伝播し害悪になるのなら何度でも殺す。
義父に当たる人物でこちらも銃使い。
近代戦的な戦法や一切の妥協を許さない信念などが似ている。さらにサーヴァントとなった彼とは、外見や戦い方までもが似てしまっているのがなんとも皮肉。
マテリアルの欄にて(このオルタの世界線だけの話だが)彼女の子供共々、取り返しのつかないことをやってしまったと言われていたが……?
Fate/Grand Order
かつて自らの依り代が危惧していたであろう人類の負債の後始末を押し付けられた者の末路そのものとなったその姿に哀れみとも呆れともとれる複雑な感情を抱かれている。
反転前のオリジナルであり腐ることの無かった自分。
彼自身は殺したいほど嫌悪され疎ましがられている……と本人が思い込んでいるだけで、向こうは本人に対してはともかく所有している武器をカッコイイと羨ましがっている。
しかし、彼の経歴はエミヤ・オルタとは対照的なものになっている(後述)。
依り代がイシュタルの依り代と似た者同士であるためか、彼自身が半ば望んでこうなったであろうかとを薄々察しながらも、説教したい思いに駆られている。
契約したマスター。
自身と違って根っからのお人好しな彼/彼女にも皮肉を飛ばしまくっているが、お互いのスタンスは理解・尊重し合っており、会話自体にそれほど毒はない。
『MOONLIGHT/LOSTROOM』でのマスター。
あくまでも数あるサーヴァントの一騎という扱いである。
犬猿の相手の黒化英霊。犬猿の仲はオルタであってもやっぱり変わらなかった。しかし、『プリズマ☆イリヤ』では両方ともバゼットの説明のための出オチ要員にされてしまった。もっとも、基本武装からしてこちらではなく、エミヤの方がそのまま黒化したものであろうが。
亜種特異点におけるアーチャー繋がりの召喚者。
お互いに皮肉を言いつつも彼に従う素振りを見せるが……?
新宿で敵対した。出会い頭からしていい印象を抱けるものではなかったが、常に冷徹で何かにつけて毒を吐く彼の態度が癇に障るのか、スカーフェイスなど詐称を付けて罵倒するなど非常に険悪。
新宿では敵対関係となった(まあ本編での絡みはあまりないのだが)。
普段はお姉さん然とした彼女だが、生前の自分の知る姿とはあまりにかけ離れた彼の姿には、流石の彼女も言葉を乱すほど狼狽していた。曰く「グレちゃったーー!?」とのこと。
『CCC』コラボイベントで共演。
後述するが、彼女にとあるあだ名を付けられて青筋を立ててキレていた。
『Requiem』コラボイベントで共演。
「小僧」呼ばわりして皮肉を言うものの、何か琴線に触れたのか世話を焼いていた。
銃使いアーチャー繋がり。本人をして中々の使い手と称賛されるがなにより宝具の「弾が当たった相手を内側から破裂させる」というえげつない効果を目の当たりにして戦慄していた。
マイルームにて「ムズムズはしないが、座りが悪い」という印象を持たれている。
武器を作る職人というだけあって、オルタの武器の扱いの悪さにはどこか思う所があるようだ。
2023年ホワイトデーイベント『カルデア重工物語』で共演。
普段からよく呑みに付き合わされているらしい。劇中で彼の数々の奇行を聞かされた際は、呆れる余り反転前の自分を思わせる諦めたかのような笑顔を浮かべていた(何気に新規表情差分である)。
あるイベントにおいて自らを聖杯で仕えさせていた主。あくまで雇い主とその従者といったスタンスだったがその生き様に多少なりとも思う所があった模様。
その他
「正義の味方」という概念と一体化し、クールでワイルドになった反転前のオリジナル。『CCC』コラボイベントではエミヤ・オルタが特攻サーヴァントに選ばれたが、果たして……
なお、漫画版で明かされた生前の姿は『Fate/EXTRA CCC』での回想の姿そのものだった。
こちらもエミヤの黒化。ただし、オリジナル本人の反転。
また、姿はあまり似ておらず、どちらかといえばアンリマユに似る。
余談
『Epic of Remnant』の発表当初からその真名解明について大きく話題をさらったキャラクター。
発表当初から銃身の大極図から「以前から存在が仄めかされていたエミヤのオルタ版か?」と言われていたものの、あまりに当人からかけ離れたラテン系染みた顔立ちと黒人系・アフリカ系的な褐色肌とタラコ唇から「ボブ」だの「ボブミヤ」という割と酷い仮称を頂戴していた。結果的に予測は的中したものの、現在でもだいたい「ボブ」呼びで定着しつつある。なんでさ。
