概要
2016年の福岡ソフトバンクホークスは開幕直後こそあまり調子が出なかったが、4月中盤から8連勝していくと6月までに8連勝を3回記録するなどの快進撃。
投手陣は千賀滉大、東浜巨、リック・バンデンハークなどが活躍。打線では前シーズンに続き松田宣浩が活躍、交流戦からは城所龍磨も台頭。接戦に勝った試合が多いが、それでもソフトバンクが得意な交流戦は首位で通過した。
その勝率は、6月終了した時点で貯金29、何と勝率7割(いわゆる100勝ペース)。
2位の千葉ロッテマリーンズにも7.5ゲーム差をつけるなど前年以上の完全な独走体制。
一部では「優勝はホークスで決まった」「史上最速のマジック点灯もあるのでは」という話も流れ、このまま爆進Vロード一直線…と思われていた。
ところが………
ところが、7月に入ると状況は一変。
最大11.5ゲーム差をつけられていた北海道日本ハムファイターズの怒涛の追撃が始まった。
最初の3連戦、7連勝中の日本ハムを迎え撃ったが3連敗(しかも最後の1戦は大谷翔平ひとりにやられている)。
実は前述の6月終了時点でも、他11球団の中で日本ハムにだけは唯一勝ち越せなかったのである。
この対戦以降は打線が機能しなくなってしまい、投手陣もリリーフが救援失敗したりとソフトバンクはなかなか勝てなくなっていく。
そして日本ハムが球団新となる15連勝を記録し、射程圏内にまで迫る。あちらは不調のクローザーである増井浩俊を先発転向させたり、マメがつぶれて投げられない大谷を暫く打者に専念させたりと采配が悉く的中していた。
この時に週ベがソフトバンクを特集したが、発売時点で既に失速していた。
そして………
8月に入り、追撃していた日本ハムの勢いが衰える………わけがなかった。
中盤で貯金の数で抜かれ、一時は-0.5ゲーム差の首位という珍事まで発生。
25日の楽天戦、茂木栄五郎の浅いフライ性の打球を柳田悠岐が後逸。
ボールに触れなかったためエラーにはならなかったが、結果としてランニング3ラン本塁打を献上し逆転負け。首位を日本ハムに明け渡し、柳田は一部で「逸男」と呼ばれるようになってしまった。
9月は日本ハムもソフトバンクも勝ったり負けたりの繰り返しで首位が目まぐるしく入れ替わるマッチレースに発展。前半でマジックも点灯したが、2日後にはあっけなく消滅した。
そして9月後半、日本ハムとの最後の直接対決2連戦(ソフトバンクのホーム試合)、1勝でもすれば優勝マジックが点灯する。2014年・2015年とVを決め、この年3連覇も懸かっていたソフトバンクはここで落とすわけにはいかない大事な一戦であった。
…だったが、接戦の末に日本ハムにまさかの2連敗。この試合でソフトバンクは遂に力尽き、逆に日本ハムに優勝マジックが点灯。
その後、9月28日に日本ハムが西武に勝って優勝マジックが0になり、実に最大11.5ゲーム差からの大逆転優勝を果たした。なお、11.5ゲーム差は「メークドラマ」と言われた1996年の読売ジャイアンツ以来20年振りの快挙である。
一方のソフトバンクは歴史的V逸が決定。前半戦は超圧倒的ムードで勝ち進むも、後半戦から徐々に失速してのV逸はどこかで見たような流れなのは多分気のせいである。
その後
CSシリーズではファーストステージで3位ロッテの下剋上を阻止したが、ファイナルステージの日本ハム戦では第2戦と第4戦を取った。だが、2勝3敗で迎えた(優勝した日本ハムには1勝のアドバンテージが前もって与えられていた)第5戦の最後に抑えで出てきた大谷翔平に最高球速165kmのストレートと150km台の変化球の前に止めを刺され、ソフトバンクはこの年のCSのファイナルステージで敗退した。
2017年は全般的にほぼ前年と真逆のようなシーズンとなった。この年の前半戦は逸男の全ての元凶となった試合での対戦相手だった楽天が異常なまでに打ちまくり、7月中にも優勝マジックが点灯するのでは、と思われていた。しかし、8月に入って、西武の山賊打線の基盤が出来上がるのと、楽天の急失速も相まって、気付けば三つ巴の展開を経てついに首位に浮上。9月16日の西武戦で勝利し、パ・リーグ史上最速でのリーグ優勝を果たし、CS(クライマックスシリーズ)では楽天を、日本シリーズではDeNAを破って日本一を達成した。
