セリム・ブラッドレイ
せりむぶらっどれい
概要
アメストリスを統べる大総統であるキング・ブラッドレイを義父に持ち、養子という立場ではあるが父を尊敬する礼儀正しく純真な男の子。
ブラッドレイ夫婦の間に子供が成せなかった為、遠縁の子だったのを養子としてもらい受けられる。
※この先ネタバレを含みます。
その正体は主人公らに敵対する七人のホムンクルスの一人・プライド。
もらわれてきた遠縁の子というのは表向きの肩書である。
七人兄弟のホムンクルスの中では一番初めに造られた長男であり、義父を演じるキング・ブラッドレイことラースや、他のホムンクルスたちの兄にあたる。最初に生まれたホムンクルスであるため自らを「始まりのホムンクルス」と呼び、自分を造り出したお父様に絶対的な忠誠を持っている。
本性を知る者たちの前では、敬語を用いた丁寧な口調は変わらないものの、プライドの名を冠するにふさわしい傲慢さと残酷さを見せる。その名の恥じず他のホムンクルスたちですら見下しているため、彼らからは非常に恐れられている。その威圧感は暴走寸前のエンヴィーとグラトニーを一蹴し、サボり癖のあるスロウスもレイブン中将の口から「プライド」の名前が出ただけで仕事を再開した程。
一方で偽りの生活で義父を演じるラースことキング・ブラッドレイに対する態度は、他のホムンクルスたちと異なっており、ラースの方も他のホムンクルスのようにプライドを畏怖している様子はなく、むしろ反逆と捉えられてもおかしくない本音を話したりしている。
また自分の正体を知らず愛情を注いでくれる義母のブラッドレイ夫人には「母親」として特別な感情を抱いている。基本的には人間を「下等生物」として見下しているが、同時に人間は大切なものを守るためなら自分の命すら厭わない事もある生き物だと一定の評価をしている。
鋭利な刃物のようにも、身を縛る紐のようにも使える伸縮硬軟自在な「影」を用いて戦い、能力に制約はあれど戦闘力はかなりのもの。お父様やホーエンハイムという論外クラスを除けば、その強さは人間離れしたホムンクルスの中でもブラッドレイと並んで間違いなく上位クラスに属する。
影は「お父様」の真の姿同様無数に赤い目と牙の生えた口を有する。終盤ではグラトニーとゾルフ・J・キンブリーをこの影から摂取したことにより、グラトニーの持つ敏感な嗅覚を得た(キンブリーはともかく、グラトニーはこれにより完全に人格を喪失してしまった)。
また本性の関係上、セントラルからその近郊までしか活動できないという制約もあり、グリード曰くセリムの体は『お出かけ用の入れ物』とのこと。その肉体は自動車で跳ね飛ばされようが、ライオンの合成獣人間であるハインケルの攻撃を受け続けようが、やすやすと耐え忍ぶほど頑強である。ただし、影という性質上強い光の中や完全な暗闇の中では影を出現させることができず、「セリム」の器自体が人間の子供程度の身体能力しかないため、一切の攻撃手段を失う。
「約束の日」に人柱がひとり欠けていた為、人体錬成を拒否したマスタングの扉を無理矢理開けた事で、「セリム」の入れ物が壊れかけてしまい戦闘能力も格段に落ちてしまった。「お父様」を追おうとするエドを足止めした際、自分がボロボロに傷ついていながらも見向きもしない実父の姿をエドに指摘されたことで激怒し、エドの身体を新たな器として乗っ取ろうとする。しかし取り込んでいたキンブリ―が現れ、人間を下等生物と見下しておきながらいざ自分がピンチになるとその人間に逃げ込もうとする醜態を「美しくない」と一蹴され、キンブリーの妨害でエドに侵入を許し胎児程のサイズまで分解された。エドがプライドの中に入った時、プライドが思い浮かべていたのは「お父様」ではなく両親としてのブラッドレイ夫妻であった。
結果的にホムンクルスたちの中で唯一生き残ったが、胎児となった事で全ての記憶を失った様子。その後、夫と息子の正体を知らされたブラッドレイ夫人に引き取られ、夫人の愛情を受け真っ直ぐな少年へと成長している(ホムンクルスだったころの名残として、プライドには無かった赤い模様が額に浮き出た)。また、2年間のうちに本来のセリムと同じくらいの年まで成長したようで、寿命が短くなってしまったのか、普通の人間並みなのか、それとも今までのホムンクルスたちのように長生きするのかは不明。