カストロ(HUNTER×HUNTER)
かすとろ
概要
天空闘技場200階クラスの闘士。
過去にヒソカに敗れ、「洗礼」を受けたことからヒソカ打倒を目標に修練を積み、その後の戦いを「ヒソカと戦うまでの準備運動」と称して一度も全力を出すことなく9連勝し、フロアマスターに一番近い存在と言われていた。
自身がフロアマスターまであと1勝に迫った段階でヒソカと再戦。
当初は自身の念能力でヒソカを翻弄し、虎咬拳で彼の腕を切断するなど優勢に戦いを進める。しかしヒソカの嘲るような話術と奇術に怒りや焦りを募らせ徐々に精神的に不安定となり、さらには分身(ダブル)の弱点をヒソカに見破られ、しかもその弱点をカストロ自身がまったく認識していなかったことで完全に失望されてしまう。最期はヒソカが張り巡らせた『伸縮自在の愛(バンジーガム)』の猛攻を受けて敗れ去った。
ヒソカは彼の敗因を「容量(メモリ)のムダ使い」と評し、本来の能力である強化系と相性の悪い超高度な具現化系・操作系の複合能力である分身(ダブル)を使うことを批判した。
一応武道家としての実力はたしかなもので、当時のキルアの後ろを取るほどだった。また、ナレーションによる見立てでは「冷静に戦っていれば(ヒソカ相手でも)善戦できていただろう」と評されており、後の会長選挙・アルカ編で数多くのハンターがヒソカになす術もなく殺害されたことを考えれば、戦闘能力ではプロハンターと比較しても決して引けを取らないと思われる。
そもそもかつての対戦では、カストロはまだ念能力者ですらなかったにもかかわらずヒソカからダウン判定を奪うなど健闘しており、ヒソカも後のゴンやキルアなどと同じくカストロを自身の「玩具」と見做して敢えて生かし、成長を期待していた。
アニメ第1作ではヒソカとの試合が(グロいため)大幅に省略されている。
念能力
強化系の念能力者。
虎咬拳(ここうけん)
両手を虎の爪や牙に模して攻撃する強化系の拳法。両手にオーラを集めて繰り出すことで威力が増大する。
ウイング曰く、カストロの虎咬拳は「すばらしい威力」であり、極めれば随一の使い手になっていたとのこと。
分身(ダブル)
自分の分身を具現化して操る能力。具現化系・操作系・放出系能力の複合技。
本体と連携することで相手の不意をついたり、身代わりや攻撃を防ぐ盾にするなど数的有利を作り出すことが出来るが、かなりの集中力を要する上、自分が想像する(平常時の)姿を再現しているため、戦闘中にできた傷や汚れなどは再現できない(本体と見分けがつく)という欠点がある。
ちなみに後のストーリーにも具現化系・操作系・放出系の複合能力を使う念能力者が登場しているが、あちらは「致死級の殺傷力を持つ時限爆弾を数十個以上具現化して遠隔操作する」という能力のために、①メインの具現化系能力者と補助2人の3人掛かりで発動②爆弾の設置には対象に手で触れながらキーワードを発言しなければならない③起動には対象に能力の解除方法を説明する必要があるなど、様々な「制約と誓約」を課した上で成立している。
特に本来具現化系と放出系は相性が最悪であるため、この2つを両立させることはそれだけ難しく負担も大きいのだが、カストロはこの3系統ですらない上に独力のみで、しかも「制約と誓約」も一切課さないという、習得難度が極めて高くて且つ無駄が多すぎる状況の中で分身(ダブル)を完成させている。この辺りにヒソカが見込んだ彼の素質の高さと、失望した選択の愚かさが垣間見える。
また、自分自身の完全コピーという形ではないにせよ、カストロの他にも分身に類する念能力(念獣や念人形など)の使い手が複数登場しているが、それらはいずれも本体や敵と立ち位置を入れ替える瞬間移動や複数個体の分離や合体、本体の意識を預けて独立行動でき、物体の透過も可能など、分身に特殊な能力を付加しているのに対して、カストロの分身(ダブル)にはそういった特徴がなく、応用の幅が狭いことも難点と言える。
虎咬真拳(ここうしんけん)
「分身(ダブル)」と「虎咬拳」の複合技。具現化した分身(ダブル)と共に虎咬拳で襲いかかる。