2018年は開幕前に高谷、栗原が離脱、残る甲斐も侍ジャパンへ招集されるなど、主力のキャッチャーが不足する事態に。キャッチャー陣以外にも故障者が続出、オープン戦は12球団中10位という、最悪に近い状態でペナントレースを迎える事になった。開幕してからも状況は良好の兆しを見せないどころか、むしろ悪化の一途を辿り、先発陣にも故障者が出てくるように。結局西武の独走を許してしまい2位でシーズンを終えた。しかし、CSに入るとそれまでのスランプがまるで嘘のように躍進し、日本ハムと西武を下して日本シリーズに進出。その日本シリーズでは、甲斐キャノンの活躍で広島の機動力をとことん封じ込め、プロ野球史上初めてリーグ連覇を達成していない球団の日本一を飾った。
そして2019年、あの惨劇が再び起こってしまった。この年も開幕からグラシアル、森、中村、柳田などの故障者が続出。それでも松田、今宮や若手選手らの奮闘もあって勝ちを積み重ね、前半は全ての元凶となった相手の楽天に首位を奪われることもあったが(延長12回に及ぶ空中戦を制したり、最大7点差をひっくり返されたことによる2試合連続サヨナラ負け)交流戦優勝から勢いに乗って7月には2位とは最大7ゲーム差の首位に躍り出た。7月末に0.5ゲーム差まで猛追した日ハムも直接対決で蹴散らしたことで再び独走態勢を築いた。
・・・はずだったが首位に立ってからは投打で活躍していたグラシアル、モイネロが国際試合に出場する都合で一時離脱。その間にチームの勢いは落ち着き、貯金を増やさず、減らさずの戦いが続いたことで2位以下を大きく突き放すことができなかった。その隙を突かれ8月終盤から西武の猛追が始まり、遂に首位を明け渡してしまう。ホークスは9月6日には千賀がノーヒットノーランを達成して再び勢いを付けて何とか食らいつこうとするものの、直接対決のカードが早々に終了してしまったためにホークス以上に勢いに乗った西武を止めることが出来なかった。
そして悪夢の再来は9月24日、楽天生命パークでのソフトバンク対楽天戦という、3年前と同じカード(試合球場は違っているが)において起こってしまう。
この日は西武がロッテに勝利してソフトバンクが楽天に敗れれば西武の優勝と同時に楽天のCS出場が決まる状況であった。
ソフトバンクは楽天の先発の美馬から4回表、デスパイネのホームランで1点を先制した。
一方で西武対ロッテ戦はこの時点で西武が8-3と大量リードしているので、ソフトバンクは逆転優勝のためには絶対に勝たなければいけない試合だった。
しかし6回裏、ショートの今宮健太がブラッシュの放ったゴロをはじいて出塁を許すという痛恨のミスを犯す。
その後千賀は銀次、藤田一也を抑え2アウトまでこぎつけたものの、続くウィーラーに2ランホームランを打たれて逆転を許してしまう。
さらに7回裏には一塁走者辰己と二塁走者オコエがダブルスチールを仕掛けた際にサードの松田宣浩がキャッチャー高谷裕亮からの送球を捕り損ねるという痛恨のミスで失点。さらに浅村栄斗のタイムリーで合計2点を失い、9回表に松井裕樹から満塁のチャンスを作り、一発逆転のチャンスを作るも川島慶三の犠牲フライによる1点に留まり敗戦。
その後、西武が勝利したため、この今宮と松田のエラーが結果的に致命傷になってしまい、西武のリーグ連覇が決まってしまった。当然のようにネット上では3年前の時と同様に「逸男おおおおお」という悲痛な叫びがまたも響き渡り、ホークスファンにとっては悪夢の再来となった。またその過程で「V脱Sh!」(元ネタは2019シーズン終盤のスローガンの「V奪Sh!」)や「もう逸頂」(元ネタは2018シーズンのスローガンである「もう1頂!」)などのネタまで生まれてしまった。