ちなみによりにもよって中の人からもボブ呼びされていたりする。なんでさ……
しかし、イラスト担当の佐々木少年氏がTwitterにて、「公式から情報開示OKの期日になった」ので投稿したオルタのイラストは、ゲーム内の立ち絵とは違い、老け込んだエミヤと言ってもおかしくない程に似ていた。恐らく、色の塗りと光の当たり加減によるものだろう。
新宿ピックアップ2で修正される前は人物説明の「失墜」が「墜落」と誤植されていた。なんでさ(2回目)……とはいえ、下記で語る事を考えると間違いとは言い切れないが。
『Fate/EXTRA CCC』とのコラボイベント『BBちゃんの逆襲/電子の海で会いましょう!』では、特攻サーヴァントになっている。そして、容姿ネタで弄られる羽目に……
キャット『デトロイトのエミヤ、略してデミヤよ』
エミヤ・オルタ「……#!!」
なお、北米版では国の事情からか、立ち絵のイラストが黒い肌から通常のエミヤの褐色肌に、キャットに付けられたデミヤのあだ名も“edgy”に肖った「edgemiya」に変更されている(edgy=刺々しい、イラついた等)。ツイッター上では賛否両論らしく実装から半年が経過した2019年秋現在も北米版公式アカウントにクソリプを繰り返すユーザーが絶えない(アルジュナがOKでエミヤがNGなのには納得がいかないなど、インド系の褐色は黒人とはまた違う人種なのだが)。
社長の「エミヤにもオルタを実装したい」という提案から生まれたことが菌糸類へのインタビューで語られている。『悪堕ちしたらそれはエミヤではない』という前提があるため、シナリオ側からは提案すらしないことだが社長にやってほしいと言われて「特例として、こういうケースならありうるかな」と改めて考えて、設定を煮詰めたとのこと。
逆にいえば「ここまでしなければ絶対に悪堕ちしない」程の男が「悪に落ちるほどの悲劇があった」と言うことである、そしてその内容は…(余談2へ)
『Requiem』コラボでは主人公に同行するサーヴァントとして登場。作中での行動もいつものエミヤ・オルタなのだが、CMでは本編で絶対にやらなさそうな動きで踊っている姿が話題になった。
関連イラスト
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Fate/GrandOrder サーヴァント アーチャー(Fate)
この先ネタバレあり
彼はエミヤのオルタではあるものの、実はエミヤから反転したというものではなく、生前からして辿った経緯が異なるifの存在である。エミヤからしてみれば殺したくなるくらいおぞましく思える存在(なのだろうと、オルタ本人は考えていた)。
なぜなら彼は生前の時点で既に、とある出来事が原因で魂を腐らせてしまった。目的のために殺戮を繰り返すだけの執行者になり果ててしまった、可能性の末路。死後に守護者となってから終わりのない殺戮を経験し魂を摩耗させたエミヤとは、成立した世界線からして異なる存在である。
エミヤが社会が生み出した名もなき正義の味方の一人ならば、彼は人理守護のためならばそれ以外のすべてを捨てることを良しとする、無心の人理守護の執行者といえる。
根本から腐り切ってしまったために道徳や親愛といったものを蔑んでおり、過去を失い記憶も消失していき生きる屍となった己を嗤い続けている。その姿を見てイシュタル(の中の依代の少女)は、「だから言ったのに……全体の後始末なんて押し付けられたら、最期には必ず燃え尽きるんだって。でもそれが、あの英霊が目指した理想の姿なんでしょうね」とこぼしている。
自分の事を「中身が腐っている」と自虐している通り霊基が破綻しており、エミヤの主夫属性を象徴する十八番だった料理も、味覚を喪失して作れなくなっている。
オマケに霊基破綻などの影響で現在進行形で自我と人格が削れている影響で、日記を書いて記録しておかないと1日分の出来事さえ憶えていられないほど重篤な記憶障害を患っている。
再臨を進めると肉体の崩壊と共に記憶の消失が更に進んでいくが、絆を深めると精神が腐り果て全てを忘れてしまっていても彼はかつて衛宮士郎であったことがうかがえるセリフがある。
ちなみに再臨での変化は
- 第二再臨で腰に黒い外套+首や胸元、腰周りや手の一部に橙色の亀裂のような模様が追加。
- 第三再臨で上着が無くなり、亀裂のような模様が金色に変色。顔面や頭部の一部にまで達する等、ほぼ全身を亀裂が侵食している。