分身(ダブル)の方でもヒソカの腕を簡単に切断できるほどの威力がある(具現化系の念は具現化物を体から離すと強度が極端に落ちる)。敵が分身(ダブル)に気づいていない時は非常に強力な戦法であり、カストロはこの技を使ってヒソカとの戦いを優勢に進めた。だが、ヒソカに分身(ダブル)を使っていることを看破された後は差し出された左腕以外には攻撃を当てられず、不意打ちでなければ有効性は高くないという欠点がある。
なお、カストロ自身はそのデメリットにまったく気付いておらず、むしろ能力の詳細が相手にバレても問題はないと過信していたのか、ヒソカが能力の正体に気付いてない序盤では一方的に攻撃を加えられる状況でありながら敢えて決定打を与えず挑発を繰り返し、彼が分身(ダブル)の存在に気付いた際にも自ら能力と戦術をベラベラ喋るという失態を犯している。このため終盤ヒソカに本体と分身体を見分けられ、返り血などの欠点を指摘された際には驚愕の表情を浮かべており、彼から「そんなことも知らなかったのか」と心底呆れられた。
なお、ストーリーをよく見れば分かるが、最後の突撃を除けばカストロが攻撃を仕掛ける方法は徹頭徹尾分身(ダブル)を単身でけしかけるか、分身を先行させた上で影に隠れながら本体で不意打ちを行うかのどちらかであり、強者然とした余裕のある態度とは裏腹に、本心ではヒソカと正面から戦うのが怖くて仕方なかったことが窺える。
豊かな素質と不運
天空闘技場という舞台の物語において、「フロアマスターに一番近い男」という大層な肩書きを持って登場していながら自慢の念能力を相手に散々貶された挙句あっさり敗れ去るという不遇なキャラとなってしまった彼だが、その役割は「自分に合わない系統の念能力を身に付けたらどうなるか」という悪例を主人公であるゴンとキルア、そして読者に示すことであり、ただのかませ犬という訳ではない。
また、彼の念能力については自身の素質と全く噛み合わないものを身に付けたことやその弱点を把握していなかったこと、ヒソカの超常的な奇術が念能力の応用であると察しながら「凝」の使用を怠った(マチによれば「当然習得はしている」)ことなど、所々に致命的な粗が見られるものの、本来であれば素質との不一致から会得自体が極めて難しいはずの分身(ダブル)を(使い方はともかく)技術としては完璧に習得し、また(おそらくまだ距離のある場所から)キルアの「絶」に気付いて接近に備えるなど、決して才能や実力・用心が低かったというわけでもない。
ゴンとキルアはこれらの粗に該当する要素は師の教えを受けてしっかりと学習、修正しており、それを考えるとカストロはよほど念能力の師に恵まれなかったか、もしくは独学で念を体得したなどの事情で欠陥に気付けなかった可能性が高い。
「自分自身の分身を作り出して攻撃の矢面に立たせる」という戦法は、それだけヒソカに対する恐怖がカストロに根深かったとも解釈できよう。その反面、戦いの序盤でヒソカに決定打を与えないように攻撃しながら挑発し続け、分身(ダブル)に気付いたヒソカが「ちょっとやる気出てきたかな……?」と発言した際には、汗を流しながらも不敵な笑みを浮かべており、彼に対して自身の成長や念能力の実力を誇示したかったという心理もあったと思われる。
さらに、ヒソカに対して語った「これまでの9戦、一度として全力で戦っていない」という言葉が真実であるとすれば、裏を返せば「自分と同等以上の実力を持つ念能力者との真剣勝負を一度も経験できなかった」ということでもあり、この実戦経験の不足が「凝」の失念や自身の能力への過信、欠点の見落としなどの失態につながったとも考えられる。特に(奇術で揺さぶられていたとはいえ)能力の欠点を見破られ指摘されただけで精神を追い詰められ、対応に窮して無謀な突撃に走ってしまった精神面の脆さとリスク対応の拙さは、念能力バトルの経験不足が露呈してしまっていると言える。
ゴンとキルアが優れた師に恵まれ、実戦を含む様々な経験を積む中で元々持っていた天賦の才能を順調に開花させて心身ともに逞しく成長していったのに対し、カストロはそれと真逆の過程で力を付けたために悲惨な末路を迎えてしまったのかもしれない。
ちなみにゴンとキルアもGI編でビスケに弟子入りする直前に凝を使うことを失念したことで見当違いな戦闘分析をしてしまい苦戦する場面があり、彼女の教えがなければカストロと同様の末路を辿っていた可能性も決して否めない。