P320は、アメリカで開発されたオートマチックピストル。
開発は、スイスとドイツの銃器メーカーグループであるSIG・SAUER&SONEの米国法人のSIG・SAUER。
アメリカ陸軍の制式拳銃となった。
概要
オーソドックスなオートマチックピストルだが、フレームはポリマー製でスライドはステンレス鋼。
基となった銃は2001年に公用拳銃として開発されたP250だが、P320の撃発方式はハンマーではなくストライカー方式。
マガジンなどはP250と互換性がある。
9mmパラベラム弾のほか、部品を組み替えて.357SIG弾、.40S&W弾、.45ACP弾を使用することもできる。
サイズ別に大きく分けて4種類存在し、ベースモデルのP320フルサイズ、スライドがやや短いP320キャリー、スライドとグリップが切り詰められたP320コンパクトと、P320コンパクトを更に小型化したP320サブコンパクト。
これらはP250同様に部品の組み換えによる変更も可能で、スライドやバレルなどのほか、通常の銃のフレームにあたる「グリップフレーム」を交換すると、フルサイズモデルをコンパクトモデルに組み替えたり、或いはその逆も可能となる。
- 但しアメリカでは、法律・制度上のアイデンティティは交換部品であるグリップフレームではなく、そこに内蔵されるFCU(Fire Control Unit: 撃発装置)となり、シリアル番号もここに割り振られる。同国向けのモデルは、グリップフレーム右側のスライドストップ下辺りに横長の穴が開けられており、分解することなくシリアル番号を確認できる。
通常の暴発を防ぐ安全機構に加えててテイクダウンセーフティが搭載されている。
マガジンを抜かないとテイクダウンレバーが作動せず、スライドを外せない安全装置となっている。
アメリカ軍では
アメリカ陸軍ではXM17 MHS(Modular Handgun System)計画に基づくM9の後継として、P320フルサイズがM17、P320コンパクトがM18として採用された。
先代のM9と比べると、射手の手のサイズに応じたグリップサイズの変更が非常に簡単で、サプレッサーやウェポンライト、ダットサイトなどが容易に装着できるようになるなど大幅なアップグレードが計られている。
暴発
陸軍の採用を筆頭に好調なセールスを記録したものの、2017年には特定の角度で落下した場合に暴発する可能性が指摘されている。
これは、地面などに衝突した際に慣性でトリガーやシアなどが動いてストライカーをリリースしてしまう危険性があるというもので、報告を受けてメーカーから改修プログラムの提供が開始された。
改修プログラムは、スライドの閉鎖が不完全な状態での撃発を防ぐディスコネクターを追加し、トリガー、シア、ストライカーを慣性の影響を受けにくい軽量なものへと交換するもので、暴発のリスクは下がるものの暴発を完全に防ぐものではないとしている。
2019年には落下暴発の危険性を巡って訴訟が起こされた。裁判の結果、リコールが必要な重大な欠陥とは判断されなかったものの、メーカーが安全性の向上を目指すことを認めて和解が成立したという。
一方でホルスター内で突然暴発した事例が警察などから複数報告されており、例えば2017年のフィラデルフィア鉄道警察での事例では使用停止とグロックへの代替措置が取られている。
同様の別の事例の調査では、シアの噛み代が少なすぎると指摘されている。
その他
- ストック付きのグリップフレームが複数のメーカーから発売されており、所謂ピストルカービンへと改造できる。(事実上の)フレームそのものを交換するため、設計自由度は高くなる。(短銃身のSBRとなる為、地域によっては補助具であるスタビライジングブレース仕様でないと相応のライセンスが必要となる)
- 本銃のFCUをトリガーパックとして使用するAR-15スタイルのカービンも開発されている。
- 日本においては、2020年9月に本銃用のストック付きグリップフレームを販売していたトイガンショップ関係者が逮捕されている。警察は各拳銃のグリップパネルと異なり、所持が禁じられたけん銃の主要部品と判断したようである。