- 最終再臨で『無限の剣製』内に佇む姿。しかし、禍々しかった心象世界に光が差し込む。
と、徐々に破綻していく様相といったもの。
彼を引き当てたプレイヤーの一部では、霊基再臨するほど身体が崩壊していく姿とマテリアルやマイルームボイスの痛ましさから「初めて霊基再臨したくないと思った」という声が上がっている。
ところが彼がカルデアに召喚されてから4年後、彼以上に救いのない最終再臨を迎えるサーヴァントが出てきてしまったのはまた別の話(尤もこちらは水着霊基で救われたが)。
彼がこうなった背景には、とあるカルト教団の女性幹部らしき人物の関与が仄めかされている。
とある世界ある国で起きた新興宗教。
その中には心に傷を負った、あるいは世間から除け者にされた才人が集まった。
世界をひっくり返す程の可能性を持ちながら、その組織には悪の理念など存在せず一人として悪人はいなかった――気まぐれで組織を創立したその教主である女を除いては。
その女の持つ危険性に気がついた男は、自分の信念を曲げてでもその女を排除することを決めた。
男はその女を追い詰める過程で多くの信者を手に掛けた。
しかし、最後の最後でその女はビルから飛び降りて自ら命を断った。
「より多くを救うために少数を殺してきた」正義の味方は、「たった一人のために大勢を犠牲にした挙句、その一人を討つことすら出来なかった」のである。
男はこの魔性を追い詰めた代償として、彼らの命に殉じるように魔道に落ちた。
一人も、例外なく、生かしてはおけない。
二度と、同じケースを起こさせない。
あらゆる悪の痕跡を消す。
後に続く悲劇の可能性を潰す。
オレはそうやって生まれたものだ。
その為に、その為に───
『その為に多くの命を踏みにじった。であれば今回も例外は許されません。』
『どうぞ思うままに、無銘の執行者。』
『最後の責務、存分に果たされますよう───』
ロストマン
残存のセラフィックス職員を銃殺し、研究成果を破棄することで抑止力の使命を果たそうとするエミヤ・オルタ。その時、彼にとって非常に懐かしい霊基パターンが出現した。それは、過去に彼が気付いた危険が事実になった瞬間である――かくしてカルデアのマスターは天体室にたどり着き、BBも倒された。そして、突如に訪れる暗闇の中、銃声とともに現れたのは、変わり果てた、名前を喪った、エミヤ・オルタだった死体(デッドマン)――
天体室の真実――128人のマスター候補(の死体)を利用し、サーヴァントを繰り返して召喚し、聖杯戦争を繰り返す、システム・アニムスフィア。其れを暴く途中、彼の身体も徐々に蝕まれる。
ロストマンとの戦闘は所々特殊な仕様であった。まず、彼のクラスはアイコンが人類が滅ぼす悪の影に塗りつぶされ、アルターエゴとムーンキャンサー以外のダメージを等倍にする特異体質となる他、サーヴァントではあるが七騎士のサーヴァント属性を持たず、何より特性が人から獣属性となる。また、ブレイクと共に、無敵貫通+宝具威力アップの不破の鉄心を常時バフとして発動し、さらに毎ターンアンプル使用を発動。アンプル使用はチャージ増加の代わりに彼のHPを2000減らす効果を持っている。このアンプル、漢字表記では髄液なので材料はお察しください。ちなみにゲージは5になっているが、このアンプル使用のせいで彼の宝具発動タイミングがズレる事が起こる。
そして、もしプレイヤーがアンプルではなく自らのサーヴァントの手で彼を倒せば、一枚絵と共に、ストーリーはクライマックスに向かう。
結末
※ 以下、『深海電脳楽土 SE.RA.PH』のネタバレが含まれます。
最終盤、メルトリリスによる『ヴァージンレイザー・パラディオン』にて致命傷を負ったビーストⅢこと殺生院キアラだったが、消耗しきり動けないメルトリリスを無名の魔神柱で捕縛し霊基を乗っ取ることで再起を図るという足掻きを見せる。
もはやこれまでかと思われたその瞬間、戦いの直前にキアラの発していた、
「私のような悪を処断しようと努めた者を、自分たちの利益にならないからと排斥する───
そのようなケダモノ達が人間だとでも?それでは無銘の英雄たちが、あまりにも報われません」
という自身を排斥した人々─── 彼が本当に守ろうとしていた者たちを嘲るという行為が死に体となっていたはずの男を立ち上がらせた。
「いや、今度こそ次はない。このクレバスが貴様の墓場だ、ビーストⅢ」
残っていた髄液全てを用いて死に体だった肉体を強引に駆動。
銃撃でメルトリリスへの捕縛を退け、セーブワイヤーによってトリスタンに彼女を救出させ、自身は打つ手を失い沈んでいく怨敵の最期を見届けた。
