概要
ケツァルペトラトル(Quetzalpetlatl)とはアステカ神話の主神ケツァルコアトルの妹であり、豊穣の女神である。
兄の知名度に反して、日本ではあまり知られていない神。ネットで彼女の名を検索しても、兄か金星の地名の方が多くヒットする始末である。
よく知られる神話においては、兄のケツァルコアトルは平和の神とされ、人々に人身供犠をやめさせたという。それ故に、人身供犠を好むテスカトリポカの恨みを買い陰謀を仕掛けられた。 これによってケツァルコアトルが呪いの酒(プルケ)をそうと知らずに飲んでしまい、気分が荒んだ挙句自分の妹(ケツァルペトラトル)と肉体関係を結んでしまい、神々の都市トゥーラ(又はアステカ)の地を追われたという。この際、自分の宮殿を焼き払って財宝を埋めた後自ら生贄となり、火葬された灰が何羽もの美しい鳥となって空へ舞い上がったとも、虹の彼方に消えていったとも、金星に姿を変えて天に逃れたとも言われ、ケツァルコアトルは金星の神ともされるようになったという。
名の由来
ナワトル語では「ケツァール」(Quetzal)は鳥の名や羽毛を表し、「ペトラトル」(petlatl)はベッドやマット(むしろ、敷物、下敷き)の意なので、「羽毛布団」「鳥の敷物」「翼持つ席(むしろ)」、あるいは「ケツァール(コアトル)のベッド」のような意味合いと推察される。
名前の時点で兄との肉体関係を暗示させるのは邪推だろうか。因みに、その近親相姦の逸話は「小林さんちのメイドラゴン」のルコアなどにも反映されている。
解釈によっては(例えば、クアウティトラン年代記』のナワトル語テキストではケツァルペトラトルは「ノウェルティウ(nohueltiuh。私の姉)」と呼ばれていたことで)、ケツァルコアトルの姉だったり妃だったり、ケツァルコアトルと共にプルケを飲んで理性を無くしたり、彼女の名を「美しい絨毯」と訳し、「豊かな自然風景」の象徴だとする説も存在する。
金星の地名において
金星のコロナ地形(巨大な円環状地形)の1つに、ケツァルペトラトル・コロナ(Quetzalpetlatl Corona)がある。
金星のラダ大陸に存在し、緯度68°南、経度357°東、直径は780キロメートルで、金星で4番目に大きいコロナ地形である。
名前は当然、アステカ神話の豊饒の女神であるケツァルペトラトルにちなんで名付けられた。