概要
人語を解し、赤い顔をした人間のごとき容姿で、酒を好むとされている。
元来は礼記に「鸚鵡は能く言して飛鳥を離れず。猩々は能く言して禽獣を離れず」とあるのが出典である。
後代の注ではしばしばオランウータンなどの大型類人猿に擬せられる。
その理由は、オランウータンの漢名が猩々だからかと思われる。
能「猩々」
唐土の揚子の里に、親孝行で評判の高い高風という酒売りがいた。
そこに毎回酒を買って飲むが顔色の変わらない不思議な客がおり、その素性を高風がたずねたところ、自分は海中に住む猩々であると告げて立ち去った。
おどろいた高風が川のほとりに酒壷を供えて夜すがら待っていると、猩々があらわれ、酒の徳をたたえ、高風と酒を酌交して、酔態のまま舞を舞ってふたたび海中に帰ってゆくのであった。
『猩々』の舞にはいろいろな種類があり、もっとも代表的なのが『猩々乱』もしくは『乱』という曲名に変わるもので、水上を戯れ遊んでいる様子を表す特殊な足運びが印象的である。
江戸時代には付祝言として半能形式で上演されることが多かった。