「いや、いやです、こんなのいや!やり直し!やり直しを求めます!」
「だって、だって───だって本当に、私」
「まだ満足してない(あともう少しだった)のにぃぃいいいいい!」
「───悪くない。最高の断末魔だ、殺生院」
ここに、失墜の原因である「彼女」への悪逆の報いは、果たされた。
かつて正義の味方を理想とした"誰か"は、どこまで堕ちようと、どんな形に反転しようと、討つべき悪(護るべき正義)を忘れはしなかったのである。
正義の味方は反転しても悪の敵――とあるマスターの発言
蛇足だが、彼から贈られるバレンタインのお返しは、よりにもよってイベントで見た覚えのあるセーブワイヤーだったりする。記憶にはなくとも本懐を遂げた思いは刻まれているのだろうか……
余談その2
漫画版『深海電脳楽土 SE.RA.PH』では生前の姿とその過去が明かされた。
エミヤの第二再臨をベースに黒いジャケットとマフラーを羽織った姿であり、拳銃と干将で武装している。また、2017年に配布された概念礼装「英霊正装」シリーズではマフィアか米国の刑事を思わせる身なりをしていたが、本作では公僕時代の衣装として登場している。
なお、彼が寺院を思わせる教団ビルに押し入って殺した信者たちの中に悪人はただの一人もおらず(※)、教主を守ろうと武装した者はおろか、無抵抗の者も含まれていたようだ。
当初は教団の裏実態を公表しようとしていたが、教主の影響力はあまりにも強大であり、その毒は既に危険の予兆を見せることなく世界に深くに根付いてしまっており、止む無く強硬手段へ打って出る。それでも倒すべきは教団ではなく教主のみと極力犠牲を出さないやり方で済まそうとしていたが、皮肉にも強硬手段に出れば出る程信者たちの教主を守ろうとする意志は強くなり(祈りの場にも重火器を常備していたらしい)、結果を優先し手段を選べなくなっていった。
そして教団の中には自らの知り合いの姿もあった。彼女に教団への信仰心は無かったが、自らの息子が不治の病に罹ったため、どうしても教団に頼らざるを得なかった。そして……
彼女に銃(描写からマガジンが入ってなかったとされているため、恐らく本気でエミヤを撃つのではなく、止めるために銃を構えたとされる)を向けられ、更には彼女と間接的にとはいえその息子をも手にかけ、無数の信者に群がられ、全員薙ぎ倒しながらも教主をあと一歩まで追い詰めるものの教主は勝ち誇るような笑いを浮かべながらビルから飛び降り自ら命を絶っていった。自らの正義の為「無辜の民」を殺し、自らの「日常の象徴にして平和のシンボル」をも切り捨て、そこまでしてなお元凶を討ち果たすことが出来なかったその結末にはただ愕然と膝を折るしかなかった。
その後政府に捕らえられ処刑を待つ身となるも、その力を欲した政府との取引により記録の上では処刑された名も無き傀儡「公共の正義(パブリックヒーロー)」となることで処刑を免れ政府の抑止力となって更なる殺戮を繰り返す魔道へと堕ちることとなる。その後与えられた任務を忠実にこなす虚無と忘却の日々を繰り返すうちに、重ねた罪、守りたかった物、なりたかった正義すらも忘れ、政府からは必ず任務を達成する「生ける伝説」と評されようとも既に心を失い空いた穴では何も満たされず、ただ効率と結果のみを求める機械のような存在となり果てることとなった。そしてその果てに新人なら誰でもできる……そのような任務を引き受けた後何処かへと消えていった……。
まさしくそれは第2部7章『黄金樹海紀行 ナウイ・ミクトラン』で示唆されたオルタ化の定義に沿うものであった。また、「エミヤ」のオルタというよりは「衛宮士郎」のオルタと言える。人間性を捨ててしまった末路が、このエミヤ・オルタの神髄とされる。
なおこの作品で干将・莫耶が魔改造した銃剣型二丁拳銃になった描写も見られ、本当の意味で鉄の心が腐り果て、効率性を上げるために今まで手を付けることがなかった考え方で改造したと思われる。
※ その言葉通り、この団体は営利目的やイデオロギーで動いた事はなく、(リモートセラピーや不治の病の特効薬といった)医療面に多大な貢献をし、様々な人種が団結したまさに理想的な共同体であった。しかし、その影響力から先進国には危険視されていた(裏では要人達が多数入信していた)らしい。だがあくまでそれは表向きの話であり裏では特効薬など作る為に多くの人間を連れ去り人体実験らしきものを行うなど非人道的な行いをしていた模様。